「自分の給料はどう決まっているのか?」経済入門書作家・木暮太一が語る給料のメカニズム

週プレNEWS / 2012年8月14日 6時0分

国内大手企業を渡り歩き「日本で働くということ」を実感したという作家の木暮太一氏

『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』。木暮太一氏の新刊は、多くのビジネスマン、就職活動を控えた学生が感じているだろうことをストレートに言葉にした刺激的なタイトルだ。その中身は、驚きの“マルクス×自己啓発”。著者は、学生時代に『資本論』を読み込み、卒業後は富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートに勤め、「日本で働くということ」をリアルに実感する。そんな木暮太一氏が、実現可能な「しんどくない働き方」を考えるのが本書だ。

革命以外の方法で、僕らは「ラットレース」から抜け出すことができるのだろうか?

―まず驚くのが、「日本企業はマルクスが描いた構造そのもので成り立っている」と本文にあるところです。

「日本企業は『資本論』とばっちり重なっています。いちばんわかりやすいのが給料です。自分の給料がどういうメカニズムで決まっているか、知っていますか? 「もっと給料をもらってもいいはず」と思っている人は、いくらが適正か、論理的に説明できますか?」

―そういえば、学校の授業でも会社の新人研修でも習ったことがない気が……。

「日本企業では慣例的に「必要経費方式」で決まっています。これは、お父さんのお小遣いをイメージしてもらえればわかりやすい。お小遣いは、お昼ごはんが500円×20日、月に2回くらいは飲みにいきたいから飲み代が6000円……と「必要な経費」を足していって、最終的に月3万円、と決まる。企業も同じように、社員とその家族が生活していくのに必要な経費を積み上げて給料を決めています。問題なのは、この方式だと生活に必要なお金しかもらえないということです」

―だから皆、お金がなくて大変だということですね。

「マルクス経済学では、明日も同じように働くために必要なお金を【労働再生産コスト】と呼びます。この額は会社に利益をもたらしたから増えるものではないんです。だから、朝から晩まで働かされている若手より窓際のベテラン社員のほうが給料が高い。20代より50代のほうが、家族がいたりして「再生産のコスト」が高いからです」

―でも、医師などのように、若くても給料がいい仕事もありますよ。

「それを説明するには、『資本論』の重要キーワード“使用価値”と“価値”について説明しなければなりません。簡単にいうと、マルクス経済学では使用価値は“有益性”ということ。一方、“価値”は“手間がかかってくる”と高くなるものです。商品の値段はこの“使用価値”と“価値”で決まります。資本主義の世界では労働力も商品ですから、給料もこのふたつで決まります。医師は、世の中にとって役に立つから“使用価値”が高く、高度な専門知識を勉強しなければなりませんから手間もかかっていて“価値”も高くなる。だから給料が高いんです」

―ということは、難しい資格を取れ、ということですか?

「その資格が、今後も世の中で必要とされるか(使用価値があるか)を見極めることが大切です。しかし、それはなかなか難しい。だから先見の明がある人以外は、“マスターするのに手間がかかり”“人から求められる”能力を長いスパンで習得しようとすべきです」

―普通の会社員で、そんな特別なスキルが身につくんでしょうか。

「どんな仕事でも必ず身につくものがあります。大事なのは、日々の仕事の中で伸ばすべき能力に自覚的になること。能力が上がれば、過去の積み上げに給料が支払われるようになるのです。そのための“土台”を若いうちからつくってほしいと思います」

(撮影/髙橋定敬)

●木暮太一(こぐれ・たいち)



経済入門書作家、出版社経営者。慶應義塾大学経済学部卒業。最初に勤めた会社で、「マルチタスク」で仕事を進める能力を伸ばし、それがサイバーエージェントで評価され新事業立ち上げを任される。現在は独立し、出版社(マトマ出版)を経営、著書は『マルクスる?』(マトマ出版)、『今までで一番やさしい経済の教科書』(ダイヤモンド社)など多数

『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』



星海社新書 903円







資本主義の世界で働くなら、今日の努力ではなく、これまでの蓄積が評価されることを目指すべき。「IT業界よりも、変化の遅い建設や農業のほうが狙い目」など実践的な例を出しつつ、しんどくならない働き方をどうつくるかを提案する



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