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「実行犯らの報酬は40%」「指示役の顔も名前も明かされない」…闇バイトに応募して“タタキ”をする素人の実態。ターゲットのリストは1件10円~数万円で取引されることも

集英社オンライン / 2023年1月30日 21時1分

一連の強盗事件で注目を集めているのが、「闇バイト」や「闇名簿」の存在。これらは“タタキ(強盗)”を実行する人物を集めるのに欠かせないものだが、一体どのように集められるのか。そして、なぜ特殊犯罪としてタタキが横行しているのか。暴力団関係者が語る。

闇バイトは受け子や出し子より“タタキ”の仕事が目立ってきた

関東各地や西日本で似たような手口による連続強盗事件が相次いで起き、同一グループによる犯行の可能性が色濃くなってきた。次々と被疑者が逮捕され、その背景が明らかになるにつれて浮かび上がってきたのは、SNSによる「闇バイト」や特殊な「名簿」の存在だ。

「闇バイトも“タタキ”専用の名簿も以前からあった。特殊詐欺がオレオレ詐欺と呼ばれて社会問題になった頃から、やり方は変わっていない」と、暴力団関係者Y氏は話す。


「高額なバイト代ほしさに集まってくるヤツは昔からいて、そこは何も変わらない。ただ、出し子は中学生でもできるからあぶれている状況で、それよりも今はタタキの仕事の需要が目立ってきた」

互いに面識のない実行犯たち

1月19日、東京都狛江市の住宅で、大塩衣与さんが遺体で発見された。この1週間前にあたる1月12日、大網白里市のリサイクル店で起きた強盗傷害事件で逮捕された自衛官・中桐海知容疑者(23)のスマホから、大塩さん宅の襲撃を示唆する情報が残されており、千葉県警から警視庁に情報提供がおこなわれたが、一歩遅かった。

狛江という地名と時間に関するSNS上のやり取りは、2022年12月5日、中野区の住宅で強盗傷害事件を起こし、警視庁に逮捕された永田陸人容疑者(21)のスマホからも見つかっていた。
この事件は7人組による犯行とみられ、そのうち5人が逮捕されている。その中には昨年10月に稲城市でおきた強盗傷害事件ですでに逮捕されていた被疑者も含まれていた。
稲城市の事件では強盗致傷で7人が逮捕され、そのうち4人が山口県の岩国市や防府市で起きた事件にかかわっていた。
狛江市の事件でも現場には複数の足跡や指紋が発見されたと報じられており、複数の人物が犯行をおこなった可能性が高い。

狛江強盗殺人事件の事件現場

被疑者らの多くは、SNSを通じて闇バイトに応募していた。中野区の事件で逮捕された被疑者の1人は警察の調べに「闇バイトに応募した。強盗をするために集まったメンバーで、互いに面識はなかった」と述べていると、メディアが報じている。

闇バイトについてY氏は「構図は振り込め詐欺と変わらない。特殊詐欺の掛け子や受け子、出し子の募集だったものが“タタキ”になっただけだ。特殊詐欺の組織は警察の厳しい取締りで、方法や拠点を変えていかなければならない。その都度、形式を変えてやっていくのは面倒くさいし、人手も手間もかかるから、直接、金を盗りに行くようになってきた」と解説する。

掛け子とは詐欺のターゲットになる相手に電話を掛ける役、受け子は金をだまし取る相手から現金やキャッシュカードを受け取る役、そして、そのキャッシュカードからATMなどで現金を引き出す役が出し子だ。出し子や受け子が取ってきた金を集金するのは、組織の人間だ。

闇バイトの実行犯は素人。簡単に“チンコロ”する

特殊詐欺とは具体的に、振り込め詐欺や還付金詐欺や融資保証金詐欺、なりすまし詐欺、未公開株や外貨、暗号通貨などの投資詐欺、不動産投資詐欺などを指すが、組織によって、得意とする種類やシステムが異なるという。
SNSなどで実行犯となるメンバーを集め、役割ごとに仕事をさせるが、集まってきたメンバーには全員が偽名を名乗るので、彼らは上にどんな者がいるのかを知ることはできない。

「応募してきたヤツには“タタキ”という強盗や窃盗をおこなう仕事だと説明する。犯行の日時が決まればメンバーに知らせ、実行犯同士は現場で初めて顔を合わせることになる。寄せ集めのメンバーだからチームワークはない。
犯行の手口も素人だ。足跡も指紋もべたべた残していくし、防犯カメラに顔をさらすヤツもいる。それだけ逮捕される確率も高くなるし、捕まれば簡単に“チンコロ”する」(Y氏)

※写真はイメージです

チンコロとは告げ口を指す隠語で、警察などに簡単に犯行を白状することである。

「チンコロしても互いに面識がなければ話しようがないんでね。自分が知っている限りでは、犯行現場の下調べは闇バイトで集めたやつらにはやらせない。メンバーへの指示役は顔を見せることはなく、犯行の手順などは他人名義のスマホやプリペイドのスマホをメンバーに渡して、そこへ指示を送るだけ」(Y氏)

中野区の事件も稲城市の事件も、「ルフィ」と名乗る人物(渡辺優樹容疑者・38)とその一味が指示役として関わっていた疑いがもたれている。「ルフィ」の指示はフィリピンから発信されているが、Y氏によると、特殊詐欺で検挙された組織は以前はフィリピンや韓国が主流だったが、昨今はタイを拠点としていることが多いという。

逆恨みで強盗のターゲットにされるケースも…

「闇バイトに暴力団が関係しているのは確か。自分のところにもオレオレからタタキまで、人集めや場所など色々な話が流れてくる。ただ、特殊詐欺とルートは一緒だが、ヤクザが直接出ていってどうこうすることはない。実際にやっているのは半グレのようなヤツらが多い」

そう話すのはある暴力団幹部T氏だ。

「半グレの資金源は振り込め詐欺が主。金と力のある者が詐欺グループのオーナーになる。組織同士には派閥や上下関係があり、上納システムもできている」

半グレとは別にヤクザ業界では特殊詐欺をシノギとする組織もあり、「そこで凄腕の掛け子は○○組の人間という評判が立つ。稼げるやつがいると、組織はそいつを海外に行かせる。募集した掛け子も連れていき向こうから電話をかけさせ、管理させる。マニュアルがあれば掛け子を使うのも難しくない」(T氏)

T氏のところにも「○○市の××に1億あるんで、人集まりませんか」という話がくることがあるという。募集しているのは、もちろんタタキの仕事だ。犯行で盗んだ金品は役割に応じて分配される。計画して指示を出す組織が40%、仲介者が20%、残りが実行犯などの報酬になるという。

千葉県のリサイクルショップを襲う実行犯たち。取り分は一体いくらだったのか

「実行しても金が取れないと困るから、ターゲットに関する精度の高い情報が必要になる。情報は内容によって値段が違い、1件数万円という情報もあれば、名簿屋から簡単に買える名簿もある」(T氏)

特殊詐欺のターゲットなら“詐欺にあったことのある人リスト”で探す。リストは内容によって1件10円から50円程度、値段が安いとそれだけ内容も薄くなる。不動産投資詐欺に使う富裕層向の名簿リストや資産家リストなどもあるという。
だがT氏によると、タタキの人集めで危うい情報も流れてくると話す。

「逆恨み系だ。あそこの家にはいくらあるとか、情報としては確かだが、どこから出た情報なのか、出所がバレたらそれこそヤバい」(T氏)

昨年12月から全国で30件以上起きている一連の強盗事件の中には、暴力団関係者と関わりが深いとされる人物や、闇カジノの経営に関与していたと思われる人物宅の襲撃もあったと、1月24日のデイリー新潮が報じている。
もしかするとT氏の言うように、金銭トラブルや組織同士の対立などによる逆恨みにより、情報を流された可能性があるのかもしれない。


取材・文/島田拓
集英社オンライン編集部ニュース班

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