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「ゲームは1日1時間」? スプラトゥーン3に散りばめられた、プレイ時間抑制の工夫とは

集英社オンライン / 2023年1月30日 16時1分

790万本以上を売上げ大人気のゲーム『スプラトゥーン3』だが、前作『スプラトゥーン2』から様々な仕様変更がされている。なぜそのような変更が加えられたのか? スプラトゥーンのあれこれを独自の視点で掘り下げる「SPLABO!」運営のHuppleが考察する。

命懸けの仕事にも関わらず、私はタダ働きをしている。
職場の名前は「クマサン商会」。仕事内容は、シャケ退治だ。

2022年9月9日、Nintendoから発売されたゲーム「スプラトゥーン3」。イカやタコの可愛いキャラクターを操作して、インクを塗り合うアツいバトルを楽しめる、4vs4のアクションシューティングゲームだ。
バトルだけではなく、1人プレイ専用のストーリーモード「ヒーローモード」や、協力プレイのアルバイトモード「サーモンラン」、カードゲーム「ナワバトラー」、ファッション要素、コレクション要素なども充実しており、一言で表すことができないほど奥が深く楽しいゲームとなっている。プレイヤーはバトルに限らず、それぞれの価値観に基づいた遊び方で、スプラトゥーンの世界を楽しんでいる。


ちなみに、私はアルバイターだ。「サーモンラン」で日々シャケ退治に勤しんでいる。

これまでに790万本以上を売上げ、大人気のスプラトゥーン3だが、疑問を抱かずにはいられない仕様も存在する。

例えば「おカネを稼げるアルバイト」であるはずのサーモンランでは、1時間も遊ぶと、おカネが獲得できなくなってしまう。再びおカネを稼げるようになるには2日ほど待たねばならない。
1人で挑む4vs4のバトルモード「バンカラマッチ(チャレンジ)」や「Xマッチ」も、3敗するまでに何勝できるか? という形式で、すぐに結果がわからないようになっている。
他にも「ネームプレート」というゲーム内の名札のようなものに付けることができる二つ名。これもゲームをクリアして入手できるわけではなく、ゲーム内のお金を消費することで引けるくじ(いわゆるガチャ)からの排出が主な入手方法だ。実際、私もサーモンランをやり込んでいるが、関連する二つ名を持っていない。

このように、やり込むとわずかに不自由を感じる要素が、各所に散りばめられている。あくまで1ユーザーの見解として、これがなぜなのか?を紐解いていきたいと思う。

なお、本稿は私が2022年10月に投稿した動画の内容を抜粋・再構成した上で、2022年12月から始まったシーズン2に関する加筆を行ったものである。
動画ではスプラトゥーン3のプレイヤー向けにより踏み込んだ解説をしている。

やめ時の提供

まず結論を書くと、スプラトゥーン3の不可解な仕様たちは「ゲームは1日1時間」という考えに基づき、ゲームの「やめ時」を提供するためのものである、というのが私の考えだ。
もちろん全てのモードではないが、スプラトゥーン3を遊んでいると「まあ……ここまで遊ぶか」と思える区切りが、約1時間後にやってくるようになっている。

例えば1人で遊ぶバトルモード「バンカラマッチ(チャレンジ)」や「Xマッチ」は、3敗あるいは5勝(Xマッチは3勝)するまでが1セットになっている。勝率が約5割だとすると、3敗するまでの1セットがちょうど6戦前後。1回のバトルは約5分なので、1セットを終わらすために、40分ほどかかることになる。
これに、ウォーミングアップや装備確認、くじ引きなどの息抜き要素を合わせると、1日1セット約1時間だ。

サーモンランでも、成否を問わず約5回のアルバイトをこなすと、クリア後にオカシラシャケというボスが登場する。討伐できなかったとしても、再び5回のアルバイトをこなさないといけないため、連戦はできない。
そして、オカシラシャケが登場する頃には、1セット分のお金を獲得できている事も多い。オカシラシャケまで遊び、稼いだお金でガチャや買い物をすれば、約1時間だ。

くじ引きの金額も、1日1回以上回そうとすると、金額が6倍に跳ね上がる。ガチャを1日に何度も回そうとすると一瞬でお金が無くなるが、毎日1回ずつであれば、お金が無くなることはない金額設定になっている。

レートや報酬を求めて没入するリスクが低く、フレンドとも遊ぶ事ができるレギュラーマッチやバンカラマッチ(オープン)、明確なクリアがあるストーリーモードなどにこのような仕組みはない。
プレイヤーが没入し過ぎてしまう危険性があるモードにのみ、区切りが設定されているのだ。

やめられるデザイン

このように、スプラトゥーン3は「やめられる」ように作られているというのが、私の考えだ。

私は先程あげた仕様を、1時間を越えて遊ぼうとすると少し面倒に感じる仕様だと捉えた。しかしその匙加減は絶妙で「制限」ではなく「その日の目標」と感じるバランスで実装されている。
例えば私は普段オカシラシャケ1回を目安にサーモンランで遊ぶが、プレイ時間を抑制されていると感じたことがない。「オカシラシャケでやめなきゃ」ではなく「オカシラシャケまで遊ぼう」と考えてゲームを起動している。結果的に、1時間も経たないうちに、程よい満足感でゲームを終了することができている。

これは逆に言えば、1日1時間以上遊ぶと急に得られるものが少なくなる仕様とも言える。時給計算をしてみると、働くほど時給が下がっていくのだ。
しかし、1日1時間ほど遊ぶ人にとって、長時間プレイヤーと絶望的な差がつくことがないため、長時間遊ばなくてはいけないと焦る要素も少なくなっている。いわば「たくさん遊んだ人」よりも「コツコツ遊んだ人」の方が、得られるものが多い仕様だ。

対照的なのは、前作スプラトゥーン2。このような明確な区切りが設定されておらず、ゲームの面白さもあいまって、一度遊び始めると自分でやめ時を見つけることが難しかった。
5分ほどで終わるコンパクトなゲームの繰り返しに、勝利の喜びや敗北の悔しさ、レートの上下が上乗せされる。この状態でゲームをやめるには、相当の自制心が必要だった。
実際私もスプラトゥーン3が発売されるまではこの点を非常に問題視していたが、見事な解決を実現した本作は、本当に素晴らしいと考えている。

やりこみ要素と自己顕示欲

スプラトゥーン3にはコツコツプレイしているだけでは到底獲得できないものもある。一部のバッジがそうだ。
バッジとは、ネームプレートに3つまでつけられるもので、ゲーム内で様々な条件をクリアすることで入手できる。

「一定金額以上の買い物をする」のように、どのような実力でもコツコツと遊ぶことで入手できるバッジもあれば、高度な技術や知識が要求されるものもある。
例えばサーモンランの最難関バッジである通称「カンストバッジ」は、高難易度のバイトを最短でも7時間近くクリアし続けないと獲得できない、アルバイター憧れのバッジだ。

40時間ごとにリセットされるので、1日1時間という遊び方では到底到達できない。スプラトゥーン3はやり込み要素が極端に遠く、中間地点がほとんど無いのだ。

このシステムのキモは、ゲーム内でバッジを全て他者に見せる機能がなく、3つまでしかつけられない点にあると考える。
どれだけ頑張って入手したバッジであっても全てを同時につけることができないため、集める動機がゲーム内での自己顕示欲に繋がりにくくなっているのだ。
たくさんつけられるようにしてしまうと、全てを入手難易度の高いバッジで埋めたくなる人も出てくるだろう。その上、色々な種類のバッジをつけられると、各々の個性も弱くなってしまう。

一方、ベースとなるプレートや二つ名などカスタマイズ性の高い部分は、主な入手方法がくじ引きだ。好みのデザインに仕上げるために特定のゲームモードを長時間プレイしなければいけない、という事態が発生しにくくなっており、実力に関わらず、好きなネームプレートにカスタマイズすることができるようになっている。

これは非常によくできた仕組みだと感じる。

疑問点も

以上のように、スプラトゥーン3の少し不自由な要素は、前作までの課題を解決するための仕組みだと考えられる。しかし2022年の12月1日から新しいシーズンに変わり、一つ引っかかる点が出てきた。それが「期間限定品」の多さだ。

例えば、くじ引きには金銀銅の当たりがあるのだが、その中身が12月1日で変わったのだ。他にも、イベント限定のアイテムやランキング上位の報酬など、時期を逃すと頑張っても入手できない可能性があるアイテムがいくつか存在する。この要素は、これまでの説明と矛盾している。

というのも「種類が増える」であれば、コツコツ遊んでいれば必ず入手でき、毎日無理せず遊ぶ動機にもなる。しかし「種類が変わる」だと、欲しい人は無理をしてもらえる期間内に長時間遊ぶ必要が出てきてしまうのだ。

もちろん、プレイ時間を抑制するだけでなく、長く楽しめる工夫も必要だということは理解できる。しかし先述した通り、スプラトゥーン3は1日1時間以上遊ぼうとすると得られるものが少なくなる。端的にいうと、くじ引きを回すためのおカネが稼ぎにくい。結果、期間限定品という要素は、本来のゲーム性を無視した遊び方をするユーザーを生み出す要因にもなった。

この期間限定要素に、私が理解しきれない別の意図があるのか。それとも、根本的に「プレイ時間を抑制するための工夫」という解釈が間違っているのか。
今後アップデートで追加される要素なども踏まえて、注目していきたい。

何はともあれ、やり込むと不自由に感じる要素は、1日1時間だけプレイすると考えてみると、納得できるものがほとんどだ。
一歩間違えれば飽きやすくもなってしまうこれらの仕様は、逆に言えば、スプラトゥーンというゲームがとても面白いものだからこそできる挑戦だと感じた。

これからも、自分の生活に支障が出ない範囲で、シャケ退治に勤しみたいと思う。

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