“北のKARA”こと「女性五重唱」に見る金正恩体制下の大変化

週プレNEWS / 2012年11月30日 12時0分

注目の美脚5人ユニット「女性五重唱」。名前など彼女たちのプロフィールは不明だ

YouTubeなどの動画サイトで静かなブーム。いやいや、韓国では大手新聞も取り上げるほどの社会的関心事なのだ。

“北のKARA”の登場だ!

今年7月、朝鮮中央テレビに女性5人のユニット「女性五重唱」が登場。その際に披露した『ペウジャ(学ぼう)』という曲がアップされているのだが、その姿が衝撃的だった。ミニスカートのワンピース姿の5人が美脚をあらわにし、歌い、踊る。曲の後半には美脚を駆使してのステップやソロパートもある。

韓国紙『東亞日報』(電子版)は、これを「胸のライン露出、10cmのヒール……北のガールズグループ、破格!(今までにない!)」と衝撃をもって報じた。

確かに、北朝鮮の歌手といえば、地味な衣装、直立不動の姿勢で合唱風に歌い続けているイメージが強かっただけにインパクトは十分だ。このグループ、いったいナニモノ?

韓国紙『中央日報』の北朝鮮担当、イ・ヨンジョン記者に聞いてみた。

「金正恩(キムジョンウン/第一書記)プロデュースで今年誕生した『牡丹峰(モランボン)楽団』からの派生ユニットのようなものですね。これまで北朝鮮には指導者の象徴的な楽団が存在してきました。古くは『普天堡(ポチョンボ)電子楽団』、金正日(キムジョンイル)時代からは『銀河水(ウナス)管弦楽団』など。娯楽の少ない北朝鮮では影響力の強い国民的アイドルです。今回の『牡丹峰楽団』から派生した女性五重唱のメンバーも全員、音楽大学などで専門的な教育を受けているはず」

この『ペウジャ』という曲では「学ぼう。学ぼう。私の国のために」というフレーズが繰り返される。その後、「時間は流れていくから後ろは振り返るまい。学んで、科学と技術を高めていこう。われわれ式の楽園を夢見ていこう」という内容の歌詞が続く。

そんな彼女たちの姿を見たら、脱北者はどう思うのだろう。韓国・ソウルを訪れた記者は、2008年9月まで北朝鮮の平壌(ピョンヤン)や平安北道(ビョンアンプクト)にいたという40代男性のKさんに感想を聞いてみた。

「これ、別に珍しくないですよ」

あれ!?

予想と違って冷静なリアクション……。熱烈なKARAヲタでもある記者は、白ワンピのコを「ジヨン」(KARAのメンバーのひとり)と呼ぶなどして盛り上がってたんですけど……。

「あー、そう。私は“赤ワンピ”派ですね。それはともかく、北の人には何も珍しくない。衣装、踊りともにね。歌い手はみんな新しい人になっていますが」(Kさん)

どういうこと?

「これまでテレビで放送された映像に、このレベルの露出度のものがなかっただけ。今までも普通の公演では脚や肩の露出はあった。つまり、北の一般市民はすでに見たことがあるレベル。外国人が知らないだけですね」(Kさん)

なるほど。「ただし」とKさんは続ける。この動画から北の内情をうかがい知れるというのだ。

「『ペウジャ』の原曲は10年以上も前に作られたもの。歌詞も同じで編曲だけが変わっている。つまり、リメイク版。だからこそ、なぜ今、この曲をリメイクして発表したのかということに注目すべきでしょう。この歌は“体制を礼賛する歌”ではありません。北のテレビで流れるほとんどの歌が『将軍さまをたたえよう』といった歌詞なのですが、この曲にはそうした表現はない。新しいリーダー(金正恩)の『少し体制の締めつけをゆるめつつ指導をしていきたい』という考えの表れに違いありません。テレビで流れることによって、海外にも変化が伝わることを意識しているはず」(Kさん)

実際、この『ペウジャ』は北朝鮮政府の海外向け公式ホームページ内でミュージックビデオも公開されている(本人たちの姿は映らず、勉学に励む学生がメイン)。

前出・『中央日報』のイ記者に今後の北朝鮮版K-POPについて聞いてみた。

「韓国に似た曲が出てくるか。この点は当然注目ポイントです。金正恩は海外の音楽事情にも詳しいはず。例えば、今年の夏からアメリカでも大流行した韓国人ラッパー、PSY(サイ)の『江南(カンナム)スタイル』のPVを見ているでしょう。兄の正哲(ジョンチョル)も音楽好きで知られ、海外留学時には洋楽のPVにもハマっていたといいますから。

少年時代に兄弟一緒に洋楽を楽しんでいたとしても不思議ではない。いずれにせよ、芸能から見える変化のシグナルは、北の内情をうかがい知るひとつのキーポイントですね」

次の曲にも注目する?

(取材・文/吉崎エイジーニョ)



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