「バズる期待があった」「新色発売日から売上が跳ねます」。ファミリーマートが起こす“コンビニコスメ革命”の裏側
集英社オンライン / 2023年1月22日 10時1分
ファミリーマートは「コンビニエンスウェア」に続き、コスメやスキンケアアイテムでも大きな注目を集めている。2020年からファミマ限定(当時)で展開を始めたコスメブランドは累計販売数170万個を突破。別のブランドとのコラボ商品も好調だ。“コンビニコスメ革命”ともいえる商品戦略の背景を担当者に聞いた。
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ファミリーマートは全国の店舗で「sopo」を展開。リップスティック(税込1280円)は色落ちのしにくさや保湿力が売り
「緊急用」から「わざわざ足を運びたくなる」商品展開へ
コンビニコスメといえば、これまで「緊急用」のニーズを意識した商品展開が主だった。
従来品よりも小さなサイズで安価な商品をコンビニ限定として打ち出し、黒や茶、ベージュなど誰もが使いやすいコンサバティブなカラーをそろえた。
しかし、緊急需要を待っているだけでは売上の拡大は見込めない。だからこそ、ファミリーマートは仕掛けた。
「コスメを買うためにわざわざ足を運んでもらうための商品展開が必要だと考えました」と、商品本部日用品・雑誌部の新宅寛史さんは説明する。守りから攻めの姿勢に入ったのだ。
「トレンドを意識したラインナップを前提として、今までのコンビニには置いていなかったような思い切った色展開で話題づくりをしたいと考えました。
コアターゲットは、10〜20代の流行に敏感な若い世代。SNSで常に新しい情報をキャッチアップしていく世代に狙い通りに情報が届けば、『これはバズるのではないか』という期待がありました」
2020年11月、化粧品ECプラットフォーム「NOIN」を運営するノインが開発したコスメブランド「sopo(ソポ)」を、ファミリーマートで買えるコスメブランドとしてデビューさせると、SNSを中心に瞬く間に評判が広がった。
新色発売初日から「売上が跳ねる」
sopoは「ひとくちだけ、試してみたい、色がある。」と掲げる通り、カラーバリエーションの豊富さが特徴だ。
店舗によって展開にばらつきはあるものの、カラーマスカラなら10色、組み合わせの妙が光るパウダー&ライナーは4色が並ぶ。
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トレンドカラーをそろえるsopoのカラーマスカラ(税込935円)
さらに、半期に一度新色が登場。通常のコスメブランドでは当たり前だが、緊急購買のための定番品がメインのコンビニコスメが、定期的に新色を発売するのは珍しい。
なんといっても最大の強みは、これらが47都道府県のファミリーマート約1万6600店で展開されることである。
主に百貨店で展開する「デパコス」や、ドラッグストアを中心に展開する「ドラコス」よりも圧倒的に商圏が広い。ドラッグストア大手3社の店舗数を合わせても、ファミリーマートの約4割にとどまる。
加えて、ファミリーマートの多くが24時間営業のため「今ほしい」に応えられる。到着までに時間のかかるネットショッピングにはない、コンビニが持つ長所を最大限に活かしたブランディングではないだろうか。
そしてsopoが話題を呼んだのは、こうした色展開だけでなく、そのクオリティーが購買客の想像を越えていたからである。
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ファミリーマート商品本部日用品・雑誌部の新宅寛史さん(左)と芝恵莉子さん
同部の芝恵莉子さんは「デパコスにも引けを取らないレベルのものがコンビニで、この価格で買えることが一番の売りです。かつ、お客様にしっかり届いていることがSNSのコメントから感じられます」と説明する。
「複数個を買ってくださるお客様やリピーターも多いんです。3月と10月の新色発売日から売上が跳ねます。多くの方がいろんな感想をSNSにアップしてくださるのがうれしくて、(芝さんと)ふたりでよくチェックしています」と新宅さん。
「新色を楽しみに待っている方が増えている実感があります。ありがたいことに、インフルエンサーの方々がsopoをおすすめしてくれて、そうした情報を見た方が新色の発売を知り、店舗に足を運んでくださっている流れもあります」と芝さんが続ける。
スキンケアブランドとのコラボ商品も好調
売上は全国で好調、地域差は特にないという。
かねてより展開しているカネボウ化粧品の「media(メディア)」の売上も落ちていない。購買層は若い世代のみならず40代も目立つ。
人気ヘア&メイクアップアーティストの小田切ヒロさんが自身のYouTubeチャンネルの「2022年のベストコスメ!プチプラ・ドラコス・韓国コスメ編」アイシャドウ部門で、昨年10月に発売されたアイパレットの新色「03 スパイシーオレンジ」を選出するなど、プロからも高い支持を得ている。
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アイパレット「03 スパイシーオレンジ」(税込1280円)。半期に一度、新色を発売する
sopoの成功で手応えを得たファミリーマートは昨年10月、マッシュビューティラボの「Cosme Kitchen(コスメキッチン)」と協業したスキンケアブランド「Mitea ORGANIC(ミティアオーガニック)」を発売。全国のファミリーマートとコスメキッチンなどで販売している。
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「Mitea ORGANIC」シリーズ
近年、オーガニックコスメへの興味関心が高まっているが、まだまだ消費者との接点は限られている。それが全国のファミリーマートで販売することで、今まで届かなかった客層にアプローチすることも狙いだ。
売上は順調に推移し、展開している既存のスキンケア商品の販売数が下がらずに、ミティアオーガニックの売上がプラスされている状態だという。客がわざわざ足を運び、選んで購買していることの表れだろう。
消費者にとって身近な存在であるコンビニの利点を活かし、今までとは違う着眼点の打ち出しができれば、まだまだ届く層があることをファミリーマートは証明した。
コンビニの小さな売場で起きた革命と言っても過言ではないだろう。
取材・文/高山かおり
撮影/一ノ瀬 伸
写真提供/ファミリーマート
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