日本から盗まれた文化財が、韓国の古美術業界で流通している

週プレNEWS / 2013年1月4日 13時0分

門前払いされながら韓国で取材を続け、ついに「高麗版大般若経」を盗んだ人物にたどり着いたという菅野朋子氏

日本の寺院から盗まれた文化財が、韓国の骨董業界で普通に流通していて、そのなかには韓国で国宝になったものすらある……。

『韓国窃盗ビジネスを追え 狙われる日本の「国宝」』は韓国在住のジャーナリスト・菅野朋子氏がこの韓国古美術界の闇に迫ったノンフィクションだ。

―長崎県の安国寺(あんこくじ)にあった「高麗版大般若経(こうらいばんだいはんにゃきょう」(重要文化財)が盗み出されたのが1994年で、その翌年、これに酷似した経典3巻が韓国政府から国宝指定されている。日本は調査を要請したけれど、韓国は協力しない。こんな異常なことが起きているんですね。

「盗み出されたお経のネガが文化庁にあるので、それと照合したら同一のものかわかるのですが、韓国政府は応じないですね。古美術業界の人の間では、あれは日本から盗み出したものだ、という暗黙の了解があるようです」

―韓国の文化財被害を捜査する警察官も古美術商も、悪びれてませんね。

「高麗は918年に建国された朝鮮半島の国です。『もともとは俺たちの宝なのに、勝手に略奪されて日本に渡った。だからいま取り戻して何が悪い』。そんな認識なんです。理屈としてはわからなくもないのですが、でも窃盗は犯罪でしょう。それに、日本で長い間、大切に保管されてきたこともまたひとつの歴史ですからね」

―韓国に高麗仏画はほとんど残ってないそうですが、それは韓国内でずっと大事に扱われてこなかったということですもんね。しかし、日本人の菅野さんが取材を進めるのは大変だったのでは。

「門前払いは当たり前だし、こちらに期待を持たせておいてはぐらかすとか、知らないフリをされて、その情報が韓国人記者に渡っていたこともありました」

―取材相手から、菅野さんがどんな立場で取材しているのか問われたとき、ちゃんと「盗み出されたものは日本に返ってくるべき」と答えていたそうですが。

「そこで『韓国に戻ってきて当然』なんて答えていたらたぶん相手にしてもらえなかったと思いますね。日本人は本音と建前を使い分けると思われてますから、ストレートに伝えたほうが信頼されるんです」

―そんななか、とうとう「高麗版大般若経」を盗んだ人物にたどり着きます。

「パッと見は普通のおじさんです。でも、女の人にはモテそうでしたね。彼は日本語上達のために、20歳以上年下の日本人女性を愛人にしますが、なるほどって感じです。でも、生い立ちを聞いていくと、なんとかして一発当ててやる、俺はこんなんじゃない、っていう悔しさが心の底にひたひたと流れてる人なんだと思いました。貧困層出身で、食べていくためにこの仕事を始めて、生活に余裕ができてから使命感が出てきたと言っていましたが、これは本音だろうと思いますね」

―彼は誰も傷つけずに盗みを働いています。

「それが自慢のようです。そのために準備と下見には時間をかけると言っていました。日本に盗みに入るために家を売り払ったこともあると。大学教授を超える見識を持っていると自分で言っていました。別のところにそのエネルギーを傾けていたら、きっとその分野でひとかどの人物になっていただろうと思いますね」

―今年10月にも対馬(つしま)のお寺からお経と仏像が盗まれる事件が起きましたね。防犯の甘い寺も多いし、韓国で億単位で売買されることもあると聞くと、日本の文化財が心配になります。

「日本で盗まれて行方不明になっている重要文化財は580点。この問題を知る人が少しでも増えたらうれしいです」

(撮影/高橋定敬)

●菅野朋子(かんの・ともこ)



1963年生まれ。中央大学文学部卒業、出版社勤務。その後、カナダの大学で韓国語を修得。韓国・延世大学付属語学堂に留学。『週刊文春』記者を経てフリーのノンフィクションライターに。現在、ソウル在住

『韓国窃盗ビジネスを追え 狙われる日本の「国宝」』



新潮社 1470円



日本から盗まれた文化財は、韓国の古美術業界で流通していた。大学教授、財界有力者までそこに加わって、闇のマーケットを形成している……。韓国在住の日本人ジャーナリストの苦闘の記録





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