ソフトバンク、米ケータイ3位買収もユーザーに利点なし?

週プレNEWS / 2012年10月27日 11時0分

ソフトバンク(SB)が、アメリカの携帯電話キャリア3位のスプリント・ネクステル(SN)を約201億ドル(約1・57兆円)で買収すると発表した。両社を合わせた累計加入者数は約9600万人、売上高は2.5兆円で、国内1位のNTTドコモを抜き去ったばかりか、世界3位の通信事業者が誕生したことになる。

SBは、なぜ今回の大型買収に踏み切ったのか? 携帯電話ライターの佐野正弘氏はこう見る。

「SBは、常に成長し続けて自社の株価を高く保つことで成り立っている企業です。しかし、日本の携帯電話市場はもはや飽和状態で、今後の大幅な収入増は望めない。そこで新たな成長の起爆剤として、投資元を探していたSNに目をつけたというところでしょう」

また、ジャーナリストの石川温(つつむ)氏はiPhone5の登場も一因だと考えている。

「KDDI(au)版の5はテザリングができ、つながりやすいとあって、現在のSBはauにどんどんユーザーを取られている状態です。そこで今後は、約9600万人というユーザーの絶対数を大々的に打ち出していくことで『ドコモやauを相手にした契約数競争の苦戦など大したことではない』と世間にアピールする狙いもあるのでは」

ただ、アメリカの携帯電話市場ではAT&T、ベライゾン・ワイヤレスという二大キャリアが強力で、契約者数が頭打ちのSNはこのところ赤字続きだった。そんな不採算事業を立て直し、収益を上げることは果たして可能なのか?

「相当に厳しいでしょう。日本の携帯市場でSBが躍進したのは、『ホワイトプラン』という低価格戦略と、iPhoneを当初独占的に販売できたことが大きな原因です。しかし、アメリカにはすでに前払い制の安い料金プランが存在しています。また、SNはiPhoneを扱っていますが、それはAT&Tやベライゾンも同じ。つまり、SBが日本でやってきた手法では、アメリカのユーザーを引きつけることができないのです」(石川氏)

また、SNはシェア拡大のための起死回生策として、次世代高速通信規格であるLTEのネットワークを全米に構築していくとみられているが、実現はそう簡単なことではない。

「とにかくアメリカは国土が広い。ネットワークの構築には時間がかかるし、コスト的にも今回の買収でSNに渡った金額だけで足りるかどうか」(石川氏)

その上、日本のSBユーザーがSN買収によって何か恩恵を受けられるのかといえば、これまた疑問符がつくらしいのだ。

「アップルが大口仕入れ先であるSB・SN連合へiPhoneを優先的に出荷するということは起こるかもしれません。在庫がないためユーザーがiPhone入手を待たされるといった事態がなくなるわけです。でも、逆にそれ以外で、ユーザーにどんな好影響があるのか……」(佐野氏)

「スケールメリットで調達コストを抑えられるため、SB・SN連合で扱う一部のAndroidスマホの価格が下がることは将来的にあり得るでしょうが、そのほかの面でSBユーザーが受ける恩恵はあまりなさそう」(石川氏)

それどころか、SN買収に費やした金額の大きさは、SBユーザーが抱えてきた不満に火をつけたともいえるのだ。

「1.6兆円近くの金を外国のキャリアに突っ込む余裕があるのに、なぜ、いつまでたってもつながりにくいままなんだという批判は当然起こるでしょう。もし、12月に予定されているSB版5のテザリング解禁時に何かトラブルでも起こったら、ユーザーのフラストレーションが一気に爆発する恐れもあります」(石川氏)

投じた金額の割には、得られるリターンの少なそうな今回の買収劇。果たして、SBはどこへ行こうとしているのか?



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