1999年の配給収入ランキング1位が『アルマゲドン』(1998)であることは、同作でブルース・ウィリスの娘を演じたリヴ・タイラーがさっそく1月号の表紙を飾っていることからも明らかだろう。
ついに世紀末。『アルマゲドン』と『スター・ウォーズ』新3部作というSF超大作が指し示した、21世紀の映画の可能性
集英社オンライン / 2023年1月25日 12時1分
現在も主流のスーパーヒーロー映画&その前後の時代を描く一連のシリーズ。その礎となったのが、1999年の2大作だ。キーワードは“ディザスター”と“プリクエル”。さてその意味は?
世紀末、気分は“ディザスター”!?
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エアロスミスのスティーヴン・タイラーの娘リヴは、『君に逢いたくて』(1995)で映画デビュー、恋愛ドラマ等を経て『アルマゲドン』で大ブレイクした
©ロードショー1999年1月号/集英社
『アルマゲドン』は、ハリウッドの“ディザスター映画”ブームを象徴する作品だ。ディザスターとは大災害のことで、70年代にはパニック映画と呼ばれ、『大空港』(1970)『ポセイドン・アドベンチャー』(1972)『大地震』(1974)『タワーリング・インフェルノ』(1974)といった作品が人気を博したが、90年代に呼び方を変えて第二次ブームが到来した。
きっかけは1993年の大ヒット映画『ジュラシック・パーク』だ。CGを導入することでそれまで不可能だった映像表現ができることが証明されると、竜巻の恐怖を描く『ツイスター』(1996)をはじめ、火山噴火を題材にした『ボルケーノ』(1997)と『ダンテズ・ピーク』(1997)など、各社がこぞってディザスター映画を立ちあげた。主人公たちが大災害に巻き込まれる設定を取り入れれば、観客の度肝を抜く映像と、極限状態に置かれたキャラクターたちのドラマを描くことができる。エイリアン襲来を描く『インディペンデンス・デイ』(1996)もディザスター映画だしーーというか、ローランド・エメリッヒ作品の大半はディザスター映画だーーその究極は『タイタニック』(1997)だ。
「巨大隕石が地球に落下する」という設定を取り入れたディザスター映画に関しては、スピルバーグ監督が製作総指揮を務める『ディープ・インパクト』(1998)と、ジェリー・ブラッカイマーがプロデュースする『アルマゲドン』が同時期に製作されていた。前者が社会性やリアリティを取り込んだわりと真面目な作風だったのに対し、後者は気持ちがいいほど荒唐無稽に終始。その結果、エンタメ性を最優先した『アルマゲドン』が大勝利を収めることになる。
ちなみに、メガホンを取ったマイケル・ベイ監督は、『パール・ハーバー』(2001)ーーこれも歴史大作のふりをしたディザスター映画だーーを手がけたのち、『トランスフォーマー』(2007~)シリーズを量産していくことになる。CG映像を売りにしたハリウッド映画のトレンドが、ディザスター映画から、アメコミ映画などの原作モノに移っていくためだ。
『スター・ウォーズ』新3部作が切り拓いた新たな地平
配給収入ランキング2位は、『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』(1999)だ。『ジェダイの帰還』(1983 ※公開時の邦題は『ジェダイの復讐』)から16年ぶりに『スター・ウォーズ』の新作が3部作として公開されるとあって、当時は大きな話題を集めた。「ロードショー」も8~10月号の表紙にし、各号で公開日のLA現地取材などの特集に数十ページを割いている。
本作の評価に関してはすでに語り尽くされているので割愛するとして、ここではジョージ・ルーカスの功績を挙げたい。
まずは、キャスティングだ。オビ=ワン・ケノービ役のユアン・マクレガーとパドメ・アミダラ役のナタリー・ポートマンは、いずれもインディペンデント寄りの作家性の高い映画で活躍する若手俳優だった。また、オビ=ワンの師クワイ=ガン・ジン役のリーアム・ニーソンにしても、『シンドラーのリスト』(1993)や『マイケル・コリンズ』(1996)で知られる演技派俳優だ。彼らを起用したのは見事な鑑識眼であり、俳優の側も『スター・ウォーズ』を経て役者として活躍の幅を広げた。その後、スーパーヒーロー映画に演技派たちが出演するのが当然となってのはご存じのとおりだ。
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『トレインスポッティング』(1996)などトンガったインディーズ映画で活躍していたユアン・マクレガーのオビ=ワンへの起用は大きな話題となった
©ロードショー1999年8月号/集英社
もうひとつは、「前日譚(プリクエル)」というコンセプトを普及させたことだ。それまで人気シリーズの新作といえば、続編と決まっていた。前作で紹介した登場人物のその後を描いていく。だが、『ファントム・メナス』から『シスの復讐』(2005)まで続く新3部作の舞台は、『スター・ウォーズ(新たな希望)』(1977 ※第1作だがエピソード4として製作された)の前の話であり、オリジナル3部作の主人公だったルークやレイア、ハン・ソロは(ほとんど)登場しない。
いまや映画やテレビドラマは前日譚やスピンオフで溢れているので、若い人には想像しづらいかもしれないが、当時の一般観客にとってこれは斬新な概念だった。それ以前も、『ゴッドファーザー PARTII』(1974)や『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』(1992)といった、過去を描く作品は存在していたものの、ジョージ・ルーカスは『スター・ウォーズ』新3部作で前日譚の楽しみ方を世に知らしめた。その結果、『007』や『エイリアン』『猿の惑星』『ハリー・ポッター』『ロード・オブ・ザ・リング』『X-MEN』といった人気シリーズも追従することになったのだ。
文/小西未来
◆表紙リスト◆
1月号/リヴ・タイラー※初登場 2月号/ブラッド・ピット 3月号/レオナルド・ディカプリオ 4月号/キャメロン・ディアス 5月号/クレア・デインズ 6月号/シャーリズ・セロン 7月号/ブラッド・ピット 8月号/ユアン・マクレガー※初登場 9月号/ナタリー・ポートマン 10月号/ユアン・マクレガー 11月号/キアヌ・リーヴス 12月号/キャサリン・ゼタ=ジョーンズ※初登場
表紙クレジット ©ロードショー1999年/集英社
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