“特殊漫画大統領”根本敬が、まさかの“人間宣言”?

週プレNEWS / 2012年10月16日 13時0分

「特殊漫画家として『ガロ』でデビューして三十数年、今回が一番迷走した本だね」と語る根本敬氏

「タバン」とは「茶房」と書く。韓国語で「喫茶店」のことだ。そして漫画家・作家の根本敬さんは『ディープ・コリア』などの韓国本も多い日本有数の韓国通だ。

ゆえに今回のインタビュー場所は東京・新大久保を選んでみたのだが、実は数年ぶりらしく韓流ブームの聖地のにぎわいに少し驚いていた。

「おれは韓国には詳しいっちゃ詳しいんだけど、韓流は今のところ守備範囲外でね」

しかしすぐさま海賊盤店を見つけ3枚1000円の韓流DVDを熱心にあさり始めたのは、怪しい昭和歌謡曲や韓国ロック、ポンチャックを三十数年発掘し続けてきた「幻の名盤解放同盟」でもある根本さんの本領を見せつけられた気がした。

―“超日常雑記”と銘打たれた新著『タバントーク』ですが、単なるコラム集・日記本ではなく、どこか妙な手触りですね。

「いやあ、実際ね、おれも特殊漫画家として『ガロ』でデビューして三十数年、今回が一番迷走した本だね。本文の下段にぎっしり脚注があるのはいつもどおりだけど、その下段のほうが脚注というより本文みたいだったりで濃いんだよ。今回、文字にする意欲がなかなかわかなくてねえ、携帯メールやメモの走り書きを編集者に渡し、形にしてもらって、それを順序を逆にしたり張り合わせたりした。しかもさらにその本文・脚注の上段下段をおれが何度もひっくり返すわけさ。編集者には迷惑かけました」

―以前、漫画家・清水おさむ氏の作品『美しい人』に寄せた解説が再録されていますね。あれは、みうらじゅん氏が「解説で根本さんがいってることは世界一正しいと確信しています」と激賞した評論でした。

「ありがたい限りだねえ。おれはデビュー以来、一般人が見たら便所の落書きにしか見えない漫画を描き続けてきたわけさ。大手出版社から作品依頼があったらわざと『二度と発注が来ないような漫画を描いてやる!』って、逆に張り切ったり。オランダ人女性を殺して食べた“世紀の殺人犯”である佐川一政(いっせい)さんを全面擁護する本を出版したりね。

でもそんなおれが今回ばかりは『世間さまの正論』ってヤツにもっていかれそうになったんだよ。だからしゃべりをそのまま編集者に書いてもらったり、佐川さんからの電話内容をそのまま載っけたりした。この本は一見マニアックな特殊漫画家の日常雑記に見えて、実はデビュー以来一番迷走した、達成感のない本だよ」

―でも僕は清水さんの解説文はじめ、読んでいて何度か泣きました。「内田裕也さん断固支持!」「簡単に頭おかしくなるなよ」など、自分のような“世間のならず者”を励ましてくれてる気がして。

「それはさ、おれ自身を励ましてるの。実はすべての文章を自分に向けて書いてるから。

そりゃおれは絶対に心療内科なんか行かないし、霊や宗教も信じないよ。でも私生活の悩みから、脱け殻のように延々と地下鉄に乗り続けてたりとかはあったね」

―“特殊漫画大統領”で“サブカルの生き神様”のような、あの根本敬が……。

「だから! おれだって人間なんだよ」

―………はい。

「フフフ。でもまぁそんな混乱した自分をリミックスして本にでっち上げるのも『処世術』だから。どうか読者の方はいろいろ想像妄想して楽しく読んでください!」

(取材・文・撮影/藤井良樹)

●根本 敬(ねもと・けい/たかし)



1958年生まれ。“特殊漫画大統領”の呼称で知られる漫画家、作家。JFN『新ドントパスミーバイ』のDJも務める。著書は『豚小屋発犬小屋行き』(青林堂)、『因果鉄道の旅』(KKベストセラーズ)など多数

『タバントーク』



著者/根本 敬



青林工藝舎 1260円



感涙の名文から妄想まで。HPの雑談コーナー、日記コーナー、メモ、走り書き、メールなどをリミックスした特殊漫画家最狂の超日常雑記!









【関連ニュース】

週プレNEWS

トピックスRSS

ランキング