#2はこちら(1月26日12時公開予定)
「男性優位の火遊び」がほとんど。乳首ポロリ、喫煙、いじめ……表現が自由すぎた平成不倫ドラマの変遷
集英社オンライン / 2023年1月25日 12時1分
“平成レトロ”ブームがテレビドラマにも波及し、かの時代に一世風靡をした地上波放送ドラマの人気がうなぎのぼりだ。その中でも今回は“不倫”ものにスポットをあて、時代とドラマを振り返る。
男の火遊び、悲恋……平成初期に大人気の「不倫ドラマ」は
ドロドロ愛憎劇が主流
平成に放送されたドラマが韓流ドラマに追いつけ、追い越せとばかりに、今人気らしい。某サブスク会社でも、平成ドラマのタイトルがよく検索されていることを聞いた。
では平成に放送されたドラマは、何が特徴だったのか? 令和に放送されているドラマと何が違うのだろうか?
振り返ると浮かんでくるのは、ドラマそのものの表現が自由だったということだ。乳首ポロリ、喫煙、いじめ……と教育に悪いと取り沙汰される内容のオンパレード。ただどんなに教育委員会から揶揄をされようと、面白いものは面白い。中でも“不倫”という背徳の恋愛をテーマにしたドラマというのは、面白さが群を抜いていた。
そもそも最近ではすっかり不倫ドラマを見かけなくなった。テレビ局にクレームが入っているのだろうか。それとも不倫が日常化しすぎて、取り上げることに「つまらないかもしれない」と躊躇しているだろうか。
いずれにせよ、誰もが楽しめるエンターテイメント(=不倫)を放置しておくのももったいない。それならば、とドラマオタクの脳内データを駆使して、不倫ドラマを回顧する。作品セレクションに関しては筆者にお任せを。
不倫ドラマ百花繚乱期の1997年を振り返る
まずは平成前期の1989〜2004年をたどる。ポケベルを鳴らして連絡を取っていた頃から、携帯電話が普及し始めた時期にかけての不倫だ。この期間は、不倫の関係性のイニシアチブを既婚男性が握っていた。
浮気が発覚しようものなら「一回くらいなら、子どもに免じて許しなさいよ〜」と、ご近所親戚からまくしたてられて、サレ妻は辛酸をなめるのみ。不倫は小金を持った男性の火遊び。そんな時代背景のもと、1997年はやけに不倫ドラマの放送が多かった。
この年の不倫ドラマの金字塔といえばやはり、原作、映画、ドラマの3本立てで大ヒットとなった『失楽園』(日本テレビ系列・7月期)。当時、週刊誌を立ち読みしていたら「昼間の映画館が主婦で満席」になったとかなんとか記述されていた。
田舎に住む駅員の青年がセレブ妻と恋に落ちて逃亡する、豊川悦司主演『青い鳥』(TBS系列・7月期)もこの年だ。都会を知らず、心の擦れていない、無口な柴田理森(豊川)が惚れた相手は地元の有力建設会社の専務で、市長候補の妻。この専務(佐野史郎)が資産と権力をフル活用して、逃げるふたりを追いかける物語だった。
この作品を思い出すと、同時にglobeの『Wanderin' Destiny』が脳内に流れてくる。
『青い鳥』と同クールには、ほかにも不倫ドラマがあった。
今となっては貴重な石田ゆり子の濃厚ラブシーンがあった『不機嫌な果実』(TBS系列)もそれだ。経済的に不自由していない妻が、夫だけでは飽き足らず、編集者や若い男との不倫に溺れていく物語。平成後期に別のキャスティングで再度ドラマが制作されていたけれど、私は前期のほうがダントツ響いた。
とにかく1997年は不倫作品に始まって、終わったような一年だったのかもしれない。
不倫要素だけじゃない、平成ドラマのトンデモ展開
翌年には、松嶋菜々子が清純派のヴェールを脱いだと話題になった『スウィート・シーズン』(TBS系列・1月期)も放送された。上司と部下の恋愛が描かれており、最終的には上司(椎名桔平)が記憶喪失になるという、トンデモ展開へ突入していくという平成さがあった。
今思うと釈然としないのは何となく、男性のほうが不倫愛の手綱を握っていたこと。妻がいる上司を、いつも見送る立場の藤谷真尋(松嶋)。主題歌はサザンオールスターズの「LOVE AFFAIR 〜秘密のデート」だったけれど、その向こうには竹内まりやの『マンハッタン・キス』も流れていたような。
やがて少しずつ不倫の見解が変わっていくのか、2004年の『それは突然嵐のように…』(TBS系列・1月期)では“普通の主婦”が恋に落ちていくという物語に転じていく。
ただし、落ちる相手が山下智久演じる男子高校生だったので、けして“普通”の恋愛ではなかったことだけは加えておく。
今回紹介したいずれの作品も不倫は悲恋として扱われていた。最終的には男女どちらかが人生を犠牲にするような、人間関係ドロドロ愛憎劇だった。ハッピーエンドはまずありえなかった。
余談ではあるけれど、TBSはなんでこんなに不倫作品に強いのだろうか? ピックアップした作品はほぼTBSで放送されている。しかも全作品、いい塩梅で世相を反映している。
不倫ドラマの先駆けともいえる『金曜日の妻たちへ』を制作した昭和期から、不倫愛に目をつけていたテレビ局。ずばぬけた先見の目があったのか。
文/小林久乃
#2「平成後期の不倫ドラマのキーワードは“男性の軟弱化”と“スーパーにも落ちてるくらい身近な不貞愛化”」はこちら(1月26日12時公開予定)
『ベスト・オブ・平成ドラマ!』
小林久乃
![](https://assets.shueisha.online/image/-/2023/01/24012632165293/400/2636_001.jpg)
2022年12月16日
1650円
240ページ
978-4413232869
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