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ラコステのワニ、アディダスの3本線…見慣れたマークたちには実は深い意味がある。ブランドロゴのひみつとは

集英社オンライン / 2023年1月13日 14時1分

ラコステのワニ、ナイキのスウッシュなど、当たり前のように眺めているブランドのロゴマークだが、その由来について考えたことはあるだろうか。創業者の思いやブランドの歴史が反映される「ロゴ」の背景について考察する。

いつも何気なく見ているブランドのロゴマーク。
よくよく考えてみると、不思議に思うものがないだろうか。

なんでワニなの?
どうしてカンガルー?
この幾何学的な模様はいったい何?……と。

見慣れてしまったため、いまさら深く考えもしないブランドのロゴマークには、実は創業者の思いやブランドの歴史が反映されていて、ひもといてみるとなかなか興味深い事実が隠されている。
今回はロゴマークが特によく目立つブランドの中から、スポーツ、アウトドア、カジュアルに絞り、考察してみよう。


3大スポーツブランド、アディダス、ナイキ、プーマのロゴマーク

新旧ロゴマークを使い分け
adidas アディダス


1949年に創業したアディダスは、現在、2つのロゴを使い分けている。
アディダスの代名詞である3本線を山のように配置した“パフォーマンスロゴ”と、三つ葉をモチーフにした“トレフォイルロゴ”だ。

古いのは“トレフォイルロゴ”の方で、初登場は1972年。
「月桂冠」を三つの葉で表したデザインで、「トレフォイル」とはドイツ語で“三つ葉”という意味だ。

1972年から1995年までアディダスのカンパニーロゴとして使用されたのち、一旦は役目を終えて“パフォーマンスロゴ”にバトンタッチしたのだが、ファンからの熱望する声もあり、アディダスの歴史を落とし込んだストリートウェアブランドとして2001年に新登場した「アディダス オリジナルス」のロゴとして復活。現在に至る。

かたや“パフォーマンスロゴ”の初お目見えは1990年。
当初は“アスリートのパフォーマンスを最高に引き出すこと”をコンセプトにした「エキップメントコレクション」のロゴとして使われ、前述のとおり後にカンパニーロゴへと昇格した。
現在も通常レーベルのロゴとして、アディダスのスポーツウェアを中心に用いられている。

アディダスの象徴である3本線は、フィット感をあげるためにシューズのサイドアッパーに施された3本のバンドが原点。
その3本線をデフォルメして“パフォーマンスロゴ”に仕立てたのは、ナイキの「エア ジョーダン」シリーズで用いられる“ジャンプマンロゴ”もデザインしたピーター・ムーアである。

アディダスのトレフォイルロゴ。photo:Rodrigo Senna/flickr

アディダスのパフォーマンスロゴ。photo:Phixaakh/flickr

ロゴマークからブランド名が決定
NIKE ナイキ


ナイキの前身となるブルーリボンスポーツ社が設立されたのは1960年代前半のこと。創業者はビル・バウワーマンとフィル・ナイトという2人の人物だ。
彼らは創業後まず日本へと渡り、その頃、世界的に評価が高まっていたスポーツシューズ、オニツカ(現在のアシックス)のアメリカ国内販売権を獲得した。

1971年、事業拡大と利益向上を目指してオニツカとの提携を解消し、独自のシューズ生産を開始する。
同年6月には、サイドアッパーに今日のナイキのシンボルである“スウッシュ”を配した最初のサッカースパイクを発売。
“スウッシュ”は当時無名だった大学生がデザインしたことで知られている。

そしてこの“スウッシュ”の形がギリシャ神話に出てくる勝利の女神Nike(ニケ)の翼に見えることから、ブランド名をNike(ナイキ)と定め、社名も同様に変更した。

シューズの側面に施されたナイキのシンボル・スウッシュ。photo:Eduardo Francisco Vazquez Murillo/flickr

実はピューマではない?
PUMA プーマ


ドイツのスポーツブランド、プーマの創業は1948年。
だが有名なロゴマークが制作されたのは、創業約30年後の1979年のことだ。

ブランド名はアメリカ大陸に生息するネコ科の大型動物ピューマに由来するから、当然、このジャンプしている動物はピューマと思いきや、実はアフリカ大陸に棲むチーターであるという説もある。

ブランドによるとこのマークはネコ科動物の象徴で、 “プーマキャット”と呼ばれている。
スポーツの持つ躍動感などを表現しているというが、何の動物なのかなど詳細は非公開とのこと。

プーマのロゴ、正体は不明。photo:Dawn/flickr

世界一有名なワニをはじめ、スポーツブランドのロゴに隠された深い意味

「ワニ」と呼ばれた創業者にちなんだロゴ
LACOSTE ラコステ


世界でも指折りの有名ロゴマークであるラコステのワニは、ブランド創業者のニックネームが起源だ。

1920年代を中心に活躍し、グランドスラムと呼ばれるテニス4大大会のうち、フレンチオープンで3回、ウィンブルドンで2回、USオープンで2回という輝かしい優勝経歴を持つフランス人テニスプレーヤーのルネ・ラコステ。
彼のことを最初に「ワニ」と呼んだのは、1925年ボストン大会でのプレーを見たアメリカのメディアだった。

試合直前、ボストンの街を散歩していたところ、ある洋品店のショー・ウィンドウに飾られていたワニ皮のスーツケースに惹きつけられたルネ。
そんな彼にチームのコーチは冗談まじりで、「もし君が試合に勝ったら、このスーツケースを買ってあげよう」と約束した。

結局、試合には負けてしまったのだが、取材でこのエピソードを聞きつけたボストン・イブニング・トランスクリプトの記者が「若きルネ・ラコステはワニ皮のスーツケースは手に入れられなかったが、ボールに食らいついていく彼のプレースタイルはまるでワニのようだった」と報じる。
こうしてルネはアメリカではアリゲーター、フランスではクロコダイルと呼ばれるようになる。

その後、1927年デビスカップでの優勝時に、ルネは友人から46色の糸を使ったワニマークの刺繍入りブレザーをプレゼントされる。
それが元となり、1933年のブランド創業時に作られた襟付きニットシャツ(ポロシャツ)の胸元にも、ルネはワニマークを採用したのだ。

なじみ深いラコステのロゴマーク。photo:Thomas Hawk/flickr

テニスの神様の華麗な経歴に由来
FRED PERRY フレッドペリー


1920年代のテニスヒーローがルネ・ラコステなら、1930年代のそれは、イギリスで“テニスの神様”と崇められたフレデリック・ジョン・ペリーだ。

フレデリックが引退後に創業したブランドであるフレッドペリーのマークは、古来、競技の優勝者に与えられた「月桂冠」がモチーフ。
もちろん、ウィンブルドンおよびデビスカップでの4度の優勝というフレデリックの華麗な経歴に由来している。

とはいえブランド創業当初、愛煙家だったフレデリックが最初に考えたマークは一本のパイプだったそうなのだが、オーストラリア人の共同経営者がなんとか思いとどまらせたという逸話が残っている。

その後、何百もの案をボツにしたあと、「ウィンブルドンの優勝メダルに刻まれた月桂冠」という名案が生まれ、1952年にこのロゴマークが採用された。

月桂冠がモチーフのフレッドペリーのロゴマーク。photo:Wind Koh/flickr

愛国心と家族の絆
le coq sportif ルコックスポルティフ


フランスでもっとも古いスポーツ洋品メーカーとして1882年に創業したルコックスポルティフ。
ルコックはフランス語で“雄鶏”を意味する。

ロゴマークの登場は1948年。
雄鶏はもともと、フランスに移住してきたガリア人の旗印であり、現在もフランスの国鳥とされている。
創始者であるエミール・カミュゼが、姉と父とともに、事業を3人で支えていたので、それを象徴する三角形で、母国のシンボルであり、ブランド名の由来ともなっている雄鶏を囲んだ。

そしてブランド生誕140年を迎えた2022年にルコックスポルティフはロゴを刷新。
枠にとらわれない姿勢を示すため旧来の三角形を廃すとともに、雄鶏マークは左向きから右向きに変更された。

ルコックスポルティフの旧ロゴ。photo:Sato Seijiro

2022年に発表されたルコックスポルティフの新ロゴ。photo:Atlético/flickr

一本線に秘められた歴史
Champion チャンピオン


「目玉」のようなチャンピオンのロゴマークは、「Champion」の「C」の字が図案化されていることは一目瞭然だが、真ん中のラインは何?と思わずにはいられない。

ブランドの歴史は20世紀初頭まで遡る。
今も愛用者が多いチャンピオンのスウェットパーカーは、米軍学校の体操着としてスタート。1924年にミシガン大学のスポーツ部に採用されてから人気に火がつき、その後はスポーツ用というよりもカジュアルアイテムとして親しまれてきた。

ブランドのロゴマークは、1950年代までは、ゴールテープを切る瞬間のランナーの姿のシルエットだった。
しかし1960年代に入ると、そのランナーの絵は簡略化されて「C」の字の中に描かれるようになる。
そして1969年にロゴマークを一新。「C」の中にいたランナーは、ついに一本のラインで表現されるようになったのだ。

1970年代中には、現在のチャンピオンのロゴとして親しまれる赤・青・白のトリコロール配色も生まれ、ロゴマークは完成した。

チャンピオンのロゴマーク、真ん中の線には意味がある。photo:Sato Seijiro

日本の浮世絵がルーツ
Quiksilver クイックシルバー


オーストラリアで1969年に発足し、現在は米カリフォルニア・ハンティントンビーチを本拠地とするサーフ&スノーブランドのクイックシルバー。
波と山をモチーフにしたロゴマークは、葛飾北斎の版画「富嶽三十六景《神奈川県沖浪裏》」をモチーフにしたものだ。

創業者が北斎の絵を見て、「これこそ自分たちのライフスタイルを象徴するものだ!」と感銘を受けたことから、このロゴが作られたのである。

日本と深いゆかりがあるクイックシルバーのロゴマーク。photo:Chris Elt/flickr

誤解から生まれたロゴマーク
KANGOL カンゴール

1938年、イギリスのカンブリア州・クリーターに設立されたカンゴール。
ブランド名は、上質素材であるSILKの「K」(ニット「KNITTING」の「K」であるという説もある)、ANGORAの「ANG」、WOOLの「OL」を合体させた造語で、実は動物のカンガルーとは関係がない。

創業から40年以上が経過した1980年代初頭、カンゴールはアメリカ・ニューヨークのヒップホップ界隈でにわかにブームとなる。
するとブランド名をうろ覚えのイギリス人の若者が、「好きなラッパーがかぶっている、あのカンガルーの帽子」を求めてショップを訪れるようになったことから、1983年にカンガルーマークが採用されたのである。

カンゴールといえば、今やこのロゴマークが目印。photo:Sato Seijiro

ザ・ノース・フェイス、ティンバーランド、リーバイス……。
アウトドアブランドとワークウェアブランドのロゴにも不思議がいっぱい

雄大な自然を幾何学的に表現
THE NORTH FACE ザ・ノース・フェイス


1966年に米・サンフランシスコで、ダグラス・トンプキンスと妻スージーによって設立されたザ・ノース・フェイス。
現在もアウトドアシーンのみならず、日常のカジュアル着やバッグも人気があり、ロゴマークを大きく配した製品も多いので、そのマークはすっかりおなじみだろう。

マークが制作されたのは、創業から3年を経た1969年。ロゴのデザイナーについては諸説あるが、当時の経営者、ハップ・クロップであるというのが有力。

改めて見てみるとなかなか不思議なこのマーク、一体何を表しているのかといえば、 “ヨセミテの雄大な自然”がモチーフとのこと。
ハーフドームやヨセミテフォールズなど、ヨセミテの自然からインスピレーションを受けて図案化されたのだという。

ザ・ノース・フェイスというブランド名は“北壁”という意味。
北半球の冬登山において、北壁がもっともハードなルートであることにちなんで付けられた。
ロゴマークもブランド名と同様、険しくも雄大な自然を表現しているのだ。

幾何学的な模様に隠された意味。photo:Sato Seijiro

自然を愛するブランドの象徴
Timberland ティンバーランド


ティンバーランドは1952年にボストンで設立された、アメリカを代表するアウトドアブランド。
アウトドアグッズやウェアが販売され、ブーツが特に有名である。

現行のロゴマークが作られたのは1973年のこと。
この年は、その後長年にわたり、ティンバーランドの代表的アイテムとして愛される6インチプレミアムブーツ(通称イエローブーツ)が誕生した年でもある。

ロゴマークのモチーフは一目瞭然の「木」だ。
これには、自然を背景に生まれ、自然を愛するブランドの象徴であること、また森林で働く人のために作られたブーツでもあるという意味が込められている。

ティンバーランドといえばこのマーク。photo:Dark Dwarf/flickr

ブランド名もロゴマークも化石に由来
ARC'TERYX アークテリクス


1989年にカナダのブリティッシュコロンビア州ノースバンクーバーで創業したアークテリクス。
特徴的なロゴマークは、始祖鳥の骨の化石がモチーフだ。
断崖絶壁に張り付くように暮らしていたと言われる世界最古の鳥類である始祖鳥は、これまでに世界各地で化石が発見されているが、その中でもっとも状態が良いベルリン標本をもとにしている。

そしてアークテリクスというブランド名自体も、始祖鳥の学名・アーケオプテリクス・リトグラフィカ(Archaeopteryx litographica) が由来。
共同創業者であるデイブ・レインとジェレミ・ガードは、ともにクライマー出身だったので、『岩を登り自由な空へとはばたいていく、進化過程の鳥』に自分達を含むクライマーの姿を重ね、ブランドのシンボルにした。
進化を加速することで、アウトドアにおける人間の進歩の推進に役立つという思想を象徴しているロゴマークなのだ。

始祖鳥の化石そのまま、アークテリクスのロゴマーク。photo:MIKI Yoshihito/flickr

商品の頑丈さをアピール
LEVI'S リーバイス


リーバイ・ストラウス社は1853年、アメリカで主に金鉱や港湾で働く人の作業用パンツの製造販売をおこなうために設立された。
1873年には金属リベットによる衣服の補強方法に関する特許を取得。また同年、バックポケットの裏側に補強布を縫い付けるためアーキュエットステッチが施されるようになる。

1886年には、2頭の馬がジーンズを引っ張りあっている“ツーホース”と呼ばれるトレードマークが誕生する。
これは、パンツの耐久性を高めるために金属リベットを使用するという特許が1890年で切れるため、その後にも商品の頑丈さをアピールする品質保証書として考案されたものだった。

ジーンズに施される、リーバイスのツーホースロゴ。photo:ape aje ade disini/flickr

ワークウェアブランドであることの矜持
Dickies ディッキーズ


長い歴史を持つアメリカのワーク系カジュアルブランド、ディッキーズ。
前身となる会社が設立されたのは今から100年以上前の1918年だが、ロゴマークが制作されたのは1954年のこと。モチーフとなっているのは、「牛のくびき」である。

くびきとは牛馬と車をつなげるときなどに、動物の首につけて固定する道具のことで、Dickiesの「D」を牛のくびきに見立てたデザインだ。
ワーク系ブランドの矜持として、労働現場の重要な道具のひとつをロゴマークにしているのである。

文/佐藤誠二朗

労働現場の道具をロゴマークにしたディッキーズ。photo:Thomas Hawk/flickr

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