パソコン遠隔操作事件で容疑者の逮捕前取材がエスカレートした理由

週プレNEWS / 2013年2月20日 17時0分

4人もの冤罪被害者を出したパソコンの遠隔操作事件だが、犯人逮捕の陰で一部メディアの過激な取材合戦が行なわれていたという

冤罪被害者を次々に生み出したパソコンの遠隔操作事件で、2月10日、東京都江東区在住の会社員・片山祐輔容疑者(30歳)が威力業務妨害容疑で逮捕された。

4人もの誤認逮捕を生んだ前代未聞のこの事件、片山容疑者は警察の調べに対して、「まったく事実ではない」と一貫して容疑を否認しているが、元警視庁刑事の北芝健氏はこう語る。

「逮捕直後から、片山容疑者の“素顔”が大々的に報じられた。これは警察が『片山が本ボシだ』と確信している証明でしょう」

確かに、今回の一件では、逮捕直後からテレビや新聞が「猫好き」「オタク風」「人付き合いが苦手」など、片山容疑者の素顔を事細かに報じていた。

だが、その一連の報道を受けて、ネット上を中心に次のような疑問や批判が盛り上がった。

【なぜ、逮捕前の容疑者の姿がカメラに収まっているのか?】

【警察によるマスコミへの情報提供(リーク)があったのでは?】

【そのリークがマスコミの過熱取材を招き、捜査に気づいた容疑者が証拠隠滅、逃亡、自殺を図ったら、どうするのか?】

実際、NHKなどは逮捕前日、都内の猫カフェでくつろぐ姿を“盗撮”するなど片山容疑者に猛接近している。

メディアが逮捕前の容疑者の姿をカメラに収めていて、それを逮捕後に公開するケースはよくあること。しかし、今回の事件の犯人はサイバー空間を自由自在に飛び回り、捜査網をかいくぐってきたツワモノだ。警察からのリークなく容疑者を特定するのは難しいはずだし、盗撮取材もインパクトは大きかったが、やりすぎな感も否めない。

元読売新聞社会部記者で、事件取材も豊富なジャーナリストの大谷昭宏氏はこう語る。

「通常、今回のようなケースで捜査側からのリークはあまり考えられません。例えば、陸山会事件では検察がマスコミに情報をリークしましたが、あれは世論誘導という明確な目的があった。今回は情報をリークしても捜査妨害につながるだけで、なんのメリットもありませんからね」

ちなみに、今回の一件は、容疑者が報道機関に犯行予告メールを送っており、各メディアが一次情報を持ち得た。さらに、年明けに送りつけてきたメールにも容疑者を想起させるヒントが多く含まれ、彼自身に逮捕歴まであった。

「それだけ情報があれば、リークなどなくても、メディアが容疑者を特定することは決して不可能ではない」(大谷氏)

だが、やはりというか、現場からはこんな声が聞こえてきた。

「いわゆる意図的なリークはありませんでしたが、ある捜査筋から、かなり有力な情報が聞き出せていたのは事実。もちろん、加えて入念な取材をして裏取りをするわけですが。ともかく、2月に入ってからは、複数の社が片山容疑者を特定し、徹底的にマークしていました」(某新聞社社会部記者)

捜査情報は漏れまくっていた!

そして、前述のNHKによる盗撮など各メディアの取材は日を追うごとに過激になり、最終的にはかなりバレバレの尾行をする記者もいたという。

「結果的には片山容疑者が驚くほど鈍感だったのが幸いした。逮捕前の数日間、警察は大胆すぎる一部の記者にかなりいら立っていた。おそらく警察からすれば、最後は片山容疑者との闘いではなく暴走するメディアとの闘いだったはず」(某新聞社社会部記者)

警察にとっては、まさに身から出たサビ。片山容疑者の身柄が無事確保となったからよかったものの、もし、それが一日でも遅くなっていたら、取り返しのつかないことになっていたかもしれない。

(取材・文/コバタカヒト、撮影/五十嵐和博)

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