【部位別・焼ニシュラン】脳が痺れるほどおいしいとはこのことか。当世ナンバー1を誇る珠玉のユッケ、タン、ロースとは
集英社オンライン / 2023年1月17日 17時1分
世に絶賛される焼肉店は数あれど、そのメニューごとにナンバー1を選ぶとしたら? 年間300食焼肉を食べる、自他ともに認める“肉バカ”がお送りする、2022年部位別『焼ニシュラン』をお届けする。(前後編の前編)
リブロースを使った霜降りユッケに
前菜で光るセンマイ刺し
2022年も相変わらずよく焼肉を食べた。コロナ禍が始まった2020年以降ずっと在宅勤務なので、焼き頻度を減らしてはいるが、それでも週4回以上は焼肉を食べている。
肉バカは毎年『焼ニシュラン』という形で、自ら食べて選んだ星付き焼肉店を紹介しているが、今回はお店そのものではなく、メニューにスポットを当て、2022年に食べた焼肉たちの中から珠玉のベスト15皿を紹介したい。
まずは前半の7メニューからお届けする。
1 ユッケ
(銀座コバウ 銀座並木通り店)
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霜降りの高級部位リブロースを使ったユッケ
高いだけで旨い焼肉は存在しないというイメージだった銀座を変えた、銀座コバウ。
ブランド牛ではなく、生産者レベルで厳選した仕入れを行っている。そんな一切妥協のない仕入れの素晴らしさをストレートに感じさせてくれるのがユッケだ。
霜降りの高級部位であるリブロースを使ったユッケは、食べたとたん、雌牛ならではの上品な甘みと余韻の長い旨味が口中に押し寄せる。タレの甘さではなく、肉そのものの味わいがここまで際立つユッケはなかなかないだろう。
2 センマイ刺し
(焼肉 幸泉)
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東京一と太鼓判を押せるシャキシャキのセンマイ刺し
店主が立石で40年続く老舗焼肉店をおばあちゃんから受け継いだのは2022年3月。それから数か月で予約困難店になってしまったのは、店主の研究熱心さと丁寧な仕事の賜物だろう。
正直、何を食べても珠玉と言っても過言ではない。
タレで食べるロースを筆頭に、御飯が止まらなくなる絶妙なバランスの焼肉はどれも絶品。だが、あえて1品あげるとすれば、前菜のセンマイ刺しを選びたい。自信をもって東京一と太鼓判を押せるセンマイ刺しは、他のお店では食べたことのないレベルのシャキシャキ食感で、すっきりとした味付けもドンピシャの美味しさ。
この1皿のためだけに京成線に乗り込む価値がある。
脳に至福を与える和牛握りに、芳醇なタン元
3 和牛握り
(うし松)
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ため息が漏れるほどの美味しさを与えてくれるサーロインの握り
肉バカの知る限り、都内でうし松を超える和牛を仕入れている焼肉店は見当たらない。
通常よりも1年以上長くじっくりと長期肥育した雌牛の中でも、純但馬血統を中心に仕入れを行っているが、こういった最高峰の和牛であればやはり生肉でも食べてみたいと思うのが肉好きの性だろう。
うし松はテーブル席がメインだが、【うら松】と呼ばれる隠れ家のようなカウンター席が存在する。
うら松では総料理長が目の前で肉をカットし、炭火で焼き上げてくれるのだが、総料理長は鮨職人に習った握りも披露してくれる。
手慣れた所作で握られたサーロインは見た目の美しさにまず目を奪われるが、口に運べばため息が漏れるほどの美味しさを教えてくれる。舌を包み込む旨味と鼻に抜ける香りに身をゆだねれば、その至福に脳から震えるだろう。
4 特選タン
(炭火焼肉ホルモン うらら)
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柔らかさと甘み、芳醇な香りが魅力のタン元
東急田園都市線たまプラーザ駅から徒歩3分。東京ではなく神奈川県横浜市にありながら鮮度抜群のホルモンを東京食肉市場から仕入れられる特別なルートを持っているのが、うららだ。
店主が前職を通じて得たコネクションと飽くなき情熱を最大限活かすことで、仕入れること自体が困難な黒毛和牛のタンやハラミの中でも特級品のみがお店に並ぶ。
特選タンとして提供されるのは、タンの根元の部分のみ。タン先と違ってサシが入るので柔らかさと甘みがあり、焼き上がった時の芳醇な香りもまた最高だ。
レモンをつけて食べるのもアリだが、せっかくなら下味のみで食べてみて欲しい。タンそのもののクオリティに驚くだろう。
魂のこもったテールに正真正銘のロース、計算されつくしたヒレ
5 テール
(Hodori 用賀店)
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手間暇を惜しまず、包丁に魂を込めたテールは未踏の味
一見シンプルな中にこだわりと研究の成果が詰まった焼肉。そんな焼肉を食べると完全にハマってしまうのだが、Hodoriの焼肉がまさにそれ。
正肉も内臓も気の遠くなるような長い時間をかけて仕入れ先との信頼関係を築き、素材を焼肉として昇華させる研究を怠らない。
今までの焼肉人生で美味しいテールを食べたことは何度もあるが、一口食べて感動したのはここHodoriしかない。テールはご存じの通り牛の尻尾だが、その根元の一番太いところを使い、普通は冷凍して骨ごとスライスしてしまうところを、生の状態で骨からお肉を外していく。最後は筋にも包丁を入れ、食べやすさにも気を遣う。
そうして完成したテールはジューシーでふっくらとしていて、濃厚な旨味が舌を包み込むように押し寄せる。手間暇を惜しまず、包丁に魂を込めたテールを食べてみて欲しい。
6 ロース
(安兵衛)
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サーロインやリブロースといった正真正銘のロースを味わえる
焼肉という食文化が生活に溶け込む街、大阪。東京の焼肉が味付けや仕込みよりも素材の肉質に力を入れた焼肉店が多いのに対して、大阪の焼肉はその逆パターンが多い。そんな大阪焼肉界にあって、安兵衛は圧倒的な肉質にこだわっている。
店主自ら食肉市場や気になる生産者の元を訪れ、肉だけでなく牛への情熱も熱い。それでいて、タレなどの味付けや仕込みの丁寧さも備わっているのだから、もはや驚きしかない。
ロースを頼むと本物のロースが出てくる。普通の焼肉店では部位に関係なく、サシの少ない部位をロースで提供し、サシの多い部位をカルビで提供することが多いが、安兵衛のロースはサーロインやリブロースといった正真正銘のロースを出してくれる。しかも値段は1皿千円台だ(2022年現在)。
食べた瞬間に口の中で溶けだすようなロースではなく、滑らかな舌触りでありながら味わい深いロース。これこそが本物のロースだろう。
7 ヒレ
(焼肉ジャンボはなれ)
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薄すぎず、厚すぎず、計算し尽くされた厚みのヒレ
かつてはカルビやロースといったメニューが一般的だった焼肉に、希少部位という概念を持ち込み、そうした部位ごとの特徴がでるようにミリ単位で厚さを調整するのがジャンボだ。
さらに一度食べたら中毒になるほど美味しいタレ。20年ほど前に初めてザブトンやミスジを食べた時には、あまりの美味しさに一瞬で心奪われたものだ。
20年通い続けたからこそ、毎回美味しいと感じながらも感動できるほどのメニューにはなかなか出会えないのが普通だと思うが、2022年に食べたヒレは凄かった。熟練の料理人が丁寧にカットしたことが伝わる断面。薄すぎず、厚すぎず、焼き網やタレとの相性まで計算し尽くされた絶妙な厚み。
お肉にストレスを与えないようにこまめに返しながら焼き上げれば、唇でそっと挟むだけで千切れる繊細な食感に出会い、奥歯で噛めば東京ベスト3に入る至高のタレとお肉の旨味が絡み合う。
後編では、心が震えるほどのハラミやカルビ、サガリについて紹介する。
画像・文/小池克臣
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