ファストフード業界で“チキン戦争”勃発の理由

週プレNEWS / 2013年2月23日 7時0分

大手ファストフードチェーンでは、チキンを使った新メニューや期間限定メニューが次々と登場している

近頃、ファストフード業界では、鶏肉を使った新メニューや期間限定メニューがやたら目立つ。

昨年末に「チキンタツタ」を期間限定で復活させていたマクドナルドは、1月4日から「チキンマックナゲット」(5ピース)を190円に値下げし、モスバーガーはかつて人気の高かった「マスタードチキンバーガー」(360円)を1月29日から期間限定で再販開始。また、牛丼の吉野家が、昨年11月30日から販売している「焼鳥つくね丼」(並盛390円)が約1ヵ月で300万食を売り上げたと発表すれば、すき家も1月17日から「新とりそぼろ丼」(並盛280円)で勝負を仕掛けている。少しさかのぼるが、東京チカラめしも、昨年9月から「からあげ定食」(490円)を商品ラインアップに追加している。

そう、まさに“チキン戦争”の様相を呈しているのである! でも、なぜ今、鶏肉を使った商品が次々と登場しているのか?

日本フードアナリスト協会所属のフードアナリスト広報委員、重盛高雄氏は「各チェーンの主力の牛肉メニューが抱える問題が要因」だと語る。

「まず円安や穀物価格上昇の影響で、今年度の平均牛肉輸入価格は昨年度より6.8%も上昇。この2月から牛肉の輸入規制緩和がされていますが、輸入価格が劇的に下がることは考えにくく、コストアップにつながっています。ですから、利益率の低い牛肉メニューより、単価の安い鶏肉メニューに白羽の矢が立っている」(重盛氏)

さらに、牛肉メニューの人気失速という要因もあるという。

「各チェーンともに、最近は主力の牛肉メニューの売り上げがあまり芳(かんば)しくないのではと思います。売れてないわけではないが、主力として心もとないというのが正直なところでは」(重盛氏)

牛肉メニューの不振の原因は?

「もうずっと味のレベルがさほど変わっていないからでしょう。牛丼にしろ、ハンバーガーにしろ、変化球のトッピングやソースで目先を変えてきましたが、味での価値観を示せなくなってきています。マクドナルドが9年ぶりに減収減益になったというニュースが、それを物語っています」(重盛氏)

そんな背景があり、鶏肉メニューが躍進してきているのか。

もちろん、仕入れ価格の安さ以外にも鶏肉人気の理由はある。脂肪分が少なく、健康志向の消費者や女性客を取り込めるというわけだ。さらに、こんなメリットも。

「実は鶏肉は牛肉と比べてさまざまな調理方法に対応できる食材。つまり、味で価値観を示すことができる余地がまだまだあるんです。吉野家の『焼鳥つくね丼』がわかりやすい例ですが、焼き鳥とつくね、ふたつの食感と味を提供できていますよね。鶏肉は部位の種類が多く、さらに、煮たり、焼いたりといった調理方法の多様さなど、いろいろ工夫できるパフォーマンスのいい食材なんです」(重盛氏)

ファストフード店で使われている鶏肉は中国産やタイ産が大半だが、日本各地の地鶏ブームが起こったことも、鶏肉全体のイメージを向上させ、追い風となっているようだ。

しかし、牛肉よりも安い鶏肉を使ったメニューが、牛丼(すき家は並盛280円)やハンバーガー(マクドナルドは100円)より割高な価格設定なのはなぜ?

「価格だけでなく、味のクオリティや新しい味つけも求めるお客さんが増えているのではないでしょうか。これまでは牛肉メニューを安くしてお客さまにたくさん来てもらおうという戦略だったわけですが、安くしても客足が伸びなくなってきた。ただ、鶏肉であれば、調理方法の工夫次第で味を追求できますし、その“こだわり料”として商品単価を上げ、客数が減ってしまった分の売り上げ補填も見込めるわけです」(重盛氏)

鶏肉は今のニーズに合致しているわけだ。最後に今後のチキン戦争の行く末を占ってもらった。

「ますます過熱するでしょう。鶏肉を使えば、各社、差別化が図れますから、今後投入されるメニューは各チェーン店の腕の見せどころ。近いうちに、国内のブランド地鶏使用といったプレミア感の強い高級鶏肉メニューも登場すると予想しています」(重盛氏)

各チェーンが味で切磋琢磨した新・鶏肉メニューに期待しよう。

(取材・文/昌谷大介 武松佑季[A4studio])

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