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「普通の仕事はバカバカしくてやってられない」。恐喝、詐欺等で再び逮捕され、暴力団に出戻り…破門されたヤクザたちのカタギにもなれない“第二の人生”

集英社オンライン / 2023年1月19日 17時21分

様々な理由で“カタギ”となる元組員たち。しかし、破門などで“カタギにならざるをえなかった者”が一般社会になじむのは決して簡単ではない。仕事が続かない者、罪を犯す者、ヤクザに逆戻りする者……彼らの切ない第二の人生とは。

世の中にはヤクザとカタギの間に境目がない

2022年12月20日、神戸山口組の元若頭で侠友会の寺岡修会長が引退し、侠友会の解散を表明した。組員は他の組織に移籍することなく、全員が“カタギ”になる予定だという。
だが実際のところ、こうした組員らは本当にカタギになれるのだろうか。

稲川会幹部に見送られる寺岡修元会長

指定暴力団傘下組織の、ある幹部A氏は、「カタギになるのは簡単だ。大変だというのは、カタギになっても食えない者の言い訳にすぎない」と断言する。



「組を辞めればもうカタギだ。警察は組員が辞めたと口で言うだけでは納得しない。破門状や絶縁状などが求められる。この世界ではそれがあればカタギだが、世の中にはヤクザとカタギの間に境目がない」

組織を抜けても、すぐにカタギとみなされることはない。ヤクザとカタギのくくりが、ヤクザの世界と一般社会では異なるのだ。

コロナ禍で収入が減り“飛んでいく”ヤクザたち

一概にカタギになるといっても、そこには2種類の人間がいるという。“自分からカタギになりたい者”と“カタギにならざるをえない者”だ。
「このふたつは全く違う」とA氏は言う。

「自分からカタギになる。カタギになりたい、組を辞めたいという人間は、先のことをしっかり考えている。就職しても長続きするし、自分で仕事を見つけ出す力もある。起業するようなヤツもいる。自分から辞めたいと言い出す者を引き留めておくほど難しいことはない」

一方、カタギにならざるをえない者とは、組を「飛んで」破門状を出されたような者や、不祥事や問題を起こし処分、絶縁状を出された者のことだ。A氏の組でも、コロナ禍で飛んだ組員がいる。飛ぶとは、組を逃げ出すことだ。

「事務所にいれば、タダで飯が食えた。電話番として座っているだけで金がもらえる。事務所で組長や幹部が麻雀を始めれば、そこで小遣いがもらえる。だが六代目山口組の抗争で多くの事務所は使用禁止になった。電話番も当番も必要なくなり、これで生活していた組員は食べていく術がなくなった」

同じようなことがいくつもの組で起きたという。コロナ禍で組が関係する屋台や飲食店でバイトすらできなくなった。

どこの組織も事務所を閉めた。コロナ禍で緊急事態宣言が発令されると、組長らも外出しなくなった。すると運転手も必要なくなる。動きがなくなれば、住み込みでいた組員は仕事が減る。誰も訪ねてこないから、小遣いをもらう機会もなくなる。ヤクザをやっていても食べられなくなり、彼らは飛んでいく。

※写真はイメージです

暴力団では飛んだ組員を探し出し、捕まえて暴行し、組に戻すというイメージが強いが「今はそんなことはない。ヤクザとしての正当なシノギがなくなってきた組織もあるほどだ。わざわざ飛んだヤツを探し出して戻すような手間はかけない」と暴力団関係者M氏は言う。

A氏も「飛んだヤツには破門状を出してやる。そんなヤツを引き留めておくのは組の恥」とまで言う。だが、中には頭にきて破門状を出さない組もあるようだ。破門状が出なければ、飛んだ組員はいつまで経っても形式上は組の一員のままだ。

A氏は組の若い衆に常日頃から「お天道様の下をきちんと歩けるように、逃げ出したりせず、ちゃんと辞めたほうがいい」と話しているのだと言った。

カタギになりきれず犯罪者となるケースも

ヤクザの世界では、六代目山口組の分裂抗争以来、辞めたいという者が多くなったらしい。組によっては、抗争でいつ自分も身体をかける(長い懲役へ行く)ことになるのかと不安に思う組員もいる。

「自分も将来や家族のことを考え、これを機にカタギになろうと決心した」というある元組員は、組員の時によく通っていたラーメン屋で修行している。年老いた店主が彼の過去を知った上で雇ってくれたのだ。しかし、まっとうにカタギに戻れる人間ばかりではない。

「破門された知り合いは、『普通の仕事に就いてもバカバカしくてやってられない』と、次々に仕事を変えていった。今はどこにいるのか音信不通だ」

暴力団の下部組織の元組長だった50代の男は、金銭絡みの問題を起こし上部団体から絶縁状を出された。組を離れて就職先を探したが見つからず、経営コンサルタントを自称してブローカーになったものの、うまくいかず食い詰めていた。そこであるセミナーで知り合った中小企業の社長に因縁をつけて恐喝。社長は警察に相談し、元組長は逮捕されて有罪となった。

詐欺の前科を持つ40代の元組員は、不祥事を起こして破門された。カタギとなった後、今度は右翼団体に所属したが、そこでまた詐欺事件を起こし有印文書偽造罪で逮捕された。

両者ともカタギになれずに犯罪者になったパターンだ。汗水たらして働くのを嫌い、暴力団時代に使った手法で手っ取り早く稼ごうとしてしまった。

※写真はイメージです

「もともと自分から悪さをして、ヤクザを辞めさせられたような者は、カタギになったところで昔のやり方をなかなか変えることができない」(M氏)

カタギにならざるをえなかった者の中には、暴力団組織に逆戻りする者もいる。彼らはヤクザとしての渡世名を変え、他の組織に入っていく。また、薬物で懲役に行き、破門されても薬物ほしさに違う組織に入る者もいるという。だが、他の組織に入れば噂になる。噂になれば、前にいた組はきっちりクレームを入れることになる。

「バレたらケジメものだが、分裂抗争が起きた後は、拾ってくれる組織がけっこうあった。六代目山口組を破門されたが、神戸山口組に拾われたという話は聞いたことがある」(M氏)

その他、“組が仕事をやらせるためにカタギにする”というケースも。自分から進んでなる場合もあれば、組織のために表向き、という場合もある。暴排条例における「元暴5年条項」と呼ばれる制限は、このような“偽装カタギ”の存在を警戒してのものだろう。だが、その制限が“カタギになりたい”という者の社会復帰を難しくしているのも確かだ。

カタギになるのは簡単だ。
だがカタギとして、世間に溶け込み、生きていくのは難しいということだろう。

取材・文/島田拓
集英社オンライン編集部ニュース班

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