加藤嘉一「自分でつかんだものではないコネは、いつか必ず人を縛りつけ、成長を阻みます」

週プレNEWS / 2012年6月11日 15時0分

「実力」と「コネ」は、よく相反する意味合いで使われます。しかし、実際には、本当にいいコネというのは実力がなければ手に入りません。

先日、日本のある有名企業で研修中という若い新入社員の方々と話をしたのですが、彼らの態度ははっきりせず、こちらが聞いたことを理解しているのかどうかもわからない。小学校時代のぼくのほうが気合いが入っていたのではないか……と思ってしまうくらいの頼りなさでした。

いったい、なぜこういった人材を採用するのか? 当初はその会社の見識を疑ってしまいましたが、後になって彼らは“コネ入社”だとわかりました。今回は、「人材とコネ」というテーマについて考えてみます。

人間は大きく4つのタイプに分かれると思います。1、コネも実力もある人間。2、コネがあって実力のない人間。3、実力があってコネのない人間。4、両方ない人間。例えば、ぼくが中国に渡ったときはコネなどありませんでしたし、まして中国語もおぼつかなかったので実力もありませんでした。つまり4番目のタイプ、両方ない人間です。しかし、己を知り、勉学を重ね、競争に打ち勝つことで実力をつけ、その結果として多くの人間とコミュニケーションを持つことができ、コネを獲得していきました。

ですから、何もコネというものがすべて悪いと言っているわけではありません。ぼくも仕事では当然コネを使います。そのほうがコスト的にも時間的にもメリットが大きいわけですから。言うまでもなく、コネと実力の両方がある人間がベストだというのは揺るぎない事実です。

ただ、いいコネというのは降ってくるものではありません。自分でつかみにいってこそ、コネはその真価を発揮するのです。

中国には“冨二代”という言葉があります。親が富と名声を持っている二世のことで、結婚対象の一番人気ともてはやされていますが、彼らを見れば、多くは気が緩んでいたり、暴飲暴食で腹がたるんだりしている。中国のテレビで彼らについてのコメントを求められると、ぼくは「同情する」と答えた上で、「日本では、実力のない人間が親の権力をかさにかけても憐れみの対象になるだけだ」という話をします。

ぼくの知り合いに、日本のある閣僚経験者を親に持つ方がいます。その方は人格者で実力も十分にあるのですが、「親がそうであるというだけのことで、自分は“実力のない人間”だと評価されて悔しい」と言います。だから、周囲には家族だと知られないように生活をしている、と。

このハングリー精神、美徳こそが日本人の素晴らしさであり、誇りだとぼくは思ってきました。しかし冒頭の話からもわかるように、そうではない輩も多いのだとすれば、それは悲しむべきことです。

過去はどうだったかわかりませんが、今の時代には“実力なきコネ人材”を雇っておく余裕はないはずです。生産性がないという意味で、ゴマすり人間、イエスマンとして実力とは無関係の処世術で地位を上げ、既得権益をむさぼる人間と変わりません。

コネとは親からもらうものではなく、何もせずとも空から降ってくるものでもなく、あくまでも自分でつかむものです。自分でつかんだものではないコネは、いつか必ず人を縛りつけ、成長を阻みます。そして、自らコネをつかむためには、まず実力が必要です。それ以上でもそれ以下でもありません。この不安定な社会情勢のなかにいながら、コネだけで入社して「一生安泰だ」と思っている人がもしいるならば、その根拠を逆に教えて!!

今週のひと言



“いいコネ”とは自分でつかむもの。降ってくるものではありません!

■加藤嘉一(かとう・よしかず)



1984年4月28日生まれ。高校卒業後、単身で北京大学へ留学。年間300回の取材、200本のコラム執筆、100回の講義をこなし、国境を越えて多くの著書を持つ国際コラムニスト。近著に『北朝鮮スーパーエリート達から日本人への伝言』(講談社)、『いま中国人は何を考えているのか』(日本経済新聞出版社)がある。



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