加藤嘉一「オバマの最大の武器ともいえる“人間力”の神髄を見ました」

週プレNEWS / 2012年10月29日 13時0分

アメリカは今、大統領選挙一色です。メディアでは接戦が伝えられますが、ぼくは両候補の“人間力”に着目しています。ある意味ではオバマの最大の武器ともいえる“人間力”の神髄を見ました!







11月6日、アメリカの大統領選挙が行なわれます。現職で民主党のバラク・オバマ大統領と、共和党のミット・ロムニー氏のどちらが勝つか。今後の世界情勢を占う意味でも重要なイベントです。

ぼくは8月末からアメリカに来ていますが、一般市民の表情からも高揚感をビンビン感じます。この時期に現地で選挙をめぐる攻防を体感できることは幸せです。

9月6日、ぼくが仕事をしているハーバード大学ケネディスクールの大ホールで、オバマ大統領の指名受諾演説をライブ中継で見ました。

その2日前に登壇したミシェル夫人は、夫の生い立ちや家族について語った後、「夫は公平に政権運営をしてきた。その姿勢は大統領になる前から変わらない」と言い切りました。普段はあまり表に出ない夫人ですが、ここ一番の演説力はオバマをしのぐほど素晴らしかった。

そして、ビル・クリントン元大統領とジョー・バイデン副大統領がオバマの経済政策を擁護し、ロムニーを厳しく批判して脇を固めたところで、ついにオバマの登場です。

「われわれの挑戦は結果を出せる。われわれが提示する道のほうが厳しいかもしれないが、よりよい場所に続いている。そんな未来を選ぶようあなた方にお願いする」

見ていて「カッコいい」と思わせるオーラが彼にはあった。その存在感は圧倒的で、200人ほどの学生たちの間で自然に“オバマコール”が発生したほど。やっぱり最後はヒトとしてどう表現し、ヒトとしてどう感じるかなんだなと、政治の神髄を垣間見た気がします。

野党だから言いたい放題なのは当然ですが、ロムニー氏のスピーチはオバマ批判ばかりで、見苦しいと思ってしまう場面もありました。対照的に、オバマ自身は無闇にロムニーを批判しようとしない。ルックスや人間性にも清潔感がある。民衆はそういう部分にこそ敏感なのではないかと感じました。

9月下旬には、ケネディスクールでアメリカ大統領選挙に関する授業を見学しました。「オバマとロムニーのどちらに投票するか?」という質問に対し、学生の7割はオバマ、2割はロムニー、1割はどちらでもないと回答。「どちらが勝つと思うか?」という質問ではオバマが9割、ロムニーが1割でした。

また最近、アメリカでよく語られているのが、オバマの経済政策と第二次世界大戦前にフランクリン・ルーズベルトがとったニューディール政策との比較です。

ニューディール政策は、世界大恐慌からアメリカ経済が立ち直りかけた時期だったからこそ成功した。逆に、政権発足当初からリーマン・ショックのドン底が続く中で、オバマはよくやってきた。大いに評価すべきだ。そんな声が聞かれます。

ただし、10月3日のオバマ対ロムニーの公開討論会後に「一部の調査でロムニーの支持率がオバマを上回った」と報道されるなど、メディアは接戦を煽っています。確かに、3回あるうちの最初のディベートは、どう見てもロムニーの圧勝でした。オバマはらしくないほど神経質になっていて、人間力を発揮できていなかった。受けて立つ側のプレッシャーもあったのでしょう。果たして選挙の行方はどうなるでしょうか?

ぼくはよく「この選挙を日本や中国はどう見ればいいのか」と質問されます。オバマにしてもロムニーにしても、いざ政権運営となれば、中国を敵対視するような政策は取れないでしょう。

だからこそ、日本としてはアメリカの動向を気にしすぎるより、戦略にのっとった自立の道を歩むことが先決。なぜ世界第3位の経済大国が、他国の一挙手一投足に振り回されてしまうのか……逆に教えて!!

今週のひと言



オバマはロムニーを無闇に批判しない。



民衆はそういう点にこそ敏感です!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)



日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年静岡県生まれ。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。現在はハーバード大学ケネディスクールフェロー。中国でのブログは7000万アクセス、中国版ツイッターのフォロワー数は160万人を突破。10月26日、本連載をもとに書き下ろしを加えて再構成した『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)が発売!



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