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〈奪った金品をどう換金したか〉暴力団幹部が語る特殊詐欺・アングラマネーの換金の“ナガレ”「プリペイドカードの換金率は83%」「地下銀行だと5分」「宝飾品は買取屋、ブランド時計は…」

集英社オンライン / 2023年2月2日 20時6分

連日報道される全国で相次ぐ一連の広域強盗事件、「ルフィ」を名乗った今村麿人容疑者と渡邊優樹容疑者ら4人が、フィリピンから実行犯に指示をだしていたというのは既報の通り。彼らは略奪した金や貴金属をどうやって換金してフィリピンへ運んだのだろうか。暴力団幹部が、盗んだ金品を換金する“一連の流れ”を解説する。

暴力団幹部が語る金品を換金する一連の流れ

関東など各地で相次いでいる強盗事件は、組織的な犯行、資産家名簿などのリスト、闇バイトでの人集め、「ルフィ」と名乗る人物からの指示など、犯行の手口やその実態が徐々に明らかになってきている。

指示役とみられているのは、フィリピンのマニラ近郊にあるビクタン収容所に収容されている今村麿人容疑者と渡邊優樹容疑者ら4人。数年前からフィリピンを拠点に活動している特殊詐欺グループの幹部である彼らはどのように犯行を実行に移し、盗んだ金を換金してフィリピンへ運んだのだろうか。


ある暴力団幹部が、盗んだ金品を換金する一連の流れと役割について明かしてくれた。
「今回の事件は特殊詐欺のやり方をそのまま踏襲している。特殊詐欺も強盗も同じで、1つの流れがある」

まずは特殊詐欺など、資産家リストなどから犯行に及ぶ場合だ。これを幹部は“通常の流れ”と説明する。
「名簿屋→テレアポ→資金確認→調査部隊→実行部隊→集金部隊→換金部隊→本体」という流れだ。

名簿屋はリスト屋とも呼ばれ、資産家リストや多種多様な名簿を売買。テレアポは特殊詐欺での“掛け子”役で、金を持っている高齢者などに電話をかける。この時、資金確認も掛け子が行う。

多発している「アポ電強盗」では、掛け子役の人間が狙う家に電話をかけ、資産状況などを確認する。調査部隊は事前に住宅や周辺状況を下見し、家人の留守時間などをリサーチする。

実行部隊は実行犯となる人間をSNSなどで集め、現場に送り込み指示する役と、集められた実行犯らに分かれる。
特殊詐欺なら受け子と出し子、強盗ならタタキだ。集金部隊は受け子が受け取った現金や出し子がATMから引き出した金、盗んだ金品を集める役。換金部隊は現金以外の金品を金に換え、海外に犯罪グループの拠点がある場合、日本から持ち出しやすいよう換金する役だ。

利用される様々な個人情報の名簿(写真はイメージです)

この流れが簡略化されることもある。狙われる住宅や店舗はすべてが名簿屋のリストに名前があるわけではない。情報は情報屋と呼ばれる者から入ってくるという。

その流れは「情報屋→調査部隊→実行部隊→集金部隊→換金部隊→本体」だ。

「ターゲットの情報はその都度、情報屋から入る。情報屋が狙うのは反社だ。その情報はアングラマネーがメイン。一連の連続強盗事件の被害者宅のなかには、この情報屋によって狙われたであろう野球賭博の胴元や闇カジノ運営関係者の家があった」(幹部)

送金は電子マネー・プリペイドカード・地下銀行を使用

情報屋からの情報は、アングラマネーゆえにテレアポや資金確認の必要はないという。この情報屋が暴力団や半グレ組織に属しているのかどうか、幹部に尋ねてみたが答えはなかった。
調査部隊は現場の下見、実行から逃走までのルートなどを確認、指示役はケースによっては調査部隊から実行部隊にまで関わることがあるらしい。

犯行後はすぐに盗んだ金品を換金し分配、海外に拠点があればそこにも運ぶ。換金方法は金品と現金で異なるという。
幹部は「タタキで得た現金は現場報酬が約40%、中間管理報酬が20%。それらを引いた残り40%を日本サイドで仮装通貨やアップルカードなどの電子マネーに換金する」と話す。

「アップルカードなどのプリペイドカードや電子マネーは個人情報登録の必要はなく、無記名のため足がつきにくい。いくつかの店で大量に購入し、フィリピンなどに持ち込む。フィリピンではそのプリペイドカードや仮想通貨を現金に換金。換金率は83%だ。プリペイドカードは使用されていても、フィリピンではどれくらいの金額がチャージされているか、調べることができる機器があると聞いている」(幹部)

被害にあった「てんとう虫」

現金を送金し現地の口座にプールしておくなら、現地の人間の協力が必要だ。

「向こうに長く住んでいる人物の協力がいる。彼らは銀行口座を持っているからな。収容されている者の場合、愛人や彼女など、差し入れや携帯で通話する相手はすぐにバレるから、警察官や刑務官の類や職員を巻き込んでいる可能性がある」

大量の現金は様々な手口で換金される

送金するには地下銀行という手段もある。違法だが為替の手数料が安く、送金してから現地で現金が受け取れるまでのタイムラグが少ない。

「フィリピンクラブやサリサリストアとよばれる小売店は、地下銀行を兼ねている所が多く、フィリピン人の女の子などがよく使っていた。今はネットで送金できる海外送金サービスを使うのが主流。これを使うと“ドアツードア”で5分。つまり日本から送金し、現地で金を受け取るまでの時間がたったの5分だ。送金に必要なのは電話番号と現地の住所と相手の名前だけ。フィリピンだろうが、ウクライナだろうが5分だ。ただし、細かな金は送金できるが、多額の金は送れない」(幹部)

「メディアは騒ぎすぎだ」
「ルフィは本体に近いが頭ではない」

現金以外の宝飾品は、買取屋に持ち込むという。
「金の延べ棒やインゴットは目方によって時価相場に近い金額で買い取ってくれる。宝飾品は相場の2割か3割がいいところだ。指輪などは石をばらし、金を溶かすのも面倒だから、せいぜい3割」

宝飾品は2割か3割 (写真はイメージ)

時計は高級なブランド時計でも基本、買取屋に持ち込まない。シリアルナンバーがあるからだ。
「時計好きの個人の使用者に商品として定価の2割程度で売却する。盗む時にギャランティカードが一緒にあれば別だが、そんなことは稀だからね。もし警察にシリアルナンバーが届けられていれば、それで足がつく」と話すこの幹部は、自身も盗品を何個か買い取り、個人客に売ったという。
「売る時に、『俺の所に回ってきたんだけどさ』と正直に話せばいいだけ。出所はどこかとかは聞かれないし話さない」

高級時計は個人的に売るという(写真はイメージ)

現金化された金は分配され、(窃盗・タタキなどの実行犯の)現場には報酬として40%が分けられる。
「前は現場報酬が50~60%ということもあった。今は滅茶苦茶、配当が安くなっているから、自分たちでやらず闇バイトで人を集めて使うようになった。闇バイトで集めたヤツらは安く使えるからね」

指示役ら4人は早ければ来週にも強制送還され、日本の警察に身柄が引き渡される可能性も出てきた。現地では渡辺容疑者を詐欺組織のビックボスと報じ、彼らが収容されているビクタン収容所にはメディアが面会を求めて押しかけている。今は20人近くのメディアが、送還のXデーを報道しようと現地に集まっていると報じられている。

その様子に幹部は「メディアは騒ぎすぎだ。これではフィリピン警察も大物を捕らえたという感覚になる」と冷ややかだ。

「ルフィは本体に近いが頭ではない。警察はやつらを逮捕してすべてをゲロさせるつもりだろうが、こんな騒動になれば、こいつらに指示を出した人間まではたどりつかない」

指示役の上には、さらに彼らを束ねる者がいると幹部は示唆する。どこまで事件が解明されるのか、指示役らの送還が待たれる。

取材・文/島田拓
集英社オンライン編集部ニュース班

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