立ち入り解禁は半年前。福島県南相馬市の現状は?

週プレNEWS / 2012年11月5日 10時0分

南相馬市小高区では、津波にのみ込まれた車が現在もそのままの状態で放置されている

いま、被災地はどうなっているのか。復興は、どこまで進んでいるのか。本誌ボランティア班は悪天候のなか、福島県南相馬市を訪ねた。そこで見た、リアルな現状とは?

■4月に立ち入り解禁になったばかり

早朝、激しい雨音で目を覚ます。福島県南相馬(みなみそうま)市のビジネスホテルは叩きつけるような豪雨に包まれていた。テレビの天気予報では、大雨・洪水・強風・雷・波浪注意報が発令中だとキャスターが注意を呼びかけていた。「大雨、洪水……」と指折り数えてみる。もう1本折れればハネマンだ。

9時、「福興浜団(ふっこうはまだん)」に参加する小山亘さんと合流する。福興浜団とは、南相馬市原町区萱浜(かいばま)の青年団を母体として誕生した、市沿岸部の復興支援活動を行なっているボランティア団体だ。今回、週プレは原町区の隣の小高(おだか)区で行なわれる浜団の作業に参加しつつ、現地の状況をレポートする。

小高区は、いわゆる「福島第一原発の警戒区域20km圏内」に地域の大半が含まれていたが、今年4月に警戒区域から外されたという経緯がある。そこで、この地の住民がいつ戻ってきてもいいように草刈りをしたり、側溝や住宅の床下にたまっている海砂をかき出したりする必要があるのだという。

こうした状況である以上、避けては通れないのが放射線量。この日の放射線量は小高区役所前で毎時0.16マイクロシーベルト、小高区団第三分団第10部屯所前で毎時0.36マイクロシーベルトだった(10月3日付『福島民報』より)。

専門家によれば、「100ミリシーベルト(10万マイクロシーベルト)を超えるとがんになる人が数%増加する危険性がある」ともいうが、毎時0.36マイクロシーベルトの地域ならば仮に1年間、裸で突っ立っていたとしても、その被曝量は単純計算で3153マイクロシーベルトまで。

もっとも、この数値は地上1mのモニタリングポストでの計測であり、落ち葉の吹きだまりなどでは、もっと高い数値が出る可能性はある。

「安全だ」「安全ではない」の二元論で考えても意味がない。だからこそ、正確な知識と最新の情報を持つボランティア団体とともに行動して、リスクに見合った危機意識を持つことが重要なのだ。



■雨の中、黙々とがれきを拾う

天候は回復せず、ハードな肉体労働が予想される小高区での作業は延期。福興浜団の本部でもあるリーダーの上野敬幸さん宅近くでがれき拾いをすることになった。

作業内容は、かつて畑だった場所の土を鋤(すき)などで引っかいて、地表に出てきたガラスや瀬戸物などのかけらを拾い集めるというものだ。

悪天候にもかかわらず、いつの間にか20人以上のボランティアが集まり、黙々とがれきを拾う。瓦や鏡のかけらに交じって、貝殻が出てくる。海など見えないこんな場所にまで津波はやってきたのだ。それも人間の背丈以上の高波が。残骸はみんな数cmの大きさで、津波がミキサーのようにすべてを破壊したことを物語る。

かがめていた腰を伸ばし、深呼吸する。あたりを見渡すと、隣の区画にも、その向こうの区画にも、そのまた向こうの区画にも、トタン屋根の手作りの祭壇が置かれているのが見える。供えられた花が雨に打たれて、うなだれている。

雨はさらに勢いを増し、がれき拾いの作業も午前中で打ち切られることになった。借りていた鋤を軽トラの荷台に返しながら、福興浜団の蔵田剛さんに挨拶する。

「がれきが片づいたら、ここには菜種を植えたいんですよね」と蔵田さんはにこやかに言う。

菜種とは、少し意外な気がした。蔵田さんが言葉を続ける。

「作物を植えると、出荷する気か、という方もいますから。でも、何も植えないと畑は死んでしまいますからね。

震災前の写真を見ると、ここは一面の菜種畑だったんです。春になったら、ぜひまたいらしてください。きっと満開できれいですよ」

最後までニコニコしながら蔵田さんは言った。

遠くから歓声が聞こえる。泥はねで汚れた手足を洗っていた若いボランティアたちが、ホースの水の冷たさに大きな声を上げているのだ。その姿をリーダーの上野さんはじめ福興浜団のメンバーが目を細めて見守っている。そこにはたくさんの笑顔があり、たくさんの笑い声があった。

(取材・文/逸村弘美 島田文昭 小林奈津子 撮影/倉田真琴)

■福興浜団ボランティア情報



「そこで人が亡くなっていることを忘れずに。気持ちの丁寧さがいちばん大事。Twitterでの情報拡散や、物資や支援金の寄付などの後方支援も助かります」と福興浜団の小山さん。12月24日までの土日祝日に、小高地区での活動がある。【www.facebook.com/fukkouhamadan】



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