「脳波が死んでます」から2年。体調不良による休養を経て、かが屋が「あと2、3年が勝負」「デッドラインは近い」と話す理由
集英社オンライン / 2023年2月4日 12時1分
結成年数による出場制限のないキングオブコントだが、かが屋の加賀は「現役バリバリの世代から外れると、やっぱり、ウケにくくなる」「勝つ可能性がある期間は限られていると思う」と話す。結成9年目を迎えるかが屋の賞レースへの思いを聞いた。
過去のネタを掘り起こさない理由
——かが屋は出場しなかった2000年を除くと、2018年から2022年まですべて準決勝以上まで勝ち進んでいます。準決勝では2本ずつネタを披露しなければならないわけですが、いずれもネタはかぶっていないのですか?
加賀 かぶってないです。
——やっぱりそうなんですね。そんな気がしました。かが屋はとにかくネタメーカーという印象が強かったもので。でも、ほとんどの組はそれだけ頻繁に準決勝以上までくると、1、2年空けて、過去のネタを再度かけたりしていますよね。
加賀 僕はそれは怖くてできないんですよ。一度でも見られていたら……って思っちゃう。それだけでウケ量が減ってしまう気がして。
——ビスケットブラザーズの『野犬』のように、何年かかけてブラッシュアップするという方法もあるんじゃないですか。
加賀 それよりも、まったく別の、もっとおもしろいネタを考えたくなっちゃうんですよね。磨いておもしろくするよりも、そっちの方が早い気がして。ただ、一度できたネタに関しては、ギリギリまで調整はしますけどね。
——そこは絶対妥協しないという雰囲気がありますよね。
加賀 当然のことなんですよ。僕は飛行機の整備士だと思っているので。自分たちの命がかかっている。これでご飯を食べているわけですから。無事離陸できても、飛んでいる最中がいちばん緊張している。着陸した時に、やっと「ああ、よかった」と。
賀屋 僕はその乗り物に乗せてもらっているだけなんですけど……。
加賀の体調不良と休養の真相
——加賀さんは2020年に体調を崩されて、半年近く仕事を休んでいましたよね。やはり、コントによって生かされてもいるけど、コントによって苦悩を背負いこまざるを得ないみたいなところもあるのですか。
加賀 そんなつもりはなかったんですけどね。
賀屋 コントがつらくてという感じではない。
加賀 まったくないことはないけど。そら、大変な日もあるよ。
賀屋 僕が言うことではなかったです。すいません。
——加賀さんはコントの話をし出すとめちゃくちゃ細かいので、これは苦悩しそうだな、みたいな印象があるんですよね。
加賀 神経質なところは確かにありますけど。でも、ストレスといえば、賀屋さんかな。たとえば、「おいしい」はいいけど「おいしかった」って言ったらダメですよ、みたいな話をしたとするでしょ。なぜか、絶対「おいしかった」って言っちゃう。この人に「おいしかった」と言わせないためにはどうすればいいのか……って頭の中で、ぷよぷよゲームが始まるんです。そうやってると頭がこんがらがってくる。
賀屋 そのストレスはあるかもしれないね。
——体調を崩しているときは、戻ってこられないかもみたいな不安もあったのですか。
加賀 どこまで言っていいのかな。当時、不眠症に陥って。仕事も忙しくなり始めていたので、これはちょっとしんどいなと思って、病院に行ったんです。そうしたら、脳波を調べられて、「脳波が死んでます」って言われたんです。
——脳波が死ぬって、あるんですか?
加賀 嘘つけ! って思いましたけど。それで、お医者さんに「無理しないでください」って言われて。そのことを事務所に報告したら、とにかく休んだ方がいいみたいになっちゃったんです。最初は1ヶ月ぐらいで復帰できると思っていたんですけど、なんだかんだ4ヶ月ぐらい休ませてもらって。
――不眠症は回復したわけですか。
加賀 まあまあよくなったぐらいですかね。4ヶ月後、念のため、違う病院に行ったんです。そうしたら、「そもそも働いてない部分はあるけど、脳波は死んでないですよ」「もともと寝られない性質なんです」って言われて。その後、今度は、整体師に骨を見てもらったんです。そうしたら、すごい歪んでいたらしくて。でも、その先生にみてもらったら、かなりよくなりましたね。
松本さんに98点を付けてもらえるような未来は思い浮かばない
——待っている方は、さぞかし心配だったのでは。
賀屋 その頃、相当疲労はたまっていたはずなので。
加賀 単純に、しんどいはしんどかった。体もバキバキで。毎日、全身筋肉痛みたいな。なのでよかったと言えばよかったですけど、不思議な4ヶ月間でしたね。
——今後のことも伺いたいのですが、M-1のように結成年数に制限があるのも酷ですが、キングオブコントのようにいつまでも出られるというのも酷ですよね。
加賀 でも、勝つ可能性がある期間は限られていると思いますよ。東京03さんとか、バナナマンさんとか、例外的な存在はいますけど、お笑い芸人もちゃんと歳をとっていくので。現役バリバリの世代から外れると、やっぱり、ウケにくくなるんです。だから、僕らもあと2、3年したら、決勝に残るのは相当大変になってくると思います。もう、デッドラインはそこまで来てるぞという気持ちではいますね。
——まだまだ、世間にかが屋のおもしろさが伝わっていない気がしませんか。
加賀 僕は、まったく思わないです。僕はそもそも「自分のおもしろさ」みたいなのを信じていないので。がんばって何とかおもしろいと思ってもらっているという感覚なので。ビスブラさんみたいに、松本さんに98点を付けてもらえるような未来は思い浮かばない。まだ、賀屋の方が、その才能はあると思いますね。僕はどちらかというと裏方気質。なので裏方として、賀屋がバカウケするところは見てみたいですね。
賀屋 僕はその自信があったり、なかったりする。
加賀 なかったりするなよ。
——いつか絶対、優勝してやるぞ、という感じではない?
賀屋 傑作は作りたいですね。あと、「キングオブコントの会」に出たい。僕、キングオブコントで優勝するよりも、キングオブコントのファイナリストって書かれているTシャツが欲しかったんですよ。あれが手に入ったので正直、ちょっと満足してしまったところがあって。
「キングオブコントの会」に出ると、赤ジャージがもらえるじゃないですか。あのアイテムがどうしても欲しいんです。アイテムフェチなんで。でも、「キングオブコントの会」に出るためには、やっぱり優勝しなきゃいけないんですよね。
賀屋 そのためには、まずは(キングオブコント覇者の)赤いブレザーを着ないといけない。
加賀 だったら、“なかったり”するなよ。
取材・文/中村計 撮影/村上庄吾
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