狂気・変態・残虐・超人…それぞれの〝やばさ〟を極めたキャラクターが出てくる「やばい奴映画」ベスト5
集英社オンライン / 2023年1月20日 18時1分
以前、映画に出てくる〝やばい奴〟を5人ばかり紹介した。【鳥肌不可避! トラウマ級の残虐変態アウトローな「やばい奴」ベスト5】。しかし、映画の中にはまだまだ狂気的・変態的・残虐的・超人的、その他様々な視点での〝やばさ〟を極めたキャラクターが存在する。というわけで今回は〝やばい奴〟特集第二弾として、引き続き一癖も二癖もある面々を紹介する。
第5位:『セイント・モード/狂信』(2021年)
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まずは比較的近年の作品からの選出として、サスペンス・ホラー映画、『セイント・モード/狂信』(2021年)に登場するヒロインのモードについて解説しよう。
かつてとある出来事から職を辞した元看護師のモードが、新たな雇い主のもと住み込みで働き始めるも、敬虔なキリスト教徒としてその行き過ぎた信仰心を暴走させ、ついには破滅的な道を突き進む──というのが本作の概要。
しかし、よくよく彼女の言い分を聞いてみると、基本的には「なんで私がこんな目に遭うんだ」「こんなはずじゃない」という現実逃避気味な他責思考の持ち主であり、神に対する不平不満もぶつくさと多い。
他者には潔癖なまでの清廉さを要求する反面、自らは挫折を経験するとあっさりやけっぱちになって淫らな行為に走るなど、狂信どころか非常に人間臭いブレ方も披露する。が、過去のトラウマと厳しい現実のストレスが、孤独な彼女の精神を苛み、ピークに達したとき、状況は一変する。
突然降りてきたという〝啓示〟に従い、まるで聖女のように振る舞い、自傷行為に挑むモードの姿は、もはや完全に〝やばい奴〟であり、狂信者(宗教的に正しい道を歩んでいるかどうかとは別)。
映画としては実に哀しく痛ましく、そして底意地の悪い良作である。
第4位:『ハウス・ジャック・ビルド』(2018年)
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続いては、ラース・フォン・トリアー監督作、『ハウス・ジャック・ビルド』(2018年)に登場する建築士志望の連続殺人鬼、ジャックを推薦しよう。クセの強いキャラクターがしばしば登場することでおなじみのラース・フォン・トリアー作品だが、本作のジャックもまた、なかなかの〝やばさ〟を備えている。
本業は技師、だが一方で建築家や芸術といったものに対してあこがれを抱いているジャック。とあるきっかけから胸の内にひそむ殺人衝動を解放してしまった彼は、回収した犠牲者たちの死体を使ってあるものを作ろうとする。
正直なところジャックの殺しの手際は悪く、いまひとつ要領を得ない嘘で獲物を騙そうとしては危うく失敗しかけたり、絶体絶命の窮地を相手の油断のおかげで切り抜けたりと、標的の間抜けさや場当たり的な幸運に助けられている場面が多い。
そして強迫性障害の持ち主であり、犯行の雑さ加減とは矛盾してささいなことで神経質になる(ただし、強迫性障害は次第に収まっていったとのこと)。また彼は自らの犯行をさも高尚な創作活動であるかのように語り、ほかの芸術や歴史上の出来事を引き合いに出しては、少々自身に酔っているかのような口振りになる……。
このように、稀に見る殺人鬼としての〝やばさ〟と、誰にでもある程度は見られるような〝しょうもなさ〟の両方を備えたキャラクターである。
また、エンドロールで流れる、ジャックに捧げられし歌は必聴。
第3位:『変態村』(2004年)
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〝個人〟というよりも〝集団〟としての紹介となるが、ファブリス・ドゥ・ヴェルツ監督作『変態村』(2004年)に登場する村人たちのぶっとび具合も大したものだ。
芸事の地方巡業で移動中に、道に迷って立ち往生してしまった主人公。そこで遭遇した見ず知らずの男に招かれ、近くのペンションで一泊したのが運の尽き。ペンションのオーナーはあの手この手で話をはぐらかし主人公を長々と引き留めようとするわ、そのオーナーが「近寄るな」と忠告した近くの村では、村人たちが日中獣姦を行っているわ、あげくオーナーや村人たちは主人公を〝グロリア〟なる謎の女性と誤認して奪い合いを始めるわ(※主人公は男性)。
とにかく、主人公以外のあらゆる登場人物が正気を失っている状況。なお偶然この地に迷い込んだに過ぎない主人公は、〝グロリア〟として監禁され、頭髪を剃られ、さらにはオーナーや村人たちから性的暴行を受けるなどと、やばい奴らから散々な目に遭っている。
ちなみに本作、原題は『Calvaire(試練、苦難、キリスト磔刑の地)』。〝変態村〟なる、おどろおどろしい邦題とはカスリもしない単語だが、実際の本編を最後まで観たならば、なるほど原題の方がしっくり来る……と感じるかもしれない。
意外にも、案外アーティスティックな作品であることは確かだ。
第2位:『ビジターQ』(2001年)
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ここで邦画からも一作品。三池崇史監督のエログロ・サイコ・ファミリー・ラブドラマ(?)、『ビジターQ』(2001年)の主人公一家について言及しておきたい。やはり〝個人〟というよりも〝集団〟としての紹介になる。
主人公一家は元々四人家族だったが、長女は家出中。今は風俗嬢として糊口を凌いでいる。ニュースレポーターの父は、かつて取材中に不良集団から暴行を受け、全国的な晒し者にされて以来、事実上の失業中。その後はどこか精神が錯乱してしまったようで、ナイトレジャーの取材中に家出した上記の長女との近親相姦に及んでいる。
長男はほとんどリンチに等しいイジメに遭っており、このところ不登校気味のよう。その鬱憤を、母親に対する陰惨な家庭内暴力で晴らしているという有様。
そしてその母は心を病んでおり、援助交際で小金を稼ぐと麻薬を用いて気晴らしを行っている──という、家庭崩壊というレベルでは済まないこじれ方をしている。
さて、このおぞましき一家のもとに、突如として正体不明の訪問者が現れてからというもの、もはや修復不可能かと思われた家族関係に変化が生じ始める、というのが本作のあらすじ。が、その変化の過程においても主人公一家のぶっとびぶりは凄まじく、詳細は伏せるが過激でインモラルなアングラ的展開が満載なのだ(が、どうもテーマは愛のようである)。
誰も彼もやばい奴ばかりの本作、一部の好事家には強烈に刺さるだろう。
第1位:『サイコ』(1960年)
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最後は古典から。言わずと知れた伝説的ホラー映画であるサイコシリーズの顔役、ノーマン・ベイツの名を挙げておこう。なお、ここから先の記述には同シリーズのネタバレを含むため、未見の方はご注意されたし。
アルフレッド・ヒッチコック監督作『サイコ』(1960年)、およびその続編『サイコ2』(1983年)、『サイコ3 怨霊の囁き』(1986年)、『サイコ4』(1990年)、ほかテレビシリーズのパイロット版として製作された『ベイツ・モテル』(1987年)などに登場する、世捨て人じみたモーテルの管理人が、ノーマン・ベイツ。
しかしその実態は、服装倒錯者(死んだ母親になりきるため)かつ二重人格者(ノーマン自身の気弱な人格と、支配的で暴力も辞さない母親を模した人格)。
一人二役でしばしば別人格と口論を行っているノーマンだが、〝息子の身の回りに若い女が現れたとき〟特に母親の人格が凶暴化・表出するようで、礼儀正しいモーテルの管理人はたちまち女装した連続殺人鬼になり替わり、訪れた客を血祭りに上げる。作中、シャワー中の犠牲者をナイフでメッタ刺しにするシーンなどは有名だろう。
とはいえ必ずしも絶対的に制御不能のやばい奴というわけではなく、少なくとも二作目では自らの罪を自覚した上で社会復帰に務めており、三・四作目でも比較的穏やかな暮らしぶりだったようだ。が、事あるごとに厄介な第三者の介入や珍事に遭い、そうしたやり直しが破綻しそうになるという、不運な人物でもある。
以上が〝やばい奴〟第2弾の5名である。
取材・文/知的風ハット
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