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採集総数2万種以上! ガチで虫を採り続ける東大院生イケメン昆虫ハンター。「学歴は自分が好きなことをやる上で便利なもの」

集英社オンライン / 2023年2月12日 10時1分

取材中、誰もが目にすると「ヤバい!」と恐怖を覚える“最古の有翅昆虫”(ゴキブリ)が、道の真ん中で寒さに固まっているのを発見し、自然に捕まえた牧田さん。「あ、クロゴキブリ!」と嬉しそうに教えてくれたその時、“この人は本物だ”と直感。虫を追い続けて北海道大学から東大大学院まで進んでしまった牧田さんの虫に対する思い、研究や勉強、今後について聞いてみた。

きっかけは1匹のクワガタ。
中1で完全に昆虫熱にスイッチON!

――捕まえて飼育するところから始まった昆虫ハンターの道。子どもの頃から勉強よりも虫採りを優先!?

牧田(以下、同) 3〜4歳の頃に祖父が捕まえたオスのミヤマクワガタ。その予想できない行動に不思議だなと思う気持ちが湧いたことが昆虫を好きになったきっかけです。小学生の頃は授業を抜け出して、虫を探していることもよくありました。たまに親戚がクワガタやカブトムシを採りに連れて行ってくれたりして、この時期は捕まえて飼育することに夢中でした。



それで6年生から中学1年生の頃に、自分でも信じられないくらいスイッチが入ったんです。昆虫は発見されているだけでも100万種類以上います。それまではカブトムシのような大きな虫に目が行っていましたが、この頃から一般的には目に入らない小さな虫たちに注目し始めました。

そこから標本作りに没頭し、さらに“昆虫は夏以外にも活動している”と気づき、1年を通して虫を追うようにもなりました。

中高一貫校に通っていましたが、中高時代も虫採りばかりで。授業中は勉強をせずに標本作り。修学旅行や勉強合宿では、どうやって抜け出して虫を採りに行くかを考えていました。こんな状態なので母には怒られっぱなしです。

高校時代は赤点を取ると、“もっと勉強して”と言われていました。唯一、英語だけが得意でしたが、それは虫に関する本を英語で読みたかっただけで……。それだけで英語ができたということなんですけどね。

北海道で虫採りがしたいと北海道大学へ。
しかし、虫採りに熱中するあまり…

――高校時代には多くの赤点を取り、お母さんが学校に呼び出されることもあったという牧田さん。勉強をしなかった牧田さんが北海道大学に入学できたワケは?

赤点を取って怒られても勉強をしなかったのですが、高校1年の時に旅行で行った北海道で珍しいカミキリムシを捕まえたんです。それでもっと北海道で虫を採りたいと思い、北海道大学への進学を目標にしました。

入試問題を見て、高校2年の終わりくらいから本気を出せば何とかなるかもと思っていて。でも、3年になっても赤点を取る状態は一向に変わらず……。赤点でも追試で合格すればいいんだしと、都合よく考えるところもあって、授業中は虫ばかりを触っていました。とはいえ、受験勉強はしました。北海道で虫が採りたい一心で。時期的にはギリギリでしたが、苦手な科目を得意な英語や数学でカバーしてという感じでしたね。

先生からは、「受かる確率が低いからやめた方がいい」「別の学校にした方がいい」と言われましたが、自分では受験科目の点数の取り方を計算して、絶対に行けると思っていました。そしたら、試験当日、運よく数学と英語がよくできたんです。

生物に至ってはクワガタをはじめとする昆虫の問題が続出! 試験終了後、自己採点をしてこれは絶対受かったと。
この時は「本当に虫に生かされているな」と思いましたね。

――入学後、山で虫採りをしていたら履修登録もままならず留年。それなら好きなことをやろうと決めて。

高校時代に大学生になったら、勉強しなくてもいいと聞いてそれを鵜呑みにしていました。なので、きちんと履修登録もしない状態で、授業にも行かずに山で虫採りをしていたら留年が決まりました。ここで一旦ステイになったなと。

そこで考え方を変えて、フィリピンへ行って語学を学びながら虫採りをすることにしました。この時は高校で勉強した英語が生きました。受験英語は使えないと言いますが、そんなことはないですね。
そして、この留学でこれまで自分が日本という狭いところだけでしか生きてこなかったことを実感し、もっと様々な場所で、多様な文化に触れ合いたいと思うように。その後、ワーキングホリデーでニュージーランドへ行くと、そこで新しい出会いがあったのです。

卒業後は快適に虫採りができるように東大大学院を選択

――ニュージーランドで出会った昆虫学者から聞いた新種の話と、海外での虫採りおもしろさとは。

ニュージーランドに約7カ月滞在し、昆虫学者と出会い、そこで新種の昆虫について教えてもらいました。「新種の昆虫自体は世界にたくさんいるが、まだ人類が見つけていないものを新種というんだ」と。それを聞いて、誰も行ったことがない場所、やったことがない捕まえ方をすれば、新しい昆虫を発見する可能性が増えるとわかりました。

ニュージーランドにいる間に協同で研究を行い、新種の昆虫を見つけて論文を書きました。今でも海外へ虫採りに行く理由は、日本にいないものを求めてです。虫採りに限らず、物事ってわからないことが多い、始めたてが一番楽しいものです。

日本で10年以上虫採りをしていると新鮮さは減ってきます。しかし、海外では名前もわからなければ、何の仲間かすらもわからない虫ばかり。「これって何だろう?」の連続で、それが楽しいんです。

――東京大学大学院への進学はやはり虫採りのため。虫を追求する牧田さんとご両親の関係はいかに?

北海道大学を卒業し、今は東京大学大学院の博士課程に在籍中です。北海道はいいところでしたが、虫採りで世界各地へ行くにはアクセスが悪いんです。そこで利便性の高い東京にある、東大大学院へ進学することにしました。今は昆虫が地球環境の変化にどう適応していくのか、また適応できない場合はどう変化するのかを研究しています。

両親は進学するなら東大大学院がいいと言っていましたが、今も相変わらず昆虫中心の日々なので「この子本当に大丈夫かな?」と心配しているはずです。小さい頃から好きなことをさせてもらっているので、心配しつつも応援してくれていると思っています。

日本の受験システムは平等。努力すれば逆転もできる

――勉強をすること、学歴をどう捉えながら、虫採りを続けてきたのか。

ある程度生きてくると、運とか、人の巡り合わせとか努力ではどうにもならないことがあるとわかってきます。そんな中で日本の受験は、どんな人でもその日にテストでいい点さえ取れれば合格できる、とてもいいシステムだと感じています。大学受験では内申点を見られることもないので、高校3年になってからでも努力さえすれば、誰でも希望する大学に入って逆転することも可能です。

学歴は自分が好きなことをやる上で便利なものです。僕が東大大学院で昆虫の研究をしていることで、大目に見てもらえることもあります。例えば、虫採りを許可してもらえたり、海外の大学へ行った時にそれなりの対応をしてもらえたりすることもあります。そういった面での学歴は便利なものです。しかし、学歴があっても何かが保証されているわけではありません。僕にとっての学歴は目的ではなく手段、ツールなのかなと思います。

――貫いてきた昆虫中心の日々。これから研究を続けながら目指す道とは。

実は自分でもびっくりするくらい、将来の計画性がないんです。周りは教授になりたいとか、研究員として働きたいとか、ある意味、社会的地位を目標にしています。僕は、今はただ、こういうことをしたいという気持ちの方が大きいですね。今はメディアを通して、昆虫の魅力を世間に伝えたい。そして、あわよくば、もっと虫採りにも行きたいなと思っています。

昆虫の魅力を言葉で伝えようとしても難しいものです。例えば、僕が地球の裏側まで行って、必死に虫採りをして泣いて喜ぶみたいなストーリーを見せられたら、「こいつバカだな」と思いながらも、人を惹き込むことはできるのかなと思います。

ここに持ってきた標本は2万点ほどある中のごく一部ですが、全て自分で採っていて、1つ1つに思い出があります。買った標本にはない熱い思い、これが伝えられるかどうかですかね。
これからも虫採りを「いかにガチでやれるか」が大切なのだと思っています。

取材・文/井上幸 撮影/小松正樹

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