ハリケーン「カトリーナ」級の“巨大竜巻”は、一年中発生する危険性がある

週プレNEWS / 2012年5月17日 10時0分

大型連休最終日の5月6日午後1時頃に北関東各地を襲った「竜巻」は、のどかな住宅地を一瞬にして地獄に変えた。住宅などの建造物被害は、茨城県134棟、栃木県934棟。死傷者数も、茨城県43人を筆頭に、栃木・群馬・千葉・埼玉各県で計57名に達した(5月10日現在、消防庁集計)。

これらの被災地の中で、特に深刻な被害を受けたのが茨城県つくば市の北条(ほうじよう)地区だった。竜巻発生の翌日、週プレはまるで戦場のように無数の瓦礫とゴミが散乱し、轟々と重機のエンジン音が鳴り響く復旧作業現場を訪れた。この取材に同行した都市防災学が専門の三舩(みふね)康道氏(一級建築士、ジェネスプランニング代表)は、世界各地の災害現場を調査してきた経験から、次のような感想を語った。

「竜巻の強さは風速(秒速)によってF0からF5までの6段階に分けられます。日本国内では、2006年11月に北海道東部で発生した竜巻がF3(平均風速70.92m、死者9名)で最も強いとされてきました。そのときの被害実態に照らすと、つくば市の竜巻についても公式発表値のF2(平均風速50.69m)を超えているのではないでしょうか。

それから、南西から北東の方向に約17kmを直進したこの竜巻は、北条地区の数km手前で多くの企業の研究施設を直撃し、それらの厚い強化ガラスを一枚残らず粉砕しました。この状況については、05年8月にアメリカ南東部を襲ったハリケーン『カトリーナ』の被害ととても似ています」

今回の竜巻は、2000人近い死者・行方不明者を出した超大型ハリケーン「カトリーナ」に匹敵する破壊パワーを有していた可能性があるというのだ。

これまで日本では、地表温度が高まる夏から秋にかけて上昇気流が活発になり、それが上空の寒気とぶつかって積乱雲を発生させ、竜巻を引き起こすことが多かった。前述の北海道東部で起きた竜巻は11月、その2ヵ月前の9月に宮崎県延岡(のべおか)市でも台風13号の接近時にF2規模の竜巻が3つも同時発生し、3名が死亡している。

しかし、近年では冷たい北極圏からの寒気団が年間を通じて日本の上空へ張り出すことが多くなり、特に太平洋沿岸の平野部などで、温暖な暖気団とのせめぎ合いによる大型の竜巻が発生しやすくなっている。その証拠に、今年の4月3日から5日にかけて、突如として「爆弾低気圧」が発達し、西日本では超大型台風並みの暴風雨となり、東北から北海道にかけては季節はずれの大雪が降った。

「この爆弾低気圧が日本列島を縦断したときにも、本州各地で竜巻らしき突風が発生しました。今後もこうした異常気象が慢性化するのは避けられない傾向といわれています。そうなると、年間を通じてF2以上の竜巻がますます多発する恐れがあるでしょう。実際に、今回の竜巻の3日後の9日には、愛知・中部国際空港沖でも10分間にわたって海上竜巻が目撃されています」(三舩氏)

それにつけても驚かされたのは、北条地区の被災現場には「崩壊」「横転」どころか、コンクリートの基礎ごと180度ひっくり返った家屋があったことだ。こんな目を疑いたくなる災害に見舞われたら、運が悪かったと諦めるしかないのだろうか? 三舩氏はこう語る。

「竜巻に耐えられる家屋をつくることは難しいという意見もありますが、それは誤りです。最も風圧によるダメージを受けやすい屋根の張り出しを小さくし、構造材を強化するなど、建築家が工夫を凝らせば、ひっくり返ったり横転したりということはなくなるはず。今回の大惨事を徹底的に再検証し、迫りくる巨大地震を含めて明日を生き延びる知恵につなげていくべきです」

今後は、耐震工事だけでなく、耐竜巻対策も考えていかなければならないのかもしれない。

(取材・文/有賀 訓)



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