中国に日本の知的財産権を守る「ニセモノバスターズ」がいた

週プレNEWS / 2012年10月16日 17時0分

「ニセモノバスターズ」が生産拠点と同時に販売店を急襲! 突然の摘発に、中国人店員たちも脱力感を隠せない様子だ

10月8日、日中両政府が今月下旬に中国・杭州市で開催を予定していた知的財産権保護に関する定例協議が、「諸般の事情」を理由に延期されることが中国政府から通告された。これは、尖閣諸島購入に踏み切った日本政府に対する対抗措置とみられている。

この協議は、模倣品や海賊版、インターネット上の不正ダウンロードなどの取締りにおける協力関係を構築するため、2009年から毎年秋に開催されていた。日本企業が中国で被(こうむ)る知的財産権侵害は、損失額にして年間10兆円以上ともいわれるなか、協議の停滞による影響は座視できない。

こうした状況にあって、中国で日本企業の知的財産権を守るべく活動する、日系調査会社が存在する。広東省広州市のアライジェンス コンサルタンツだ。同社は、企業からの依頼を受け、中国での模倣品の実態について調査し、当局の協力のもとに摘発までを行なう、日系企業としては中国唯一の「ニセモノバスターズ」だ。

模倣品の摘発は一筋縄ではいかない。ある一件では、同社はクライアントからの依頼を受けてから、約半年にわたる下積み調査を実施。模倣品を製造する工場を割り出してからは、労働者に扮した調査員を潜入させ、1ヵ月にわたる内偵調査も行なった。潜入した調査員は、その間に模倣品の生産量や納品先などの情報を収集。証拠がそろったところでようやく、工商局と公安局に摘発の実施を依頼した。

「知的財産権の侵害行為が横行する中国では、工商局や公安といった当局はマンパワー的な限界もあり、個別の案件に対して自主的に捜査や摘発に乗り出すことはまれ。そこで、模倣業者の特定と証拠の集積を行なった上で取締り当局に提出し、摘発へと動いてもらう手はずを整えることが私たちの仕事です」(同社代表の太田基寛氏)

模造品業者を相手にした業務には危険がつきものだ。太田氏によると、相手方の懐に潜り込んでの内偵調査がバレそうになったことも一度や二度ではなく、摘発の際は逆恨みした業者から「覚えておけよ」と脅されることもしばしばだという。太田氏自身も、摘発に同行した際、抵抗する業者に刃物を振り回されたこともあった。

そんな凶悪な輩も少なくない模倣品業者だが、地元では意外なことに一目置かれているということも少なくなく、摘発をより困難にする場合もあるという。

「模倣品業者といえ、地元では雇用創出という役割もあり、貴重な税収源でもある。調査の手が迫っていることを業者に通知されたりと、集落ぐるみで調査を妨害されることもよくあります」(太田氏)

しかも、太田氏によると、このところ中国でくすぶる反日感情が彼らの職務遂行にも影響を与えているという。

「日本企業の知的財産権侵害への対処について、中国当局の腰が重くなっているのを感じます。『なんで日本企業の権益を守るんだ?』というバッシングにさらされる危険性があるからでしょう」(太田氏)

尖閣諸島問題に端を発した日中の摩擦が、またひとつ日本経済に影を落としかねない事態を生んでいる。

(取材・文/牧野源、写真/アライジェンス コンサルタンツ)

■週刊プレイボーイ44号「中国発! “コピー犯罪”事情 追跡! ニセモノバスターズ!!」より



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