【部位別・焼ニシュラン】一切れで白米一膳食べてしまうサガリ、関東三大ハラミの筆頭、パーフェクトなカルビ…心が震えるほどおいしい焼肉たち
集英社オンライン / 2023年1月17日 17時1分
世に絶賛される焼肉店は数あれど、そのメニューごとにナンバー1を選ぶとしたら? 年間300食焼肉を食べる、自他ともに認める“肉バカ”がお送りする2022年部位別『焼ニシュラン』をお届けする。(前後編の後編)
パーフェクトなカルビと旨すぎるサガリ
8 極上黒毛和牛カルビ
(好楽園)
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とにかくパーフェクトなカルビ
川崎市を縦に走るJR南武線の矢向駅。賑やかさはあまりない駅から住宅街を5分ほど歩くと、どこの街にでもありそうな古びた焼肉店が存在する。地元のお客さんだけではなく、遠くから通うファンもいるこちらは、知る人ぞ知る焼肉店、好楽園。
メニューはいたってシンプルで、正肉はカルビ3種類にロース1種類、そしてハラミを含めたホルモンのみだ。カルビは和牛のリブロースを仕入れ、リブ芯をカルビ(極上黒毛和牛)、巻きをマキカルビ、カブリをカルビ(上)として提供している。
カルビはどれを食べても美味しいが、肉バカが一番惹きつけられているのがカルビ(極上黒毛和牛)。適度なサシの入ったリブ芯を鉄板で焼いたら、特製のタレをたっぷりつけて食べて欲しい。玉ねぎ等の甘みとがっつり効いたニンニクが恐ろしいほどお肉とマリアージュする。
最近のサーロインやリブロースと言えば、なんでもかんでも卵をつけて食べさせる焼肉店が多いが、大抵はお肉とタレのバランスが悪い。しかし、好楽園はこれ以上でもこれ以下でもない絶妙なバランスが成り立っていて、お肉とタレ以外に必要なものと言えば白米だけだろう。
とにかくパーフェクトなのだ。
9 サガリ
(都内某所)
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1切れで白米1杯食べてしまうほど旨いサガリ
店主が常連さんを愛するが故に、店名を非公開としている名店。肉バカが2022年に毎月通った焼肉店は3軒あるが、そのうちの1軒である。それほど肉バカを虜にする理由とは何か。
まず内臓類の鮮度のよさとクオリティだ。店主が食肉市場で働いていた時のコネクションで、最高峰の内臓類だけを仕入れられる。しかも、曜日によっては屠畜当日の内臓類が入荷するのだが、こんな事が可能な焼肉店を都内では他に知らない。
そんな極上素材をさらに引き立てるのがタレ。素材の味わいを消すような強さはないが、焼肉らしいパンチがあって、見事にキマッているのだ。
またメニューはどれも恐ろしく安い。千円を超えるのは牛タンくらいだ。和牛のハラミは千円でお釣りがくるが、三千円を超える高級店のハラミを圧倒するほど旨い。
肉バカはハラミ以外に、メニュー表にはないが、サガリも必ずオーダーする。プリプリとした食感、サガリの肉繊維の中に染み込む極上のタレとそれを受け止める白米。1切れで白米1杯食べてしまうほど全てが旨い。
残念ながら店名は明かせないが、肉好きであればいつか奇跡の出会いが訪れるはずなので、それを信じて待って欲しい。
関東三大ハラミと焼肉の範疇を超えてくるヒレ
10 上ハラミ
(房州園)
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関東三大タレハラミに認定している逸品
どの焼肉店に行っても必ずオーダーするメニューと言えばハラミ。ハラミを食べれば、そのお店の実力が分かると言っても過言ではない。そして結論から言ってしまうが、房州園のハラミは異常に旨い。
肉バカ的には関東三大タレハラミに認定しているほど旨い。上ハラミがテーブルに運ばれてきた瞬間、その姿を見てまずテンションが上がる。ハラミというよりサガリだろうか。しっかりとサシが入り、見るからに旨そうだ。
初めてこのハラミを食べた時はあまりの美味しさに思わず笑ってしまったが、かなり薄くカットされているので、プリプリとした食感というより、ほどけるような柔らかさがあり、タレの馴染みも抜群。即座に白米をおかわりしてしまうほど旨い。
GWのような一般的にはハラミが品薄な時期でも普通にオーダーができたので、底知れない仕入れ力も恐ろしい。
11 神戸ビーフヒレ
(焼肉冷麺 ユッチャン。)
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焼肉を超えた焼肉といえる最高のヒレ
芸能人やスポーツ選手のファンも多い、ハワイから六本木にやってきた黒船、ユッチャン。葛冷麺とLAカルビがハワイ同様人気だが、日本のユッチャンは焼肉も素晴らしい。
通常の黒毛和牛に加えて、不定期に入荷する神戸ビーフがメニューに載っていたらラッキーだ。
前回の訪問時は兵庫の上田さんが肥育した神戸ビーフ(但馬玄)のヒレをオーダーしたが、高級ステーキ店でもなかなか出会えない肉質のヒレが運ばれてきた。どこまでも繊細でシルクのような肉繊維で、芳醇な香りと共に濃厚な旨味が口いっぱいに広がる。
おまけにお肉の味を消し去ることなく引き立てるようなタレが素晴らしい。良いお肉を食べる時ほど塩と思っている人こそ、この最高のヒレをタレで食べてみていただきたい。
焼肉を超えた焼肉と出会えるだろう。
宝石のような豚ホルモンに至宝のバラすじ
12 コブクロ(焼肉 ほりぐち)
長野県の飯田と並び、焼肉タウンとして有名な北海道の北見。この北見にはテレビのロケで訪れたのだが、そこで衝撃の焼肉に知った。
北見で焼肉というと、牛サガリ(ハラミ)と豚ホルモンが有名なようだが、ほりぐちの豚ホルモンが今まで食べてきた豚ホルモンと別次元の美味しさなのだ。
そう、肉バカがハマったのが和牛ではなく豚。それほど凄かった。
屠畜してから3時間後にはお店の冷蔵庫に保存しているという豚ホルモンはどれも輝くような美しさ。蒸し焼きのようにしてちょい焼きで食べた豚版のマルチョウとも言える丸ホルモンにも腰を抜かしたが、コブクロがさらに凄く、食感やジューシーさ、臭みの無さ等、まだ生きているのではないかと錯覚するほどの鮮度で、間違いなく人生最高のコブクロだった。
なかなか行ける場所ではないが、北海道に行った際には無理してでも必ず食べに行く価値がある。テレビのロケで時間もなかったので、写真を撮れず、その輝きをお伝え出来ないのが残念でならない。
13 バラすじ
(炭火焼 ゆうじ)
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焼肉界の宝ともいうべき至高のバラすじ
日本一旨いホルモンを食べられる渋谷のゆうじ。ホルモンの鮮度、ホルモンを洗い、汚れを落とす仕込み、そして部位ごとに調整される絶妙な味付けは、他のどの焼肉店でも体験したことのないハイレベルなもので成り立っている。
ホルモンがメインと思われがちなゆうじだが、実は正肉のクオリティも抜かりがない。
イチボやミスジ、トモサンカク、サーロインなど、何を食べても美味しいのだが、最近ハマったのがバラすじ。脂が多く、普通であれば避けられがちな部位なのは間違いないが、脂の重さを感じさせずまろやかに感じさせてくれるタレのおかげで異常に旨いのだ。
特にお腹いっぱいになった頃に〆として食べるとたまらなく高揚し、さらに白米を食べてしまう。決して他の焼肉店では食べたいと思わない部位だが、こういった部位を至高のレベルの昇華させる技術こそ、焼肉界の宝ではないだろうか。
極上部位だけで成り立つ切り落としと究極のタンしゃぶ
14 切り落とし
(くにもと本店)
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極上部位を丁寧に仕上げた凄いレベルの切り落とし
焼ニシュランの初公表以来、ゆうじやよろにくと共に、常に三ツ星を取り続ける殿堂入りの焼肉店がここ、くにもと本店。サシよりも赤身の旨味を大事にし、厳選された雌牛のみを仕入れている。
そして、肉バカが日本一愛する焼肉のタレこそ、くにもとのタレだ。
酸味があり、それが和牛のサシを合わさることでまろやかに、あっさりとした味に変えてくれる。最近の焼肉店は、お肉そのものの味を消し去るようなタレが散見されるが、くにもとのタレはお肉の味を引き立ててくれるのだ。
だからこそ、仕入れる極上の和牛と最高の相性を見せてくれる。
そんなくにもとで最後に必ずオーダーするメニューがある。それが切り落としだ。
しかも、味付けは単なるタレではなくコリアン風味。盛り合わせに使いにくい極上部位の端っこを丁寧に筋切りしたりして、食べやすくなっているのだが、ピリッと辛味のあるコリアン風味のモミダレが最高に旨い。
焼き上がったら、酸味のあるツケダレにたっぷり浸ける。これこそ最高峰の旨さ。最後にオーダーするのは、冷麺のお供にするから。この組み合わせを一度でも食べたら、もう抜け出せない。
15 タンしゃぶ
(蕃YORONIKU)
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あえてタン筋を用いた食感がうれしいタンしゃぶ
非常に困った。とにかく困った。
珠玉の15皿を選考する際に、よろにくのメニューがいくつも出てきてしまうのだ。悩みに悩んで、あえて1皿選んだのがタンしゃぶだ。
タンしゃぶというとタン元を使うことが多いと思うが、よろにくのタンしゃぶは、あえてタン筋を使う。薄切りにすることで硬さを感じず、逆に適度な食感を残してくれる。
また、タン筋はタン元よりも味がしっかりとしている。このタン筋の美味しさを引き上げてくれるのがたっぷりのネギと鰹ベースの出汁。普通の焼肉店であればオマケ的な位置付けのネギも、よろにくでは妥協なく食感や甘みのしっかりとしたネギを厳選している。
日本料理店にもひけを取らないクオリティの出汁は、タン筋とネギを見事に繋ぎ合わせてくれる。タン筋とネギの旨味が溶け込んだ出汁は、うどんにしてもご飯を入れても最高だろう。
こんな美味しいものが焼肉店で食べられる奇跡に感謝したい。
写真・文/小池克臣
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