風営法は“善良な市民”の不安をつぶすための法律だ

週プレNEWS / 2012年10月23日 13時0分

風俗事情に詳しいライターの松沢呉一氏は、「クラブの摘発が進めば文化として終わる」と語る

ここ数年、目に見えて厳しくなっている警察によるクラブ摘発。そもそもクラブを取り締まるための“風営法”はいつできたのか? 風俗文化研究の第一人者である松沢呉一氏が、風営法と日本文化の“根深い”関係について語る。

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風営法の歴史は古く、大正期に起こったダンスブームに対する規制に端を発します。具体的には、上流階級の息子がダンスホールで出会った街の娘と駆け落ちし、それをいぶかった息子の家族が親しい警視総監に捜査を依頼したことが直接のキッカケです。

背景には、ダンスホールが保守層にとって「何やらワケのわからない怖い場所」だったという点があります。今でもネットを過剰に恐れる年配がいますが、感覚的にはそれと一緒。規制される対象を知る者からすればばかげた話なわけですが、それが結果的に戦後の風営法につながっていくわけです。

戦後すぐ、1948年に「風俗営業取締法」が成立した時点で風営法には“売春防止”というお題目があり、59年の「風俗営業等取締法」への改正で“青少年に及ぼす悪影響を防止する”という目的が加わった。その後は84年、98年、2005年と改正があり、それぞれ一例を挙げれば、のぞき部屋、カップル喫茶、有店舗型デリヘルなど時代に応じて現れた営業形態への規制がかけられてきました。

ただ、変遷はあるものの、俯瞰すると、いずれの時代でも基本的に風営法は警察や保守層にとっての“得体の知れない不安”をつぶすための法律だといえます。「不良が集まるあんな場所に、ウチの息子が出入りしたら怖い」という善良な市民の不安が醸成されている対象を、警察が都合よく摘発するための法律と言い換えてもいい。

性風俗に関していうと、04年に始まった歌舞伎町の浄化作戦で、店舗型風俗は徹底的に摘発されました。しかしその結果、本当に街の浄化が進んだかといえば、違う。性風俗は無店舗型デリヘルを中心に地下化し、犯罪は悪質化した。通報されにくいだけで、実際はかなり事件が起きている。結局“見えなくなった”だけの話なんです。

では、クラブも摘発を進めれば地下化するのか? おそらく、そこまでして踊りたい人間は一部。利用者は現行の風営法にかなう大バコに流れていくでしょう。ただ、文化としては終わる。性風俗と共通するのは、抵抗の声が上がりづらい業種だということです。

とはいえ、今後、風営法による摘発対象は飲食などの他業種にも拡大していく可能性があります。対岸の火事が気づいたら足元に……そうなる前に、風営法の妥当性、法改正の方向を含め、議論が必要な時期にきていると思います。

(取材・文/九龍ジョー)

●松沢呉一(まつざわ・くれいち)



1958年生まれ。ライター。著書に『エロスの原風景江戸時代~昭和50年代後半のエロ出版史』などがある。風俗のフィールドワークを得意とする



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