加藤嘉一「大学1、2年時の内々定って、そんなに画期的なことでしょうか?」

週プレNEWS / 2012年7月9日 15時0分

「就職活動は大学3、4年時」という“原則”に、少し風穴があきました。



日本社会ももっと多様性や例外を認める必要があります!

現在、まさに就職活動中の学生の方々も多いと思いますが、先日、ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正(やないただし)社長が、大学1、2年生約10人に入社の内々定を出したことを公表しました。正式に入社するのは卒業後ですが、柳井社長は「大学が休みのときに店舗で仕事を経験し、卒業と同時に店長を目指してほしい」とコメントしています。

同社は昨年末から「学年にこだわらない採用」を始めています。一部の他企業からは「青田刈り」「囲い込み」といった批判もあるようですが、ぼくとしては、早く内定が決まって大学生活を安心して、計画を持って過ごせるのであれば、問題ないどころか逆にポジティブだと思います。いよいよ社会が視野に入ってきて、人間的成熟が始まる大学3、4年時に、就職活動に莫大な労力を割かれてしまうのは時間の無駄だとぼくは以前から思っていました。

ただ、ひとつ指摘しておきたいのは、ファーストリテイリングのアクションを過大評価してはいけないということ。大学1、2年時の内々定って、そんなに画期的なことでしょうか? 学生側と企業側、お互いのニーズはマッチしているわけですし、法律を破ったわけでもない。強いて言えば、せいぜい“紳士協定”を逸脱したくらいのものです。

そもそも、現在の日本の経済状況や成長度を考えれば、どの企業も優秀な人材が欲しいのは当たり前のこと。弱肉強食の世界ですから、「青田刈り」「囲い込み」があってもおかしくありません。悔しくて文句を言うくらいなら、その企業もやればいいんです。

この動きがニュースになるということは、ただ内々定が早まったという「前例破り」だけがクローズアップされ、思考停止してしまっている証拠だと思います。この件に関してぼくが抱いた疑問は、「じゃあ逆に、大学を卒業して時間のたった人を積極採用する企業は出てこないのか」ということ。以前もこのコラムで書きましたが、ぼくは日本にはびこる“新卒偏重主義”がどうしても理解できないんです。

選択肢は広いほうがいい。それがぼくの基本的なスタンスです。早く内定を取る人がいるなら、大学を卒業して1、2年ほど海外を旅して、見聞を広めてから就職するという選択があってもいいはず。いろいろな選択肢があり、自らの意思で選択できる権利を有していることも、民主主義社会の重要な構成要素です。

大学を卒業しても、自分が何をしたいか迷っている人はたくさんいます。野球選手なら、高校や大学で芽が出ず、ようやく社会人で才能が開花してプロに進む人だっています。人間の成長は直線的ではなく曲線的であり、人によって違うもののはずです。

ですから日本企業には、大学を卒業して時間のたった人材にも門戸を開いてほしい。グローバリゼーションの時代、多様性や例外を認めないという姿勢が続けば、日本という国はますます面白みがなくなり、内向きになっていきますよ。それに冷静に考えてみれば、企業にとっていま一番必要なのは経験やビジョンを持った即戦力としての人材ではないのでしょうか。

こういうことを企業の人事担当に進言すると、多くの方は「私たちは長期的に人を育てていきたい」と答えます。ぼくには「自分たちがコントロールしやすい人材だけが欲しい」というように聞こえます。「即戦力の人材は長期的に見れば育たない」という証拠、合理的な理由があるなら、逆に教えて!!

今週のひと言



選択肢は広ければ広いほどいい。



“新卒偏重”はもうやめましょう!

■加藤嘉一(かとう・よしかず)



1984年4月28日生まれ。高校卒業後、単身で北京大学へ留学。年間300回の取材、200本のコラム執筆、100回の講義をこなし、国境を越えて多くの著書を持つ国際コラムニスト。最新刊『脱・中国論日本人が中国とうまく付き合うための56のテーゼ』(日経BP社)が好評発売中!



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