セルジオ越後の一蹴両断! 第256回「バロテッリ騒動」

週プレNEWS / 2012年5月10日 14時0分

“バロテッリ騒動”に見る、世界と日本との決定的な違い!

各国リーグの優勝チームも続々と決まり、今季の欧州サッカーもいよいよクライマックスだね。今季もいろいろな話題があったけど、最も不名誉な形で注目された選手は、イングランドの強豪マンチェスター・Cのイタリア代表FWバロテッリだろう。

現在21歳のバロテッリは前所属のインテル時代から才能を高く評価され、2010年夏のマンC加入以降もゴールを量産してきた。ただ、その一方で、彼はトラブルメーカーとしても名を上げた。交通違反を何度も犯したり、ナイトクラブでケンカをふっかけたり、下部組織の選手に向かってダーツの矢を投げたり、自宅で花火をして火事を起こしたり……。何より問題なのは、彼がピッチ内でもトラブルを起こすこと。相手選手やサポーターを挑発し、ラフプレーを連発するなど、とにかく短気。僕がテレビで見た試合でも、FKの場面で「俺に蹴らせろ」と味方の選手に悪態をついていたからね。

そして、いつものようにラフプレーを連発して退場となった4月8日のアーセナル戦後、それまで彼を擁護してきた同じイタリア人のマンチーニ監督が「今季はもう彼を使わない」とブチ切れ。猛批判を受けることになった。

日本だったら、こんな選手はとっくにクビだし、そもそもプロになれないよね。でも、今季は彼ばかりが注目されたけど、海外には程度の差こそあれ、彼みたいな素行不良の“悪童”は昔からたくさんいる。有名どころではマラドーナ、ロマーリオ、エジムンド、ガスコイン。現役でいえば、ロナウジーニョ、C・ロナウド、ルーニーもそう。数え上げればキリがない。

なぜ、そういう選手が多いかといえば、日本人には想像もつかないような貧しい環境から這い上がってくる選手が多いからだろう。例えば、マンCのアルゼンチン代表FWテベス。僕は彼の生まれ故郷のスラム街を訪れたことがあるんだけど、地区の入り口には警察官が常駐し、「危険だからよそ者は入るな」と止められた。ブラジル人の僕でもヤバいと感じる場所だったよ。

そういう環境で生まれ育った選手は、やっぱりハングリー。サッカーで成功しなかったら、またスラム街に戻らなきゃいけない。生きるために必死でプレーする。この感覚は、まだまだ恵まれた環境にある日本人には理解できないと思う。

以前、祖母井(うばがい)秀隆さん(京都GM )がグルノーブル(フランス2部)のGMだったときには、こんなことを言われたよ。

「アフリカ系の選手たちの目つきを見てよ。まるで獲物を狙うライオン。命をかけて成り上がろうとしている。それに比べると、ウチにくる日本人選手は留学気分だ」

もちろん、ハングリーならなんでもいいというわけじゃない。家庭環境、教育環境に恵まれなければ、社会常識も身につかない。そのせいで、試合中に自分の感情をコントロールできなかったり、ピッチ外の誘惑に負けたりして、消えていく選手も多い。成功するかどうかは紙一重だ。だから、どちらがいいのかは僕にもわからないけど、背景を考えると技術の差はともかく、ハングリーさの部分での日本と世界との差はなかなか埋まらないと思う。

バロテッリに関してはまだ21歳だし、マンチーニ監督が気を取り直して辛抱強く面倒を見れば、更生する可能性は十分にあるんじゃないかな。

(構成/渡辺達也)

■セルジオ越後



1945年生まれ。72年の来日以降、指導者、解説者として活躍。



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