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真冬の車中泊の旅―四国のど真ん中で食べた、初めての“ミリメシ”が五臓六腑にしみたワケ

集英社オンライン / 2023年1月28日 15時1分

公共交通機関を使わない、宿に泊まらない、高速道路を使わないという3原則を課しての車中泊の旅も東北、中部に続き3度目に。西を目指した真冬の車中泊旅は、なぜか大きなお楽しみの地元グルメをあきらめることに……。その理由とは。

人生3回目の車中泊旅に出発。
行き当たりばったりで、進路は西に!

思うところがあり、車中泊の旅をはじめたのは2022年・春のことだった。

以来、自力カスタムした激安中古のスズキ・エブリイ号を駆って、公共交通機関を使わない、宿に泊まらない、高速道路を使わないという3原則を自分に課しつつ、東北中部地方の山間部を旅してきた。

生まれ育ち、半世紀以上暮らしてきたにもかかわらず、もしかしたら知らないことだらけの我が祖国、日本の今の姿をこの目で見るために。



そして年が明けて間もない2023年1月半ば、冬の車中泊旅を敢行した。

事前に何も計画しないことも僕の旅の特性だが、進む方向だけは決めていた。

Go West! 西へ!

出発地点は、デュアルライフ民である僕の第二の家がある山梨県・山中湖村

おっさん一匹が地べたを這うように、行き当たりばったりで西へ西へと向かった車中泊の旅。
それは過去2回の旅と同様、特に大きな事件も起こらぬ、平凡なものではあったが、そのいきさつに少しでも興味のある奇特な人のために、本稿を書いている。

いきなりだが、今回の旅を始めて4日目、1月17日のことを書こう。
上記のように僕の車中泊旅には、自分で自分に課した3つの大きな縛りがあるのだが、今回に限って4つめの臨時ルールを緊急追加した。

それは、店で食事をしないこと。

一般的に言えば、土地土地の産物である美味しいものを食べるというのは、旅の大きな楽しみだろう。
それを敢えて放棄するというのだからいささかマゾ的だし、あまりにもバカだと思われるかもしれない。

でも、これには重大な個人的理由があった。

ダイエットのためだ。

出発する前から薄々気づいていた体重の著しい増加をはっきりと認識したのは、初日に訪れた温泉施設の脱衣所の体重計の上でだった。
これはマズイ非常にマズイと青ざめた僕は、この車中泊の旅の期間を利用して、食事制限をすることにした。

普段は育ち盛りの中学生の娘を含む家族で暮らしているお父さんに、日常生活での食事制限などなかなかできない。
1日3食を自分の裁量で決められる旅行中が、ダイエットにもっとも適しているはずなのだ。

よって、何回かに分けてお届けしようと思っている今回の旅行記には、グルメ情報がほとんど登場しないけど悪しからず。
と言いながら、第1回目の今回、これから書こうと思っているのは食事についての話だ。

いざというときのために持ってきていた
ミリメシを活用することに

いくらダイエットのためとはいえ、朝から晩まで何も食べないわけにはいかない。
だから行く先々のスーパーやコンビニで、カロリーや糖質量の表示を気にしながら買ったものを食べつつ旅をしていたのだが、食品ストッカーとして使っているクーラーボックスの中には、実は家から積んでいった食べ物も入っていた。

晩ごはんはこれだけ、という感じで頑張ることにした

それは“非常用糧食”と呼ばれる、自衛隊員が活動中に食べるレトルト食品、いわゆる“ミリメシ”である。

パッケージや内容などに多少のアレンジを加えて一般発売されているミリメシもあるようだが、僕が携行していたのは、とあるルートから入手した非売品。
自衛隊で実際に使われている、正真正銘の実物だ。

ミリメシにはほかに“戦闘用糧食”というのもあるが、“非常用糧食”の方は主に災害派遣等の現場で隊員が食べるものなのだそうだ。

防衛省・自衛隊のホームページでの紹介見ると、「発熱材で加熱することができるので温かい食事が取れる上、長期間の活動になっても飽きがこないよう、和・洋・中、あるいは肉・魚料理等の献立がバランスよく設定されています。水だけあれば簡単に暖かいご飯が作れます。」とある。

さて、既にあれ? と思った人もいるかもしれない。
ミリメシってカロリー高いんじゃないの? ダイエットになるの? と。

そうなのだ。
自衛隊員が訓練中や活動拠点で力をつけるために食べるものだから、ミリメシは栄養価の高い食品のはず。
だから一日中座って車を運転している僕が、もしも毎日食べていたら、ダイエットどころか逆に体重を増やす結果になるだろう。

でもいくらダイエットをしているとはいえ、大の大人である僕が11日間、厳密な低カロリー食を貫いたら、体も心もおかしくなってしまう。
そこで、「店で食事をしない」というルールだけは守るため、何日かに一度、今日はしっかり食べると決めた日には、ミリメシを食べて耐え抜こうと考えたのだ。

“非常用糧食”とは、決死の覚悟であるそんな僕を奮い立たせるネーミングでもある。

四国のど真ん中で食べた初ミリメシ

四国山地を横切る吉野川の激流によって創られたという大歩危(おおぼけ)・小歩危(こぼけ)渓谷は、四国有数の観光名所だが、この日は平日の火曜日、しかも寒さ厳しき真冬でもあるため、どこに行ってもほかの観光客にはほとんど会わなかった。

徳島県の大歩危渓谷の絶景

雄大な渓谷を目の当たりにして「お〜」と小さな歓声を上げても、祖谷(いや)のかずら橋(サルナシなどの葛類を使って架けられた原始的な吊橋)を「ひ〜」と言いながら渡っても、振り返るとただ一人。

祖谷のかずら橋。めちゃくちゃ怖い

この状況を、「なんて寂しい……」と嘆くようだったら、もともと車中泊の旅などしていない。
僕は日常生活では滅多に味わえないこの孤独感を楽しみ、むしろ心を洗われていた。

祖谷のかずら橋のほど近くにある祖谷ふれあい公園の静かな駐車場で、いよいよミリメシを食べてみることにした。

ほかには誰もいない駐車場でミリメシのしたくを開始

非常用糧食にはいくつもの種類があるが、持っていた2種類の中から「煮込みハンバーグ」をピックアップした。
発熱剤に水を加え、温めること20分。
やがて、ほっかほかのミリメシが出来上がった。

景色を眺めながら温める

レトルトのパッケージから出してみてまず驚いたのは、米の分量が多いことだ。
白飯のパックとドライカレーのパックがあり、それぞれ十分な量がある。
それを皿の上に出し、煮込みハンバーグを乗っけてみた。

非常用糧食「煮込みハンバーグ」

眼下の渓谷から聞こえてくる川の流れにモバイルスピーカーで古いR&Bを混ぜ、真冬だというのに常緑樹の緑が爽やかな山々を見ながら「いただきます!」。

するとこれがまあ!
意外と思えるほどの美味だったのだ。

“非常用糧食”という名前からイメージしていたのは、味など二の次でエネルギー補給を最優先した食糧だったが、味付けにも十分配慮された立派なご馳走である。
ネット情報によると、日本のミリメシのレベルの高さは昔から有名で、1990年代のカンボジアPKOの際、参加国で行われたミリメシコンテストで1位に選ばれたこともあるのだそうだ。

なるほどなるほど……。
これなら我が国も安全だ……。

などと一人で納得しつつパクパク。あっという間に完食してしまった。
念のため調べてみたら、非常用糧食1食あたりのカロリーは1000kcalほどらしい。
ダイエットにとって、たまのドカ食いはリバウンドの元凶だが、成人男性の1日の摂取カロリーの目安は一般的に2000kcalと言われているから、このくらいは全然大丈夫だろう。

もうひとつのミリメシもやっぱり美味かった

僕がこの旅に持ってきていたミリメシは2種類あったため、もう一方を最終日の1月22日、山中湖の湖畔で昼食として食べた。

山中湖畔で第2回目のミリメシ準備

こちらは「豚肉と里芋煮」。
3袋に分けられたレトルトパックを、例によって発熱剤で加熱し、皿の上にあけてみると、白飯と山菜飯という2種のご飯、そしてメインディッシュの豚肉と里芋煮だった。
山菜飯というのは味付きのおこわのようだ。

非常用糧食「豚と里芋煮」

やはり多めの米にムムムとひるんだが、食べてみるとやっぱり美味い!
煮汁も絡んで無闇に美味しくなっている大量の米は、糖質制限でやや飢餓状態の僕の五臓六腑に染み渡った。

日本人は米を食っているときが一番幸せなのかもな。
もちろん、メインディッシュの豚肉と里芋煮の味もバッチリだった。

野外で食べていること、それにダイエットの食事制限の合間に食べているというアドバンテージを差し引いたとしても、本当に美味しかった。
日本のミリメシ、最高です。

そして僕の車中泊旅日記は続きます。

写真・文/佐藤誠二朗

「うまいうまい」とミリメシを食べる僕を見守る白鳥

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