マルチ商法に参入する若者たちに「目を覚ませ」では何も解決しない

週プレNEWS / 2012年6月20日 10時0分

底なしの不況で雇用状況も悪化するなか、「マルチ商法(マルチレベルマーケティング=MLM)」に参入する若者たちが増えている。だがMLMは、安定とはほど遠い世界のはず。なぜ、彼らは参入してしまうのか。

社会学者の鈴木謙介氏は、「MLMそのものがいいか悪いかという議論はあえておいておきますが」という前提で、次のように指摘する。

「接客業などのサービス業は、労働生産性が高くないという性質上、賃金もどうしても低めになってしまいます。善悪は別にして、諸外国ではこういった職種は移民が担っているケースが多いのですが、日本の場合は学歴やチャンスに恵まれなかった若年層が担っている。そこからの脱出を目指そうと考えたとき、同じ対人スキルを使って上昇が見込めるMLMが魅力的に映ってしまうのは当たり前ともいえます」

労働生産性が低いサービス業に就いた若者たちが、低賃金からの脱出を求めて持ち前の対人スキルの生かせる仕事に転職する。こうした仕組み自体は、昔からあるもので珍しくはない。

しかし、現在は産業の空洞化が起こり、若者が比較的容易に就ける仕事の多くは賃金が低く抑えられ、上昇もなかなか見込めないものばかり。しかも、ここ20年間で四大卒者の人数は10万人も増え、ただでさえ枠が減った製造業にも流入してきた。

結果的に、そこから押し出されてしまった人がサービス業に流れ込んだが、そこにすらも将来性が感じられないためにMLMで“最後の賭け”に挑まざるを得なくなっているのだ。

将来が見えないゆえ、MLMに参入していく若者たち。しかし、そこは通常の被雇用者という労働形態とはまったく違う、完全結果主義の世界だ。本誌が取材した若者たちの多くも、現状でのMLMによる収入は1万円台から多くても13万円程度と、決して将来への不安を解消できるような水準にはない。

「競争が熾烈で一部の人しか勝ち残れないリスキーな業界は、本来であれば、それに挑戦する余地のある人たちが挑むべきものです。しかし、実際には仕事を選べなくなった結果、仕方なくそこを目指さざるを得なくなった人もいるようです。なかには、それに対して『目を覚ませ』と非難する人もいますが、結局目が覚めても、ある程度妥協できる職すらないという現実があるだけでは、MLMをやめることはできないでしょう」(前出・鈴木氏)



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