東京23区にひとりだけ。電気自動車個人タクシーの運転手が語る実用性「一日3回の充電が必要」

週プレNEWS / 2012年5月22日 17時0分

電気自動車・リーフのタクシードライバー、宇田川さん。汐留から成田空港へお客さんを乗せたところ、トンデモないことに?

 新車購入時にエコカーを選ぶ人が増えてきたのと比例するように、最近ではハイブリッドカーであるプリウス(トヨタ)のタクシーも当たり前となってきた。

 そんななか、電気自動車(EV)の日産リーフで個人タクシーの運転手をしている人がいる。ドライバー歴24年の宇田川明善さん、60歳だ。宇田川さんがリーフに乗り換えてすでに1年3ヶ月、走行距離は5万kmを超えるという。

 東京23区でただひとりのEV個人タクシードライバーに、その使い勝手を聞いた。

***

―なぜリーフだったんですか?

「う~ん、そもそもヘンなクルマが好きなんですよ。人と違うクルマに乗りたいっていうのかな」

―乗ってみてどうでしたか?

「最初は、びっくりしたねぇ。ガソリン車と違って、いきなりドンとパワーが出るんだよ。ガソリン車だと『ちょっと厳しいかな』って合流でも、スムーズに入れる」

―では、お客さんの反応は?

「それがね、たいていの人はリーフ(電気自動車)だって気づいてくれないんだ(笑)。こないだも、『銀座まで急いで!』って言う女性を乗せたんだ。で、ペースを上げて走っていたら、『急いでって言ったじゃない!』って怒られて。どうやらエンジン音がしないから、ゆっくり走っていると思ったみたいだな」

―実際に購入してみてのデメリットってありますか?

「やっぱり航続距離だね。もう年だから営業は昼間だけで、距離は一日140kmくらい。まぁ、カタログ数値(航続距離200km)を話半分に考えても、昼間に1回充電すれば大丈夫だと思ってたんだ」

―でも、そうではなかった?

「一日3回の充電が必要だってわかったのは、実際に営業を始めてから。『バッテリー残量計』には目盛りが12個あって、いつも下から4つめまでに減った段階で充電するんだ。急速充電だと、30分で上から3つめの目盛りまで充電されるけど、満充電にはならない。そこからまた走って、残り4つめで充電して……の繰り返しだね」

―充電場所は決まっている?

「うん。中央区役所とか、浜町公園とか。でも、急速充電器がある場所は限られてるから、他のユーザーとカチ合うことも多い。こうなると、あきらめて他に行くね」

―いわゆる「電欠」(電池残量がなくなって走れなくなること)になったことはありますか?

「ほぼ電欠ってのはあるよ(苦笑)。汐留(しおどめ)で乗ってもらったお客さんから『成田空港まで』って言われたんだ。往復で140kmあるんだけど、さすがに成田は日本の玄関口、急速充電設備はあるだろうと思って行ったんだよ。だけど、探してもないんだな(笑)。結局、帰りの東関道でカメマーク(バッテリー残量がギリギリの状態で出る恐怖のランプ)が点ついて、SA(サービスエリア)でJAFを呼ぶハメになった。羽田には急速充電があるし、成田なら……と思ったんだけどな(苦笑)」

―やっぱり、まだガソリン車のように使うのは難しいですか?

「そうだね、弱点しかないよ。都心部には急速充電設備があるけど、ちょっと出るともうないから。東京から30~40km圏の設備を増強してもらえると、少しはマシになると思うんだけどね」

―他に心配なことがあるとか?

「メンテナンスのコストだね。普通に乗っているだけなら家電製品みたいなもんだから、ガソリン車よりラクなんだよ。出発前の仕業点検もバッテリーの残量をチェックするくらいだし。買って1年ちょっとになるけど、その間のコストはガソリン車より断然少ない。でも、バッテリーが寿命になって、載せ替えるってなったら、ひょっとしたら百何十万ってオカネがドンとかかるってことになる。ディーラーに聞いても、それがいつ、いくらになるのかわからないって言うんだよね(笑)」

―普段は、東京駅丸の内口の「エコタクシー乗り場」をベースにしているそうですが、流し営業は?

「やりたいけど、流してたらすぐ電欠になっちゃうからね(笑)」

(取材・文/植村祐介、撮影/岡倉禎志)

●宇田川明善(うだがわ・あきよし)

タクシードライバー歴24年。リーフの前はステージアに乗っていたというヘンなクルマが大好きの60歳。リーフを購入して約1年と3ヵ月。心配のタネは将来のメンテナンス代。



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