石井光太×さくら剛「旅こそ人生、人生こそ旅……」注目のノンフィクション作家ふたりが、男の旅を語り尽くす!!

週プレNEWS / 2012年8月14日 18時0分

「初めて女のコと 海外行ったのは 死刑囚の娘さんで……」石井光太氏(写真右)、「そもそも旅の きっかけが彼女に フラれたことで……」さくら剛氏(写真左)

海外の貧困層社会の現実を描くノンフィクション作家・石井光太。そしてへタレ人間のドタバタ旅行記が人気の元ニート作家・さくら剛。“硬”の石井に“軟”のさくら。世界を股にかけ活躍する若手作家ふたりが初コラボで「旅」の魅力を語る!

―まず、「旅人」になったきっかけを教えてください。

石井 僕はそもそも旅そのものに興味があったわけじゃなく「モノを作りたい」っていうのがきっかけ。そのひとつの手段として「海外での取材」があって。僕が海外に行くのはそこにあるドラマを観たいからだし、ドラマが観られるなら世界中どこだっていい。今の僕にとって旅は、もはや生活の一部で仕事ですらない。境界線がないんですよ。

さくら カッコいいなぁ。僕なんて好きだった女性にフラれたことがきっかけなんですよ(泣)。まぁ、フラれるのも当然というか、ずっとニートみたいな生活してましたからね。で、フラれたことで、このまま同じ暮らしをしていたら今後同じことを繰り返すだろうと思って、修行するつもりで海外に向かったんです。

石井 それ、メディア向けの説明じゃないかな~(笑)。でもまぁ旅は面白いっすよ。なぜかって、旅先にはあらゆる分野に転用可能な無限の材料が転がっているから。僕の場合、それは物乞いだったり売春婦だったり。で、さくらさんは別の観点からあらゆる食材を調理し、お笑いに昇華してるんじゃないかと。もちろん僕らは仕事としてそれをやって作品づくりをしてるけど、一般の方にとっても、さまざまなやりがいを生み出せる可能性が旅先には秘められていると思うんだよね。価値観だって変えられるし、ある種、宇宙みたいなものが広がっているのかなと。

さくら そうですね。ただ、あまり旅に期待しすぎて、行けばなんとかなると思ってる人もいるけど、それは違うかなぁと。旅に出ている間は一人前のことをしている気になるんですけど、漫然と旅行してても何も変わらなかったり。実際、そういう人を過去に何度も見たことがあります。

石井 結局、調理するのは自分だからね。あくまで旅は材料を提供してくれるだけで。ただ、旅がくれる材料は無限ですよ。

―でも、最近の若者は旅に行かなくなっている。最大の理由は「お金がないから」らしいです。

石井 イライラしますよね(苦笑)。そんなこと言ってたら何もできるわけない。初めからそんな考えでどうするんですかって。まぁ、講演なんかでも若い人からの質問は「どうしたら作家として成功しますか?」「いくら稼げます?」とか、イライラするようなものが多いんですよ。そんなもん無我夢中でやって、結果として何かが残っているものなのに。なぜ、チャレンジしないかな。

さくら う~ん。日本って結局、食っていける国じゃないですか。極端な例を除いて、部屋にずっといても餓死する危険もないし。だから、わざわざ今の状況を打破しようってならないし消極的にはなると思うんですよ。僕もずっとそかり言ってたかもしれない。さくら 特に途上国とか行くと、インフラや社会保障、食事とあらゆる面で、恵まれた国に生まれてよかったなぁって思います。彼らと話をすると「日本人は仕事をしなくてもお金をもらえるのか!?」ってすごく驚かれますから。



―今の日本社会に文句ばかり言っている人こそ、旅をすべきかもしれないですね。

石井 ホントにそう思うよね。何か自分ひとりの力でやるってことがどれだけ大変か。現実に直面するのはどんなにしんどいことか。周りのせいにしたり、世間の文句ばっかり言ってるヤツが今多いのは、もしかしたら旅をしていないからかもしれない。

さくら 苦労すれば人の気持ちがわかるようになるっていいますけど、旅はまさにそれ。旅で苦労をすると、他人に文句を言うより、まず自分で頑張ろうと思うようになる。実際に僕もそうでした。常に三日坊主で長続きしなかったのに、旅をするようになって何事も最後までやり遂げられるようになったんです。まさか自分が、ビリーズブートキャンプを1年間続けられる人間になれるとは思ってもいませんでしたから(笑)。

―では旅の醍醐味とは?

石井 ひと言で言うなら「カタルシス」。ある種のロールプレイングゲームで、仲間が死んで消えていく瞬間だとか、そういうのって現実の日本の社会で生きていく上ではあんまりないですよね。不連続的に起こる出会いと別れ。一瞬の恋に落ちてしまったりね。あと、手足のない物乞いが自分の脚に絡みついてきたとき、どうするか!?とか。一瞬一瞬に凝縮されてカタルシスが存在しているんです。その経験の差って、人の魅力にも直結するし、それを感じることこそ旅の醍醐味でしょう。

さくら 石井さんの場合は、現地の人々に飛び込んでいくじゃないですか。僕はそれができないんですよ。そもそも自分を変えたくて旅をするようになったのに、相変わらず海外では現地の人に溶け込めず……。日本でバイト仲間とも仲良くなれない内弁慶な僕が全然知らないエチオピア人とすぐにフレンドリーになんてなれませんもん。まぁ、そういうことを悟れただけでも旅をしてよかったかなぁと。ある意味、「これが自分」と開き直れた部分もありましたし。

石井 それもひとつの「自分探し」かも。旅に行っても自分探しにはならないって意見もあるけど、僕はそうは思わないんだよね。さくらさんの場合、旅に行ったことでありのままの自分に直面できたわけで。僕だって海外に行くと、レストラン入ることさえおどおどしてしまう小さい自分に気づかされたりするし。怖いもんね。

さくら 石井さんも!? でも、わかります。中の様子見ながらレストランの周りを意味もなくうろついたり(笑)。

石井 結局、日本にいる分にはいろんなものが救ってくれてごまかせるけど、海外の見知らぬ土地では小さな自分を嫌でも凝視しないといけなくなる。そういう状況で自分の位置づけとか、何ができるのか、何をやらなければいけないのか……というところが見えてきたりもする。まさにそれこそ旅が教えてくれることだと思う。

さくら まぁ本音を言うと、みんなが海外行って本とか書き始めたら、僕の仕事なくなるんで。ハングリー精神ないままでいてもらったほうが、それはちょっと感謝なんですけど(苦笑)。

■石井光太(いしい・こうた)



1977年生まれ、東京都出身。2005年、『物乞う仏陀』(文春文庫)で鮮烈デビュー、イスラム世界での性に迫った『神の棄てた裸体』(新潮文庫)、『絶対貧困』(光文社)など、話題作を次々発表

■さくら剛(さくら・つよし)



1976年生まれ、静岡県出身。2006年、『インドなんて二度と行くか!ボケ!!…でもまた行きたいかも』(アルファポリス文庫)でデビュー。独特の笑いで人気シリーズ化する。最新作は『東南アジアなんて二度と行くかボケッ!…』(幻冬舎文庫)



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