「創価学会を脱会したことを10年間言えなかった」長井秀和が語る「宗教2世問題」と、被害者たちが宗教から逃れられない理由
集英社オンライン / 2023年2月3日 12時1分
創価学会の宗教2世であり、現在、東京・西東京市で地方議員として政治活動を行っている長井秀和氏。「両親が4000万円以上、寄付をしていた」「自身も強引な勧誘活動を行っていた」と告白した前編に続き、後編では「10年間、脱会を公表できなかった理由」や「創価学会の現状」「地方議員としての宗教二世救済」などを、笑下村塾のたかまつななが聞く。
脱会したことを周囲に10年間言えなかった
ーー信仰をやめる方は、活動を控えるだけの方が多いとお伺いしたんですけど、どうして脱会までされたんですか?
脱会については、実は最近明かしたんです。10年前に脱会しているんですけど、脱会したということを公表していなくて。
脱会した理由の一つは、政治活動をしていく上で、非常に誤解されやすいんです。無所属でやっているのに、「長井さんは創価の学校を出ているから、公明党から出るんですよね」とか、「創価学会の人からバックアップしてもらえるんですよね」みたいな。
違うんだと。私は、何らかの組織とかのお金を使って選挙をやるような、そういう政治のやり方に一石を投じたいという思いもあります。だから、しっかり脱会して、創価学会信者ではないんだということを公に示したかったんです。
ーー脱会を10年言わなかったのはなぜですか?
親兄弟たちに対して非常にいろいろハレーションが起きるので。今も起きていますけど。創価学会では、学会員に何か間違いがあったとか、信仰を途中でやめてしまったということは、地獄に落ちるかのような、宗教的には非常に悪いことなんですよ。
だからその親とか兄弟も、宗教的に大きな罰をもらっちゃうんです。そうすると私一人だけの問題でなくて、親兄弟も全部巻き込むことになっちゃうので、脱会は非常に難しいんです。だから皆さん、脱会はせずに活動を控える「非活」という道を選ぶんです。
現代における創価学会の役割
ーー改めて今、注目をあびるようになった宗教2世の問題点と、それをどうしたら解決できるかをお伺いしたいんですが、いかがでしょうか?
宗教2世の問題は、宗教によってもそれぞれ違うというところがあるんですが、特に大人になってからだと精神的な呪縛や家族とのギャップに悩まされる部分があります。私はどちらかというと精神的な呪縛はほとんどなかったんですけど、旧統一教会の方とかは、自己否定に苛まれながら生きてきた方がいらっしゃるんです。
自分が神のためだったり、仏のためだったり、そういうところで生きてこざるをえなかった人たちが、それがなくなった途端に「本当にそれでよかったのか」という虚脱感に襲われたりします。
だから行政が被害者救済法案を立ち上げるのであれば、宗教的な呪縛、家庭的な呪縛、精神的な呪縛、財政的な呪縛というもので苦しんできた人たちに対して、包括的な理解をした上で関わり合いをしていただきたいと思います。
ーーなかなかそこが行き届いていないですもんね。長井さんは創価学会に入ってよかったと思うところはありますか?
どうでしょうね。創価学会の現代的役割は、もうあまりないんじゃないかと考えています。創価学会は互助、助け合いネットワークの組織なので、平成の前半ぐらいまでは、そういう部分で都会に出てきて身寄りのない、友達がいない人たちにとって大きな互助組織になっていたんですけど。
ーー私もいろいろな政党を取材したときに、公明党の特徴というのは、まさに創価学会に支持されていることだと思いました。例えば自民党だったら大企業とか大きな声が通りやすい中で、公明党は、地域の一人ひとりの市民の声を地区の支部などが拾い上げやすいところがいいと思ったのですが。
かつてはそういう要素もあったと思います。ただ、私は今、西東京で1年以上政治活動をして、地域貢献活動もしているんですけど、公明党の方々が出てくるのは見たことがないんですよ。平成の前半ぐらいまでの活動量に比べたら今は少ない気はしますけどね。あくまで肌感覚の話ですが。
創価学会における「政治と宗教の関係」
ーー宗教と政治の関係についてはどう思われますか? 法律上は宗教団体が特定の政党を支持するのはいいとされていますが。
創価学会などの信者も言ってますけど、宗教団体が政治活動することは、何の問題もないというのが現行の政教一致、政教分離に関する考え方なんですよね。ただ、見落としちゃいけないのは、創価学会員は公明党員でもあるわけで、そのふたつはリーダーも顔ぶれも、情報の伝達方式も同じ部分が非常に多いわけです。
ーー完全に別ではないんですか?
別じゃないです。組織は一応、違います。ただ学会の会合の中では、選挙になったときに(創価学会の)地区部長とか支部長とかが、選挙中は(公明党の)地区部長、支部長として動いているわけですから。私から見れば、宗教団体が政治活動をしているということなんですよ。そういう意味で私は、政教分離に抵触すると見ているんです。
あとは、自分の政策にも入れているんですけど、選挙期間中の宗教団体による選挙活動は禁止にすべきだと思います。政治活動はいいと思うんですけど、選挙というのは完全に特定の方の集票とか投票を促すことになるので。そもそも創価学会に入ったときに、選挙活動をやるなんて言われていないですから。
実質的には投票の強要もある
――選挙では投票先とか、どれくらい強要されたりするんですか?
オフィシャルでは強要していないと言いますけれども、実際はしていますね。例えば、学会員だったら、選挙が近くなったら「公明党に入れましょう」と学会員の人たちが家に来たり、電話してきたりします。それで公明党じゃないところに入れるとなったときには、除名とか除籍される人もいらっしゃいますから。
宗教団体とか政治団体とか、旧統一教会もそうなんだけど、ホームページとかで書かれているオフィシャルのことがそのまま履行されていれば何の問題もないんですよ。
でも、裏で掲げているような活動が非常に反社会的だったり、非民主的だったり。また、商法としてもおかしいことをしているから問題になっているわけじゃないですか。そうしたことは創価学会に関しても正直あります。表向きの話と現場での話は圧倒的に違う。
――投票のお願いをするだけだったら違法性はないはずですが、そうではないと。
同調圧力もあるし、学会のコミュニティの中で、(公明党ではない)他の政党に投票したって言ったら、コミュニティにいられなくなりますよ。急に「あの人は女ばっかり作っていてね、お金を借りていてね」って周りに言いふらされる。面白いことに、急に悪者にされてしまうんですよ。これ本当に間違いないですから。
地方議員として宗教2世を救いたい
――周りに宗教2世で苦しんでいる方は多いですか?
いろいろな方々の話を聞くたびに胸が痛くなります。子どもに関しては現行制度だとまだまだ足りていなくて。例えば民法の立て付けでいわゆる“ジャイアン方式”があります。すなわち「お前のモノはおれのモノ。おれのモノはおれのモノ」じゃないですけど、要は「子どもの金は親の金、親の金は親の金」っていう設定です。
そうすると、子どもの生活や教育のためのお金を親が宗教団体に使っても何の問題もないんですよね。旧統一教会問題でも、子どもが食べるものがなかったとか、学校に行くための資金が使われてしまったという話があったじゃないですか。そこが問題だと思っています。
ーー長井さんは西東京市議として政治活動をしていますが、どうして今、政治家になろうと考えたんですか?
新型コロナウイルスの影響で事業をたたんだり、家庭が壊れたりする方がいっぱいいました。そういう中で、地方議員はそういう方々に手を差し伸べる、一番近いところにいる人のはずなんですよ。でも、地方議員って政党政治の弊害があって、例えば、新宿区だったら自民党何人、公明党何人とかで区割りしている。要は管轄、縄張りがあるんです。
でも市民にとっては、どこのエリアに何々先生がいるなんて関係ないでしょう。コロナ禍で今日明日のお金が必要で、お金がなかったら事業が停止しちゃうっていう人たちがたくさんいるんです。そんな状況で、議員の縄張りなんかどうでもいいんですよ。
だから私は無所属で、全てのエリアを網羅できるような議員を作らなきゃいけないという思いがありました。それで政治を志すことになったんですね。すごく地域的な部分で考えました。だから別に都政とか国政とかを目指していないです。
――今後は宗教2世の問題もなにかやろうとお考えですか?
思っています。国政では一応進んでいるんだけど、地方議会ではどうしても遅れているので。いわゆるカルト宗教の被害者の調査委員会が地方議会でも一応、議案の俎上に上がるんですけれども、ことごとく自民党、公明党に反対されて、調査委員会が発足していないんです。
あと、被害者救済委員会に関してもことごとく反対されている。反対しているのは、自民党、公明党ですから。だから地方議会では、西東京では、何としても与党勢と野党勢が拮抗するぐらいまでは持っていって、カルト宗教問題に対する調査委員会を早急に立ち上げていただきたい。
――最後に宗教2世で今苦しんでいる方へ、メッセージをいただけたらと思います。
本当に宗教2世の話になると胸が痛いんですけど、この問題で今までなかなか理解されなかった悩みというのはすごかったんじゃないかと思います。本当に親兄弟と縁を切らざるをえないような状況に追い込まれちゃうこともあるかとは思いますが、お互いに頼り合えるような、理解し合えるような、そういうネットワーク組織を行政と市民で一緒に立ち上げられたらいいなと思っています。
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