脱原発デモの先に何が見えるのか? 作家、クリエーター・いとうせいこう「毎週金曜の晩、官邸前に本物の民主主義が立ち現れる」

週プレNEWS / 2012年8月19日 6時0分

いとうせいこう氏は「原発の再稼働にあたって国民の多くが肌感覚で“違う”と感じたことに実はすごく意味がある」と語る

「デモじゃ何も変わらない」という考え方が根強いなかで、人はなぜわざわざ毎週のように首相官邸前や、休日に開かれる大規模な集会に出かけるのか。そして、そこにどんな意味を見いだすのか。作家やクリエイターとして活躍する、いとうせいこう氏に話を聞いた。

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「デモなんかで政治が動くのか?」と揶揄する人たちがいますが、動く動かないにかかわらず、イヤなものはイヤだと声を上げる、それ自体が大事なことだと思います。日本が民主主義の国である以上、当然の振る舞いです。

しかし、われわれはデモをしたり声を発することが危険でカッコ悪いことだと洗脳されてきた。今回のデモはそこから解放され、国民が健全化するキッカケになるんじゃないかと。

まず、原発の再稼働にあたって国民の多くが肌感覚で「違う」と感じたことに実はすごく意味がある。それは専門家だけが物事を語っていいのかという問題と表裏です。専門家というのは必ずなんらかの利権に絡んでしまうので、まったく素人のほうが健全な議論ができる可能性がある。日本は民主主義を標榜しながら、意見形成が利権を持つ人だけの間で閉じた形で行なわれてきました。

そうした偽物の民主主義にNOを突きつけているのがデモであり、現時点でそれが非暴力的な手段であり得ているというのは非常に尊い。

僕は20~30人規模だった頃から見てきましたが、参加者の意識にはグラデーションがあり、反原発といっても主張はさまざま。でも、バラバラな意見を立場や年齢を超えてぶつけ合うのが本来の民主主義です。

もし意見があるのなら、ツイッターではなく、デモで直接意見を交換してみればいいと思います。開かれて語り合うことが素晴らしく、過去そんな場所は存在しなかった。ひょっとしたら、毎週金曜の晩の2時間だけ、官邸前に本物の民主主義が立ち現れているのかもしれません。

だから、デモの有用性に懐疑的な人も、一度でいいから足を運んで耳を傾けてほしい。どんな議論が交わされているのか、それを確かめてからでも否定は遅くないですから。

現在、アーティストや文化人も個人としてデモに参加しています。坂本龍一さんのスピーチも記憶に新しい。自分も含め、表現を生業とする者の果たす役割について考えると、そう多くはありません。内容はどうあれ、自分の意見を述べるのは悪いことではないというのを参加者に示す。まずそれが大事だと思います。

また、去年の話になりますが、僕も新宿で行なわれたデモで、DJと一緒に演説というかポエトリーリーディングをしました。実はそのとき一番心がけていたのは、参加者を刺激する以上に、周囲のやじ馬や警官隊が一瞬でも「正しい」と思うようなパフォーマンスをしようということ。意見の違う人に訴えかける芸、娯楽のようなものの必要も感じます。

単純に僕は、今後も人数が増えていくことを願いますし、この流れは止められないと思います。それをどう受け取るかは政治家次第ですが、すでに主催者たちに会談を申し入れたという話も聞いています。それだけでも、われわれはもう成果を得ていると考えるべきです。デモを通して、真に地肩の強い民主主義が生まれ直すことを祈ります。

(撮影/井上太郎)

■いとう せいこう



1961年生まれ、東京都出身。編集者を経て、88年『ノーライフキング』で作家デビュー。近著に佐々木中との共著『BACK 2 BACK』。□□□(クチロロ)のメンバーとして、音楽活動も行なう

 



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