富士山噴火による火山灰が都市機能を無力化する

週プレNEWS / 2012年11月14日 13時0分

1707年の宝永大噴火の際には、神奈川西部で10cm、東京・千葉全域でも2cmが積もったという。当時より今のほうが被害は大きくなるだろう

富士山火災の際に山麓周辺で予想される災害規模を地図化した「富士山ハザードマップ」。だが、その想定は甘すぎるとの声が上がっており(「今の『富士山ハザードマップ』は想定が甘すぎる?」http://wpb.shueisha.co.jp/2012/11/06/15181/)、実際に富士山大噴火が起こった場合に東京・千葉、埼玉、神奈川の首都圏にまで飛散すると予測されている火山灰量と被害規模は、ハザードマップの倍以上に達する危険性があるという。

仮に今の季節に富士山が噴火した場合、東京23区内には約2時間後からハラハラと灰が降りだす。しかし、その前に噴火の強い衝撃波が2分ほどで首都圏に達し、富士山がよく見える西向きの窓ガラスなどは破損する危険もあり、その衝撃がパニックの引き金にもなりかねない。

時間がたつほど降灰量は増え、もう止まらないのかと不安になるほど降り続けるが、たぶん実際に止まらない。その降灰の正体は本物の灰ではなく、約1000度のマグマが瞬間的に発泡して粉末化したガラス質だ。硬度は高く、目に入るとチクチク痛む。また、量が増すほど重くなる異常な性質を持ち、片手にひと盛りで鶏卵ほどの重量感になる。もし雨でも降れば重さはさらに増し、傘の上に1~2㎜の厚さで積もれば片手では持てなくなるだろう。これが木造家屋の屋根や電線上などに溜まったままになれば、倒壊・断線の危険性も高い。

また、アスファルト路面に2cm以上積もると車はスリップし始め、時速10~20キロでの走行が限界になるが、その前にフロント視界が遮られて「グリッドロック」と呼ばれる超渋滞が発生する。当然、高速道路も降灰が始まって数時間で全面閉鎖。雨が降った場合、雪と違い溶けることもないばかりか重量が増し、下水道を詰まらせる原因になる。

灰の粒径に話を戻すと、富士山から100km離れた東京などにはパウダー状の微粉末が舞い降り、建物内や地下空間に退避しても厳重密閉しなければ数日間で侵入してくる。よく指摘されるように、この火山灰微粉末がパソコンや精密電気機器内部に入り込んで、日常生活と都市機能全般をマヒさせる可能性は非常に高い。なぜなら、ガラス質でも成分によっては電気を通す性質があるからだ。

飲食物に少々の灰が混入してもすぐには健康被害に結びつくことはないが、老若男女を問わず呼吸器官の障害は日を追って強まっていく。また、降灰の障害で通電が大幅に制限されるか長時間の停電が起きるのは確実で、日中の降灰量が多いと夜並みの暗さになる。そして首都圏住民が体力的にも精神的にも消耗しきったところへ、巨大地震が襲いかかれば……。

数cm降り積もっただけで、とてつもない被害が日常生活に発生する火山灰の恐怖。長期の停電、コンピューター障害、交通網の寸断、上下水道ストップ……本当は地震や津波以上に、火山灰が一番怖いのかもしれない。

(取材・文/本誌“富士山を調べ続けて30年”取材班 撮影/五十嵐和博)



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