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「中国人は信用できない」…暴力団員が語る“タタキ”と“闇バイト”の実状。かつては殺人の実行犯まで請け負っていた中国人に代わって、日本人が重用されるようになった理由

集英社オンライン / 2023年1月31日 18時1分

連続強盗事件によってスポットが当たっている「闇バイト」。しかし、これらグレーな仕事は今に始まったことではない。かつては中国人も大いに関与していた闇バイトや実行犯斡旋の歴史を、暴力団関係者らの証言で紐といていく。

かつては強固だった闇バイトと中国人の関係

関東各地や西日本で相次ぐ同様の手口による強盗事件や窃盗事件では、すでに8都道府県、14の事件で全国各地に住む10代~30代の30人以上の被疑者が逮捕されている。そのほとんどはSNSの「闇バイト」の”求人”を通じて応募し、犯罪者となってしまった。

※画像はイメージです

高額な報酬を提示して犯罪の実行役を募る闇バイトだが、暴力団や半グレとの関係はどのようなものなのか。



「闇バイトの募集は昔からあったが、SNSがなかった頃は人づてに集めていた。ヤバい仕事には一時期、金に困っている中国人をよく手配した。ヤツらは安く雇えて集めやすかった」

そう話すのは暴力団関係者Y氏だ。連続強盗事件で“タタキ”(強盗)の募集が表沙汰になり、世間に衝撃を与えているが、昔は殺人の実行犯までをも探したというのだ。

「信用できない」暴力団が語る中国人を使うリスク

「ひと昔前になるが、暴力団でも自分たちの手を汚すことはせず、情報屋のような中国人を呼んで『人を殺せるやつを探してくれ』と頼んでいた」(Y氏)

依頼された中国人は、数日後には食うに困っているヤツを連れてきた。だいたいが不法滞在か密入国してきたような者だったという。
中国人コミュニティの結束やつながりは、日本人にはわからないほど特殊で密だといわれていた。密入国者などの情報も仲間内では共有されていたのだろうが、その情報が中国人ネットワークの外部に漏れることはほとんどなかった。

犯行に使う拳銃は暴力団側が用意する。狙うターゲットを教え、場所を指定し拳銃を渡せば、雇われた中国人は金欲しさに実行する。成功すれば数十万円程度の報酬と飛行機のチケットを渡し、成田空港で見送ればそれで終わりだ。

「実行犯はすぐに国に帰す。狙った相手や組織に、自分らがやらせたとわからせればいい」と考えていた暴力団だが、Y氏いわく、逃走中に警察に捕まったり、帰国せずに捕まった中国人は、いとも簡単に暴力団の関与を警察にしゃべってしまうためリスクは高かったという。

「金で人を殺すような中国人は口が軽い。口止め料を支払ったとしても、捕まれば自分の罪をなんとか軽くしようと何でもしゃべる。しゃべられたら自分らが捕まるから、暴力団は中国人を使わなくなった」

タタキのような仕事でも、中国人を使うリスクについてY氏は続ける。

「日本人でもギャンブルで金が回らなくなったヤツや闇金に借金があるような者は、金になればタタキもやる。日本人は暴力団がどれだけ怖いか知っているから、特殊詐欺の受け子や出し子で使っても、その金を持ち逃げすることはない。
中国人はタタキの仕事で窃盗をやらせると、盗んだ金品を平気でパクる。パクってもヤツらは正直に白状しない。そのまま国に逃げられたら取り返せないから信用できない」

金に困っていた中国人らを使ったのは、2000年代前後から勢力を伸ばした半グレ組織などの中国人犯罪グループだ。飲み込まれていったのは、主に学生ビザで来日した中国人留学生である。
当時の状況を暴力団幹部のX氏は振り返る。

「日本で知り合った仲間の紹介などで、中国人犯罪グループなどと知り合い、彼らのシノギを間近で見るうちに考え方が変わるんだ。
自分は中華料理店で汗水流して体はクタクタになって働いても稼ぎは数千円。日本語も勉強しなればならないし、学費や来日にかかった借金も返済しなければならない。だが一方は大金を持ち遊んでいる。
中国人には金が持っている者が強い、偉いという思想が根強い。どうすればそうなれるのかと聞けば、楽に稼げる仕事があると誘われ、誘惑に乗ってしまう」

闇バイトに手を染めてしまう中国人留学生たち

当時、闇バイトの募集は人づてか、無料で配布していた地域の広報誌やコミュニティのフリーペーパーが多かったようだ。
2001年4月には、今回の連続強盗のような事件が山形県で起きている。中国人の犯罪組織が訪日中国人向けの中国語のフリーペーパーにアルバイト募集の広告を出し、タタキの仕事を実行する人間を集めていたのである。

金ほしさに犯行に加わり実行犯となったのは中国人留学生らだった。強盗目的で鶴岡市の民家に押し入り、資産家の親子を殺傷したのである。東京在中の実行犯らを山形まで運んだのは、運転手として雇われた日本人の手配師だ。その家に金があるという情報は、地元のヤクザから上部組織を通して、中国人犯罪組織にもたらされていた。

「一度犯罪に手を染めた中国人は、色々な仕事に手を出す。中国人犯罪グループに加わる者もいれば、使われた者もいる。なんでもやるというやつらをまとめて仕事を斡旋する中国人もいた」(X氏)

中国人を使うのはリスクがあるという暴力団組織でも、闇バイトの仕事によっては、斡旋する中国人に人集めを頼んでいた。
そのひとつがパチンコ屋の打ち子だ。打ち子は雇い主の指示に従ってパチンコやパチスロを打つ仕事である。パチンコ屋が大儲けしていた当時、中国人犯罪グループがこの儲けを見逃すはずがない。

※画像はイメージです

「彼らは中国人を使ってパチンコ屋のロムを改ざんした。裏ロムとか、色々な方法を使って台の設定を変え、荒稼ぎしだしたんだ。困った店側が地元のヤクザに相談して中国人らを駆逐したが、完全には追い出さなかった。その代わり、パチンコ店を荒らさないよう協定を結んだ」(X氏)

結ばれた協定は暴力団と半グレ組織の間だけではなかったとX氏は明かす。

「パチンコ屋もグルさ。ずるいパチンコ屋は玉を8000しか飲み込まないように設定し、玉を勘定するのに2割ほど機械のメーターをずらす。すると1万円出るところが8000円分になる。そうすると、実際は1億円売り上げててもレジや機械上の売上は8000万ということになって、店としては税金逃れになる」

そんなことをしていれば玉が出ないという噂が立つが、そこで使うのが前述の中国人の闇バイトだ。

闇バイトにおける暴力団組織のリスク管理

「パチンコ屋は再び地元のヤクザに頼み、彼らは闇バイトを斡旋する中国人に、“出ているふりをして打ってくれるヤツを集めろ”と依頼する。集めた中国人には一日打って出した玉のうち、25%くらいを給料として渡す。ヤクザの取り分も25%。店も出した分の半分が戻れば、それで裏金ができる。三方、丸く治まるというわけだ」(X氏)

このように、中国人を使っても暴力団側がリスクを取らず損をしない仕組みが出来上がっていた。

インターネットが急速に普及して誰もが携帯電話を持つようになると、半グレ組織などはメールやショートメッセージを使って中国人を集めた。その中国人たちを現場に連れていき、ビルやマンションの複数の部屋に侵入させ、金目の物を根こそぎ持ち去るという事件が都市部を中心に発生した。

現在、闇バイトの実行犯は中国人から日本人へと変わっている(中野の強盗事件で逮捕された永田陸人容疑者)

「金持ちが住んでいるマンションはどこか、金が置いているのはどの部屋か、留守になるのはいつか、などの情報源は暴力団だが、直接犯行に関わることはしない。周辺に土地勘のある日本人を運転手や見張りに雇い犯行に及んでいた」と窃盗事件に詳しい元刑事は話す。

携帯電話がガラケーからスマホに変わり、SNSの利用が一般的になると、LINEやInstagramだけでなく、チャットツールのTelegramで闇バイトの募集が行われるようになった。

暴力団が今、闇バイトの人員として集めるのは日本人だ。それは掛け子や受け子でも、タタキの仕事でも変わらない。応募してきた時に身分証明書を取れば身元がわかるし、家族構成も握っておけば金を持ち逃げされることもない。

暴力団組織も自分らにリスクが及ぶことがないよう、日々、危機管理を行っているのだ。

取材・文/島田拓
集英社オンライン編集部ニュース班

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