──モデル活動の集大成を飾る、初めての写真集を発表した今のお気持ちは?
『メンズノンノ』のモデルを務めさせていただく以上は、表紙と連載、そして写真集を出すことが僕のひとつの目標でした。本当にありがたいことに、連載や表紙をやらせていただいて、卒業のタイミングで写真集を出せたことは、キャリアの締めくくりとして本当に恵まれたなと思います。
──3月で『メンズノンノ』の専属モデルも卒業されます。7年間を振り返っていただけますか?
専属モデルになりたての頃は、たくさんの企画に呼んでもらいました。でもポージングも下手でしたし、カメラの前だと緊張するし……。そんな状態だったので、だんだん呼ばれなくなっていったんです。
──それはどのくらいの時期?
もう、結構すぐですね。入って半年も経たないうちに「あれ、今月メンノン入ってないな」「来月もないな」って。自分がメインではなく、大勢いる中のひとりとしての撮影も多くなっていったので、やっぱり焦りも出てきて。
本当に悔しかったし、「このままだと来年はここにいられないかもしれない」と思ったその辺りから、プロとしての覚悟ができました。
デビュー半年で直面した厳しい壁…ハングリーさで乗り越えた過去の自分を「褒めてあげたい」。宮沢氷魚、初写真集をリリース
集英社オンライン / 2023年1月20日 12時1分
1月20日に自身初の写真集『Next Journey』をリリースした宮沢氷魚。今年の3月で7年間務めた雑誌『メンズノンノ』の専属モデルを卒業する、彼のこれまでの道のりと、今見すえている、次の旅路について聞いた。
努力している姿は人に見せたくない
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──どう乗り越えたんですか?
とにかくいろんな雑誌を読んだり、先輩方のポージングを勉強したり。もちろんすぐには習得できないので、たくさんチャレンジしてたくさん失敗しました。
カメラマンさんにポージングを指摘されたこともあったし、自分では変だなと思ったポージングを、編集さんが褒めてくれたことも。自分が思っているものとモニターに映っているものの見え方の違いも学びました。素人だったから、自分だけの判断じゃ何もわからなかった。周りの方に助けてもらい、教えてもらいながら学んでこられたと思います。
──忘れられない思い出は?
打ち合わせの段階では自分が着る予定だった洋服を、急遽現場で別のモデルが着て誌面に載ったことがあったんです。それはやっぱり一番悔しかったですね。もちろん、誌面の全体のバランスとか、いろんな事情があったと思うんです。でも当時新人だった僕は、「自分がダメだったんだ」とすごく落ち込みました。
それでも、「向いてないから諦めよう」と思うのではなく、「落ち込んで終わっちゃうのはもったいない。次に呼ばれたときにはどうしよう」と工夫したり、考えたりすることができたことはよかった。今となっては、当時の自分を「よくやったな」と褒めてあげたいです。
──クールで冷静なイメージがあるので、ハングリーさにはちょっと驚きです。
そうですかね(笑)。何事においても、常にもっとレベルを上げたいと思って臨んでいます。
──7年間の活動の中で見出した、モデルとしての自分の武器は?
「氷魚って何着ても似合うよね」と言ってもらえることが増えました。それはモデルとして本当に必要なことだと思うので、ありがたいことに体型に恵まれたなと思います。
容姿としては、クオーターということもあって、ちょっとアンニュイな雰囲気があると周りの方から言われます。それは自分にしか出せないものでもあるし、武器だったと思います。
パワーアップすることが恩返しになる
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©宮沢氷魚ファースト写真集『Next Journey』/集英社 撮影/尾身沙紀(io)
──写真集は京都と沖縄で撮影したそうですね?
スタジオでしっかりライティングを組んだ、かっこいい写真集を作ることもできました。でも僕は、7年間を経てたどり着いた、現在地を表現したくて。撮られていることを意識するよりも、オフの自分を見せたいと思ったんです。なので、旅をテーマにしました。
京都は去年、映画『レジェンド&バタフライ』の撮影で1ヶ月半〜2ヶ月くらい滞在していた場所。修学旅行で行く観光地というイメージがあったけど、撮影を通して歴史の深さや重要さを肌で感じたので、写真集のロケ地にしたいと思いました。
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©宮沢氷魚ファースト写真集『Next Journey』/集英社 撮影/尾身沙紀(io)
──沖縄は、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』の舞台でした。
撮影をしたのは、朝ドラがクランクアップした2週間後くらい。本当に仲のいいクルーと旅行に行って、たまたま写真を撮ったみたいな感覚でした。枕投げをして遊んだり、ご飯を食べたり、いろんな表情の写真やロケーションが楽しめると思います。
──現在は俳優としても幅広く活躍していますが、モデルとしてデビューしたことは、宮沢さんにとってどんな意味がありますか?
これからどんなキャリアを積んでもずっと背負っていくものです。『メンズノンノ』がなかったらこの仕事を続けていないと思いますし、僕が僕ではなくなってしまう。これからも常に誇りに思いながら歩んでいきたいです。
──すごく愛がありますね。
めちゃくちゃ居心地がいい場所なんですよ。みんな家族のように仲がいいし、いい意味での競争があるし、後輩もいるから面倒を見たいと思える子たちもたくさんいる。俳優として作品に入っているときも、『メンズノンノ』という帰る場所があることは、すごく安心感がありました。
ただ、そこに甘えてしまっている自分もいて。もしもこれから仕事がうまくいかなくなったときに、「『メンズノンノ』があるから大丈夫」みたいに思いたくない。あえて厳しい環境に身を置いて、自分をプッシュする必要があると思ったんです。
もちろん、卒業することはすごく悩んだし、まだまだ恩を返せていないような気がすることもあるんです。でもやっぱり、自分の人生を次のレベルにステップアップさせるためには、今がベストだろうなって。坂口健太郎くんや成田凌くん、柳俊太郎くんたち先輩がそれぞれ活躍している姿を見ているので、自分がパワーアップしていくことが、『メンズノンノ』にできる恩返しだと思っています。
新たな旅のスタートにワクワクしている
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──宮沢さんは、アメリカ留学中に事務所に履歴書を送ってキャリアをスタートさせたり、モデルから俳優に挑戦したり、大きく環境を変えることでステップアップしてきた印象があります。4月に29歳を迎えますが、今いる現在地は、どんな場所なのでしょう?
別に数字にこだわっているわけじゃないんです。でも、30歳が見えてきたときに「これからどうしていきたいんだろう」と、節目として考えるときが来ると思うんです。今はありがたいことに忙しくさせていただいていますが、多分、やりたいことに体力が追いついていかなくなったり、歯車が噛み合わずバランスが取れなくなるタイミングが来る気がしていて。
そこでどう軌道修正して、自分の精神と体の状態のバランスを取るかは、きっと、働く人たちみんなが直面すること。
だから、一度ここでちゃんと区切りをつけて、これからどうしていきたいのか、自分と向き合う時間を設けたいと思っているところですね。
──どんな未来を思い描いていますか?
お芝居はもちろんですけど、それ以外にも、どんどん自分の視野を広げていきたいと思っています。やっとコロナも落ち着いてきて、海外に行く時間もできてきたので、いろんな人と話したり、いろんなことを経験したい。
そして、そのことを伝えていきたいと最近は考えています。それをどう形にしていくかは、まだまったく未定ですけどね。
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──昨年末はシャネルのお仕事でパリに行かれていましたね。インスタグラムには韓国の俳優、パク・ソジュンさんとの写真もアップされていました。
映像や写真でたくさん見てはいましたけど、初めてパリに行ってみると、たった3泊という短い時間でも、本当に刺激的で。日本からなかなか出られないコロナ禍では、世界がすごく遠く感じてしまうこともありました。
でも、パリで出会ったパク・ソジュンさんはもちろん、いろんな国のクリエイターやPRの方と知り合って、自分の視野が狭かったことを感じました。世界のカルチャーやエンターテイメントが、一気に近く感じ始めましたね。
そもそも僕は、インターナショナルスクールに通っていたり、留学で海外の生活を経験していたりと、いろんな世界や文化に触れる経験をしてきたので、最近、その感覚がちょっとよみがえってきた感じ。これから自分が進んでいきたい道が、ちょっとだけ見えた気がするので、今抱いている気持ちを、どんどん大きくしていきたいなと思っています。
──具体的に行ってみたい場所、見てみたい景色は?
アイルランドです。遠い親戚がアイルランドにいるらしくて。今となっては連絡先も知らないし名前もわからないのですが、自分のルーツでもあるアイルランドを、いつか訪ねてみたいと思っています。
──これからが楽しみですね。
きっと、芸能界に足を踏み入れた約7年のジャーニーが、本当に濃い充実したものだったからこそ、次に進むことができると思うんです。新たなる自分の旅のスタートに、相当ワクワクしています。
取材・文/松山梢 撮影/小田原リエ ヘア&メイク/吉田太郎(W) スタイリスト/松川総
宮沢氷魚 ファースト写真集『Next Journey』(集英社刊)
宮沢 氷魚
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2023年1月20日(金)発売
2970円(10%税込)
A4判/120ページ
978-4-08-790107-8
沖縄と京都の2都市で6日間かけて撮影を敢行。京都では、東福寺や旧三井家下鴨別邸などの貴重な歴史的建造物で撮影をしたほか、鴨川を背景に、思わずスタッフから感嘆のため息がこぼれた美しい着物姿も。沖縄での撮影は、子どものようにはしゃいで海で波と戯れたり、アイスを片手に古民家の周りを散歩したり、得意の三線を披露したりと、これまで見たことのないような素の表情がたくさん見られる1冊に。
©宮沢氷魚ファースト写真集『Next Journey』/集英社
撮影/尾身沙紀(io)
宮沢氷魚
1994年4月24日生まれ。アメリカ合衆国出身。第30回メンズノンノ専属モデルオーディションでグランプリを獲得し、2015年10月号よりメンズノンノモデルとして誌面デビュー。ドラマ『コウノドリ』(2017)で俳優デビュー。以後、ドラマ『偽装不倫』(2019)、連続テレビ小説『エール』(2020)などに出演。初主演映画『his』(2020)にて数々の新人賞を受賞、また、映画『騙し絵の牙』(2021)では、第45回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。 2022年には、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』に出演。 2023年には、映画『THE LEGEND & BUTTERFLY』、映画『エゴイスト』の公開が控えている。
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