「自分が投げるときは金本さんに守ってほしい」投手たちが語る阪神・金本知憲の真実

週プレNEWS / 2012年9月26日 6時0分

チームの勝利よりも金本の連続出場記録が優先されていると批判されたこともある。だが、投手たちの声は違っていた

9月16日の巨人戦で、日本プロ野球歴代10位となる475本目の本塁打を放った阪神タイガースの金本知憲(かねもと・ともあき/44歳)。1492試合連続フルイニング出場の世界記録を保持する“鉄人”は、これで通算安打数の歴代7位、打点の同8位(9月24日現在)続き、打撃三部門すべてで歴代トップ10入り。名実ともに記録と記憶に残る名打者となった。

10月9日のDeNA戦(甲子園球場)で引退試合を予定している金本だが、けして順風満帆な21年間のプロ野球人生だったわけではない。1991年に東北福祉大学からドラフト4位で広島カープに入団したときには、まだ体の線も細く、一軍では通用するレベルではなかった。それから金本は、文字通り血のにじむような努力で打撃技術と鋼(はがね)の肉体を磨き、球界を代表するスラッガーに成長していったのだ。

そして2003年にFAで阪神に移籍すると、中心打者として2度のリーグ優勝をもたらした。それまで低迷した阪神を変えたのは、彼の勝負強いバッティングだけでなく、なによりその野球に対する真摯な姿勢だったという。スポーツ紙の阪神番記者が明かす。

「金本のおかげで阪神は戦う集団に生まれ変わりました。まず彼が、試合後も自主的に練習することに驚かされましたね。金本が活躍した試合はコメントが絶対に必要なので、遅くまで練習が終わるのを待たなければならなかった。今思えば、活躍した日に限って試合後の練習が長かったんです。いい感覚を忘れないようにするためだったんでしょう。

するとそのうち、ほかの選手も金本に倣(なら)って試合後に練習するようになった。われわれ記者も毎日、選手の練習が終わるのを待つのが当たり前になりましたが、最初はかなり戸惑いましたね(苦笑)」

ここ3年間は右肩の故障に悩まされ、その守備に対する批判の声も出るようになった。だが、チーム内での見方は違っていた。

「『正直、まともにスローイングできない金本さんより、若手のほうが無難な守備をしてくれるかもしれない。だけどあの必死なリハビリ姿を見たら、少なくとも自分が投げるときは、マジメに練習しない若手より金本さんに守ってほしい』。ある主力投手の言葉です。もちろん金本の守備に不満を持つ投手もいたとは思いますが、成績でメシを食っているプロ野球選手にそこまで言わしめる存在だったんです」(前出・阪神番記者)

似たような声は、ケガをするより何年も前、広島時代の投手陣からも上がっていたようだ。当時のチームメイトで野球解説者の高橋建氏はこう語る。

「うまい、へたではなく、必死で守ってくれる姿に何度も勇気づけられましたね。外野の頭を越されるような打球を打たれたときも、オレがもう少しうまかったら捕れたのに悪いな、と言ってくれたり、常にチームメイトを思いやる気持ちを口にしてくれた。

たった1歳上なのですが、チームでの存在感は絶大で、プレーはもちろんのこと、精神的支柱としてなくてはならない選手でした。広島を離れることが決まったあの日はすごく悲しかった。カープは今までに多くの選手をFAで失っていますが、球団にとって最大の損失は、間違いなく金本さんがいなくなったことでしょうね」

金本が引退しても、その精神は日本プロ野球に受け継がれていくことだろう。

(取材・文/コバタカヒト、日野和明、写真/益田佑一)

■週刊プレイボーイ41号「鉄人・金本は阪神タイガースの何を変えたのか?」より



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