深夜中継の多い“ウラ”五輪にハズレがない理由

週プレNEWS / 2012年8月2日 6時0分

コラムニストの小田嶋隆氏イチオシ、やり投げのディーン元気選手。「空気を読まない素朴さが素晴らしい」とか!?

日本との時差が大きいため深夜中継が多いロンドン五輪。そのせいか、北京の時より盛り上がりに欠ける気がする。だが、コラムニストの小田嶋隆氏によると、そんな深夜中継の多い五輪こそおもしろいという。その理由とは?

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今回の五輪は“ウラ”の回だ―というこの言い方は、私の勝手な決め付けなので、一応説明しておく。

北京だとかシドニーみたいな時差の少ない土地での開催は“オモテ”に当たる。“オモテ”の五輪はメディアが張り切る。テレビ局が必死でゴールデンの視聴率を稼ぎにくる。だから、それだけ華やかになるし、注目度も高い。

一方、“ウラ”の五輪というのは、アメリカ大陸やヨーロッパで開催される分の大会を指す。この場合、テレビ局は必死にならない。というのも、しょせんは深夜ネタだからだ。

てなわけで、今回のロンドン五輪の前景気は、前回の北京の時と比べて、なんとなくショボい。

が、心配はいらない。実は、五輪は“ウラ”の方が当たりなのである。

少なくとも私個人にとってはそうだ。サッカーの欧州選手権やチャンピオンズリーグのテレビ観戦経験を通じて、私の体内時計には、「本当に良いゲームはド深夜に見るものだ」という感覚が強烈に刻み込まれている。だから、スタジオの人間が全員ハッピにハチマキだったりする“オモテ”の五輪の、ゴールデンな空気にはなじめない。むしろ、ひとりで起き出してツイッターを立ち上げながら観戦する深夜観戦の方が集中できるのだ。

制作される番組の質も、実は“ウラ”の五輪の方が高い。というのも、深夜の五輪中継は、予算や時間帯の関係から、少人数で作られることが多く、それゆえスポーツ局主導の、競技寄りの誠実な番組が出来上がってくるからだ。

“オモテ”の五輪の場合、編成局のオヤジだとか、レギュラー番組を中断させられることになる制作局のプロデューサーみたいな連中の意向が、どうしても影響する。と、ゴールデンの競技中継には、不要なお笑い芸人だとか、ルールも知らないアイドルがキャスティングされることになる。こういう番組の空気が、競技の真剣さを毀損(きそん)するのである。

その点、“ウラ”の五輪には予算が割かれない。だから、この度のロンドン五輪の競技中継は、必要な情報だけをシンプルに伝えるキビキビした放送になるはずだ。期待しようではないか。

さて、今回の五輪は野球とソフトボールが開催競技から外されている。ほかにも、男子バレーが出場を逃がし、バスケットボールに至っては男女ともに選外だ。そういう意味でも盛り上がりに欠ける。

が、心配してはいけない。こういう時がむしろチャンスなのだ。そう。真剣にメダルを目指しているアスリートにとって、ニッポンチャチャチャだったりウルトラソウルだったりする煽りは邪魔なだけなのである。

私のイチ押しは、やり投げのディーン元気君だ。老け顔の20歳。インタビューの空気を読まない素朴さが素晴らしい。

「あのぉ、金メダルをかじるポーズで写真お願いします」

「いやですっ!」

ぜひ、金メダルをとった上で、あのたわけたお約束を粉砕してくれ。頼む。

(文・イラスト/小田嶋隆)

●小田嶋隆(おだじま・たかし)



1956年生まれ。近著に『小田嶋隆のコラム道』(ミシマ社)。浦和レッズサポーターとしても知られる



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