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「喫茶店が多いのは地元の企業がケチだから!?」「豪華なモーニングは名古屋人ががめついから広まった!?」名古屋の喫茶文化を探る

集英社オンライン / 2023年2月5日 11時1分

名古屋の喫茶店はモーニングが豪華だったり、ピーナッツなどのおまけサービスがあったりとなかなかに特徴的だ。名古屋の喫茶文化について、名古屋ネタライター大竹敏之氏の『間違いだらけの名古屋めし』(KKベストセラーズ)より一部抜粋、再構成してお届けする。

喫茶店が多いのは名古屋の企業がケチだから!?

名古屋市内の喫茶店軒数は3111軒(2016年経済センサス)。同じ年の人口230万4794人をもとに1000人あたりの軒数を割り出すと1.35軒となり、高知県の1.48 軒に迫る数字になります(もっとも高知県も高知市でデータを出すともっと高くなりそうですが)。これは全国平均の2.5 倍にあたります。



なぜ名古屋にはこんなに喫茶店が多いのか?
よくいわれる理由が、土地代の安さ、そして企業の倹約志向です。
1960〜70年代の喫茶店の開業ラッシュの時代、名古屋は都市部としては比較的不動産相場が低く、脱サラ組をはじめとする個人でも店を出しやすかったといわれます。

そしてもうひとつの理由が名古屋企業の倹約精神。「社内に応接室なんてもってぁにゃぁで(もったいないから)すぐそばの喫茶店で商談しやエエがね」。中小企業の社長たちのそんなシブチン気質のため、オフィス街などで多くの喫茶店が必要とされ、また繁盛したというのです。

名古屋の喫茶店ではコーヒーチケットも普及していて、10枚綴りで一杯分お得になるなど、常連の必須アイテムとして重宝されています。これを自分で携帯するのではなく、店にあずけて壁に貼っておいてもらうのもユニークな習慣です。リピーターにとっておトクなこともさることながら、応接室代わりに利用する企業にとっても都合のよいツール。

これなら取引相手を前にして財布を出す必要がなくスマートです。名古屋でのコーヒーチケットの浸透は、喫茶店を商談に使う常連の企業が多かったからとも考えられます。

コーヒーチケットは割引のプリペイドカードで、しかも特売日を設けてさらにディスカウントして売りさばくケースもしばしば見られます。店側からすると単価を引き下げるものですが、ある老舗の店主いわく意外やそうならないからくりがあるのだとか。

「特売すると、近所の企業の社長さんとか常連さんがまとめ買いするんだよ。そういう人は知り合いに配ることが多く、もらった人は結局使わないことも多い。割引分は未使用分で大体相殺されるんだよ」

かつての喫茶店全盛期はこんな常連も少なくなかったよう。ずい分太っ腹に思えますが、中小企業の経営者にとっては飲み屋でおごるよりも安上がり。名古屋人は倹約家の割に見栄っ張りといわれます。

コーヒーチケットはそんな気質にぴったりマッチし、少ない出費でも気前のよさをアピールできる、費用対効果の高い交際ツールとしても活用されていたのです。

名古屋の喫茶店には欠かせないコーヒーチケット。店が預かるのが基本で、レジ周りに貼り付けられたりホルダーに差し込まれている。写真は「喫茶ニューポピー」(名古屋市西区)

モーニングは名古屋人ががめついから広まった!?

モーニングやおつまみなどのおまけサービスが浸透している理由についても、こんな風にいわれることが少なくありません。
「名古屋人はがめついもんで、おまけでもつけんと満足せんのだわ」

ようするに、お客にとってお得なおまけサービスは、お客が求めるために店側は渋々やらざるを得ないというのです。

しかし、これも元をただせば茶の湯の精神がある、と筆者は考えます茶の湯を源流とするいっぷくの文化が、多くの市民が喫茶店を必要とした理由でもありました。

同時に、店を開く店主の側にも茶の湯を背景とするおもてなしの心が息づいていました。
来てくれるお客さんに満足してもらいたい、そんな思いがあるからこそ、モーニングサービスやピーナッツなどのおまけサービスも、自然と広まったのではないでしょうか。決してお客さんが求めるからしかたなく……ではないのです。

名古屋の飲食店は何かと〝やりすぎ〞〝サービス過剰〞といわれますが、それもこれも全部、根っこに茶の湯の精神があるのです(! ?)。
そもそも「名古屋人がケチだから……」という風評にも誤解があります(倹約志向で実利主義、という面が強いことは否定しませんが……)。

名古屋の喫茶店支出額は毎年の調査で必ず全国平均を大きく上回り、全国トップクラスを誇っています。

喫茶店でコーヒーを飲む、という行為は〝いい意味での時間とお金の無駄遣い〞。喫茶店でのいっぷくをこよなく愛する名古屋人は、ケチどころかとても贅沢な時間とお金の使い方をしているといえるのではないでしょうか。

決しておまけサービスを強要するようなさもしい気持ちで喫茶店に足繁く通っているわけではないのです。

『間違いだらけの名古屋めし』(KKベストセラーズ)

大竹敏之

2023年1月24日

1,870円

単行本 : ‎ 312ページ

ISBN:

978-4584139875

ご当地グルメの代表格として今や全国にも知られる「名古屋めし」。
味噌煮込みうどん、味噌カツ、ひつまぶし、手羽先など、これらを食べることを目的に名古屋を訪れる観光客も多く、人気店には長蛇の列が。今や名古屋きっての観光資源にもなっている。
しかし、名古屋めしにまつわる評判や定説は誤解や間違いだらけ。いわく・・・
名古屋めしは何でもかんでも味噌をかける?
名古屋めしはB級グルメばかり?
名古屋めしはどれもこれも味が濃い?
名古屋めしはパクリだらけ?
名古屋めしに関する様々な風評の数々・・・これらは果たして真実なのか?
名古屋めし取材30年の実績を誇る現地ライターが徹底取材。間違いだらけの名古屋めしに関する誤解をすべて解いていきます!
真説・名古屋めし論!

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