セルフメイクアップブランドのKATEは1997年の誕生から今年で26年。「NO MORE RULES.」のステートメントを体現するこのブランドは、2022年においても"プチプラ"と呼ばれるセルフメイク市場で20年連続シェアNo.1を獲得し、市場の最先端を走り続けている。
コスメブランド「KATE」の快進撃の背景。コロナ禍に負けずにシェア拡大、メンズメイク流行を牽引
集英社オンライン / 2023年2月6日 8時1分
2020年より続くコロナ禍で化粧品業界が大打撃を受けたなか、逆境を乗り越えて業績を伸ばしているKATE。近年話題の「メンズメイク」の流行も牽引し、男性からの人気も博している。性別にかかわらず愛されるコスメになったのはどのような理由があるのだろうか。ブランドの人気の秘密を聞いてみた。
化粧男子にも大人気! 「誰でも使える」設計の妙
KATEは女性だけでなく男性のファンも増やしているブランドだ。
近年ではリモートワークやオンライン会議の増加などから自分の顔を見る機会が増えたことも相まって、メンズメイクをする男性が急増中。さまざまな情報サイトでKATEブランドがメンズメイクのおすすめグッズとしてランキング上位を占めるなど、男性からの人気が高いのも特徴だ。
「KATEブランドもメンズに認知される機会が多くなったように思えますね。あくまで肌感ですが、眉毛を整えたり肌に気をつけたりとメイクに興味を持つ男性も多くなったように感じます。女性だから、男性だから、ということではなく(性別に関係なく)自由にメイクを楽しんでもらいたいですね。」(花王株式会社 化粧品事業部門 KATE PR担当の若井麻衣氏。以下、「」は若井氏のコメント)
特にメイク男子に人気の商品が「デザイニングアイブロウ3D」だ。これは眉毛を整えるコスメで、誰が使っても失敗せずに綺麗に眉メイクができると大ヒットとなっているロングセラーアイテム。不器用でも簡単に眉尻まで立体的な眉毛を作ることができる優れモノだ。眉毛は少し整えるだけでも顔の印象がガラリと変わるため、メンズメイクにおいては必須のアイテムになっている。
これ以外にもアイライナー「ダブルラインエキスパート」なども人気。極薄ブラウンの発色で、筆も極細タイプなのでメンズメイク初心者でも扱いが簡単。また、メイクをしている感がなく本物の影のように自然に見せられるのが評判の理由だ。
KATEの商品は基本的に初心者でも簡単に使いこなせる設計になっているのも大きな特徴。そのため「メイクに触れる機会の少なかった男性でも、手軽に使うことができるのがメンズメイクでも人気な理由なのではないか」と若井さんは推測している。
現在KATEは施策等で男性のモデルを起用することもあるが基本的にメンズメイクに特化した商品展開などは行ってはいない。それはKATEが性別や年齢に関わらず「変身したい」「自分らしくなりたい」という思いを製品に反映しているからだ。
パッケージデザインが、黒を基調としたシックなデザインに統一されていることも、だれもが手に取りやすい理由のひとつだろう。
「メンズメイクという言葉が使われなくなった時、はじめて性別や年齢の境界を越えた証明になるのではと思います。メイク欲や変身欲は男女どちらもある欲望です。そのため『変わりたい!』と思う人はとても多いと思います。そんな人たちを応援するのがブランドの役目だと私たちは考えています」
"NO MORE RULES."を掲げるKATEの目指すもの
KATEが掲げる「NO MORE RULES.」には「自分・自由・個性を解放し、ルールに縛られず、自分の個性を表現しよう」という意味が込められている。KATEが大切にしているのは「ルールや既成概念に縛られず、自由にメイクを楽しんでほしい」ということ。そのため男女や性別にこだわらないブランドの展開や商品の開発がKATEの強みだ。
「ここ近年は特に、人々の生き方や美の価値観が変わってきていると思います。ですが同調圧力や固定概念、自己暗示などから抜け出すことができず、まだまだ最初の一歩を踏み出せない人も多いのではないでしょうか。そんな人々とのためにさまざまな面で境界を意識することのない、誰もがメイクを楽しめる商品を作りたいと思っています」
KATEはAIによる顔の印象分析をもとにユーザーに合わせた4色のアイシャドウを提案する自販機型什器「KATE iCON BOX」を稼働させ、女性だけでなく男性やカップルなど、幅広い層のユーザー自身の顔の変化を楽しむ機会を作った。
また2022年7月には「The BB Borderless Beauty.」をコンセプトにしたBBクリーム「ザBB」を発売。名前の通り性別や年齢などに関係なく、肌質で選べるベースメイクを発売するなど、ブランド全力で「NO MORE RULES.」を進めている。
「自分を縛るルールを壊し、メイクにもっと自由を」の実現を目指すのがKATEの展望だ。
2020年以降はコロナ禍によってメイクをする人が激減し、コスメ業界は未曾有の大ピンチに陥った。KATEも同じく大打撃を受けたが、これを機にブランドの原点に立ち返り、コロナ禍でもメイクを楽しめる喜びを提供することに。その結果、コロナ禍にもかかわらず急成長している。
「リップモンスター」まさに怪物級ヒットの秘密は「SNS戦略」
コロナ禍でメイク用品が売れなくなってしまったなか、特に売上が激減したのが「口紅」だった。マスクをつけることによって口紅をつける必要性がなくなったことや、マスクに口紅が付くのがいやという理由で塗る人が減少したのが理由だ。
にもかかわらずKATEはメイク市場で業績を伸ばしている。その栄光を支えた商品のひとつが2021年5月に発売された口紅「リップモンスター」だった。
「『マスクをしていてもメイクを楽しみたい』といったユーザーからの声がたくさんありました。このような時代だからこそKATEらしい意思のある提案が人の心を動かすのではと思い、KATE史上最も落ちにくい口紅を作ろうと思いました」
開発途中は社内から「コロナ禍で口紅を発売しても売れないのでは?」という声も出たが、それを納得させる商品を開発することができ、結果は累計販売本数が発売から約1年半で550万本突破する大ヒット。KATE史上初の口紅シェアNo.1を獲得した。
このリップモンスターが人気となった理由には怪物級の落ちにくさや見た目の可愛さだけでなく、徹底したSNS戦略があった。
KATEは口紅の知名度を上げるべく、TikTokで有名インフルエンサーを起用し、エフェクト機能を楽しみながら真似できる「体感参加型動画」を公開。また、発売前には公式YouTube「KATE CHANNEL」で開発秘話を公開するなど、SNSをフル活用した宣伝に力を注いだ。
結果、ステイホームやソーシャルディスタンスを確保しながら使用できる楽しみ方を発信することで、SNSユーザーの多い若者を中心に商品を広めることに成功する。
こうした、オンライン上でメイクを発信するという楽しみ方を提案し「コロナ禍だから化粧品が売れない」という既成概念を打ち砕いた商品戦略は、「NO MORE RULES.」を掲げるKATEだからこそ実現できたのかもしれない。
若井さんは「これからも人々のメイク欲を刺激し、揺さぶるような商品を作っていき、どんな人でも一歩踏み出せるようなブランドを目指していきたい」と話す。
時代がさらに多様性に溢れ、またSNSがインフラとしてこれまで以上に普及していくなか、KATEはどのような商品を発売していくのだろうか。今後のブランド展開がますます楽しみだ。
取材・文/福井求
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