中国大気汚染の元凶、PM2.5より怖い“PM1”とは?

週プレNEWS / 2013年2月26日 9時0分

中国の大気汚染の原因として話題の「PM2.5」が飛来している問題で、環境省は住民へ注意喚起するための暫定指針を専門家会合でまとめることを決めた。日本のドラッグストアなどでもPM2.5対策用のマスクが販売されるようになっており、事態は中国国内に留まらない問題に発展している。

しかも、これからの日本は花粉症の季節。大気汚染と花粉症のダブルパンチが日本人の健康をむしばんでいく可能性が高いのだ。東京アレルギー疾患研究所の牧野荘平所長がこう話す。

「今から30年ほど前、栃木県日光市のいろは坂を観光バスが列をつくって上っていた時代ですね。日光にはスギ並木があるのですが、いろは坂を上るバスの台数が増えると、周辺の花粉症の患者が増えた。見事に比例していたんですね。これは日光にある病院に勤める医師が10年間にわたって調査したもので、ディーゼルの排ガスと花粉症には相関関係があるということがわかりました」

排ガス規制や工場から出る煤煙の規制が徹底される前の日本でも、すでに大気汚染と花粉症には密接な関係があるということが研究されていたという。

「その後もさまざまな研究が行なわれていて、大気汚染と花粉は“複合汚染”を起こすということはもはや確定事項。しかも、患者は相乗的に増え、重症化する恐れがあります」(牧野所長)

その複合汚染による重症化について、埼玉大学大学院理工学研究科の王青躍(おう・せいよう)准教授(環境科学)が解説する。

「花粉と一緒に微小な炭素状粒子が一緒に体内に入ると、合併症のような症状が出ます。粒の小さい煤(すす)などは、簡単に呼吸器系の深部、肺胞まで入っていくので咳が出やすくなる。花粉症の鼻水だけでなく、気管支炎なども起こす。また、肺胞にまで入った炭素粒子は炎症を引き起こし、そして、粒子が付着した細胞は細胞死する危険性もある。細胞死とは、周りの細胞を守るために自分が死んでいくことですが、その量が増えれば、最悪の場合、肺がんになることもある」

PM2.5には黒い煤も含まれているが、その中にはベンゾピレンという発がん性物質そのものまで含まれている。実は、その煤はPM2.5には違いないが、粒子の大きさは2.5マイクロメートルよりもはるかに小さい0.1マイクロメートル以下。専門家の間では「PM1」と呼ばれているとか。

大分県立看護科学大学の市瀬孝道教授(環境毒性学)によると、PM1は「体内に吸入すると、血管などを壊して血流を変化させ、心筋梗塞などを起こす原因になるといわれています。実際に、大気汚染が激しいところでは、心血管疾患で死ぬ人が多い」という。

しかも、PM1はあまりの小ささから、マスクをしていても簡単に呼吸器系の深部にまで入り込んでしまう。それが発がん性物質まで含んでいるのだから怖い。

また、たとえ、がんにならなかったとしても、こうした汚染物質を吸い続けると、体は確実にダメージを受ける。

「閉塞性肺疾患といって、呼吸が苦しくなります。さらに、肺にぼこぼこ穴が開く肺気腫や、慢性気管支炎といったことが起こると考えられます。そうなると、呼吸が苦しくなり、絶えず酸素ボンベをつけていなければいけない状態になりますね。寝たきりになってしまう人もいます。実際、中国ではそういう患者さんが多いそうです」(市瀬氏)

日本でこれほど深刻な大気汚染が起こるとは考えにくいが、PM2.5やPM1は今後も偏西風に乗って日本にも降り注ぐ。いや、むしろ季節的にはこれからが本番。今まで以上の汚染物質飛来は確実なだけに、例年以上の注意が必要だ。

(取材・文/頓所直人)

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