富士山を消滅させる「山体崩壊」とは?

週プレNEWS / 2012年11月22日 13時0分

富士山噴火に伴って起きるいくつもの大災害のうちのひとつが、コニーデ式の山体に宿命づけられた「山体崩壊」だ

8月21日に開かれた静岡県防災・原子力学術会議の地震・火山対策分科会で、こんな報告がされていた。もし地震やマグマの噴出によって富士山が「山体崩壊」すれば、約40万人が被災する可能性がある――。

いったい、それだけの被害をもたらす「山体崩壊」とは何なのか。富士山大噴火をシミュレーションし、この山体崩壊と山頂付近に積もった高温堆積物が山麓めがけて駆け下る「岩屑(がんせつ)なだれ」を物語の重要ポイントに据えている小説『富士覚醒』(講談社)の著者・石黒耀氏は、こう説明する。

「遠目にはどっしりと安定して見える富士山は、実際には無理やりに継ぎ足しを重ねた砂礫(されき)の塊同然なのです。斜面によっては頑丈な岩山のように錯覚される部分もありますが、実際には大して厚い岩盤ではなく、細かい噴出物層の上に流出溶岩が板状に固まった非常に不安定なサンドイッチ構造になっています」

優美な姿とは裏腹に、富士山は微妙なバランスのうえに存在しているというのだ。

「そもそも円錐形構造の富士山は力学的に見ても今の高さが限界といわれ、ほんのつかの間、優美な姿を保っているにすぎません。1980年代から西側斜面の『大沢崩れ』が加速化し、西日本から離陸した飛行機上から眺めた富士山は、時間帯によっては光線の加減で完全なM字型の双子山に見えます。しかも火山活動の強まりでマグマの圧力による山体膨張が進み、加えて巨大地震の影響で、ますます亀裂や変形などのダメージが広がるでしょう。次の大噴火が近づいているなら、前回の宝永噴火で出現した山腹噴火口以上に、富士山の姿形は激変すると覚悟しておくべきです」

富士山と同じ円錐型の「コニーデ式火山」が、いともあっけなく大崩壊した例は数えきれない。日本国内では富士山貞観大噴火の約半世紀前に、会津磐梯山(元2千数百メートル)がその運命をたどった。また最近では、1980年5月にアメリカ・ワシントン州のセント・ヘレンズ山頂(元2950メートル)が噴火崩壊し、一夜にして500メートル低い双子山に化けた。

これらふたつの火山よりひと回りもふた回りも大きく育った富士山の場合は、当然ながら山体崩壊の規模もケタ違いに拡大するだろう。日本人は、この超巨大災害の進行をつねにシミュレーションしておく必要がある。

(取材・文/本誌“富士山を調べ続けて30年”取材班 撮影/五十嵐和博)



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