「原発がなくても節電すれば大丈夫」という説は本当か?

週プレNEWS / 2012年7月2日 19時0分

反対の声が叫ばれるなか、7月1日、大飯(おおい)原発3号機が約1年3カ月ぶりに運転を再開した。4日には送電を開始し、8日にはフル稼働する見込みだ。その前々日の6月29日には、約20万人(主催者発表)もの市民が官邸前に集まり、再稼働反対を訴えていた。もはや、反原発はごく一部の人々による主張ではなくなったようだ。

しかし、いまだに「全原発を即廃炉に」と声高に叫ぶ“急進的な反原発派”も存在する。彼らは原発事故の可能性や放射能のリスクには非常に敏感なのに、その反対側のリスク――つまり、これまであった原子力発電を急にゼロにすることのリスクについては言及しないか、かなり楽観視する。

例えば、「原発がなくても電力は足りる。国や電力会社はやる気がないか、それを隠しているだけ」という説がある。だが、経済産業省OBで、エネルギー政策に詳しい慶應義塾大学大学院教授の岸博幸氏は、こう異を唱える。

「電力会社による電力需給の試算は、猛暑時の需要に関しては慎重すぎる数字ですが、供給のほうは発電所ごとに発電量を積み上げており、それなりに正確です。一方、『電力は足りる』と言い切っている人の試算は、この供給部分の見積もりがものすごく甘い。昨夏の東電管内では、節電に協力してエアコンを我慢したために熱中症で倒れた方がかなりいた。『節電すれば大丈夫』だなんて、相当な根拠がなければ簡単に言うべきではないと思います」

また、昨夏の電力逼迫(ひっぱく)を乗り切るために行なわれた“異常な努力”は、企業や家庭の節電だけではなかった。電力の供給現場で働く某火力プラントメーカーの男性社員は次のように語る。

「われわれの仕事は、打てる手をすべて打って全域停電だけは絶対に回避させることです。昨夏、東電管内では老朽化した火力発電所を復旧して再稼働させ、臨時的な火力発電設備の新規追設も数ヵ月で行なった。常識ではあり得ないタイトな工程です。また九州電力管内では火力発電所のトラブルがあり、危うく他地域からの電力融通に頼るような事態にもなりかけました」

一般論として、火力発電所は古ければ古いほど発電効率が落ち、トラブルの危険性も高くなる。昨夏は比較的涼しかったことも幸いしてか、全国どこでも大きな問題は起きなかったが、その裏で綱渡りの状態が続いていたことは間違いない。火力プラントメーカー社員はさらに続ける。

「現場レベルでは、『今この段階で原発がなくても問題ない』と断言できる業界人はたぶんいないと思います。結果的に大停電がなかったことで『ほら、原発なしでも電力は足りたじゃないか。やっぱり原子力ムラはウソをついていた』と思う人がいるなら、それは全然違いますよと言いたい」

脱原発を実現するためにこそ、こうしたリスクについて正しく認識する必要があるだろう。

(取材/コバタカヒト)



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