立浪打撃コーチに聞く、侍ジャパン打線「復活」の“キーマン”と“戦略”

週プレNEWS / 2013年3月7日 12時0分

大げさな言葉は決して口にしないものの、 時折見せる鋭い眼光とその言動から確かな自信がうかがえた立浪和義打撃コーチ

WBC1次ラウンド最終戦、侍ジャパンはキューバを相手に六回まで毎回走者を出しながら1本が出ず、九回にようやく3点を返したものの反撃及ばず6-3で敗れた。

この結果、日本は1次ラウンド2位通過となり、2次ラウンド初戦でB組1位の台湾と対戦する。

1次ラウンドを通して露呈した得点力不足に対し、よく言われるのが「国際試合では大量点は期待できない」「足を絡めた“スモールボール”で1点を取りにいくべき」という指摘だ。安打数歴代7位、二塁打数歴代1位の記録を持つ侍ジャパンの最年少打撃コーチ、立浪和義の脳裏には、どのような得点イメージがあるのだろうか?

■「監督は『パンチじゃねーよ』っておっしゃってました(笑)」

「山本(浩二)監督はニコニコしていて、いつもいいお酒を飲んでおられますね。もう一杯、もう一杯って……輪を大切にされる方ですから、だいたいは首脳陣みんなが一緒です。自分は全然、お酒が飲めないのですが、物腰の柔らかいトークの梨田(昌孝)さんと豪快な東尾(修)さんがみんなを盛り上げてくれて……いや、ホントにこのスタッフは最高です。勝って、選手たちと喜びたいですね」

歴代7位の2480安打を放った“ミスター・ドラゴンズ”である。世が世なら、プレーヤーとして日の丸を背負っていたとしてもなんの不思議もない。

立浪和義、43歳―。

その立浪が、3連覇を目指すWBC日本代表のバッティングコーチとなった。選手ではなくコーチとして、日の丸を背負う気持ちとは、いかほどのものなのだろう。

「選手として日の丸をつけたのは、高校の全日本だけです。WBCは第1回も第2回も自分はメンバーから外れましたが、いずれも優勝して野球がものすごく注目されたことは、同じ野球人としてとてもうれしい出来事でした。あれほどWBCをメディアに取り上げてもらったことで、野球をしていない人にも興味を持ってもらえましたし、シーズンに入ってからも皆さんから応援していただいたという実感がありました。

何よりも日本がああやって世界で頑張ることで、子供たちがプロ野球選手に憧れてくれることが一番だと思うんです。だからこそ、頑張らないといけない。相当なプレッシャーのなかで野球をやることは、絶対に自分の財産にもなると思いますし、ユニフォームを脱いだときにも最後まで残るいい思い出になるんじゃないかなと思います」

立浪が現役を引退して3シーズンが過ぎた。稲葉篤紀(あつのり)は3つ下。選手たちとの年齢も近く、プレーヤー時代の感覚も失っていない。しかも選手兼任として中日のバッティングコーチも経験しており、山本監督も立浪の確かな打撃理論、選手とのパイプ役として、立浪には早々に声をかけていた。

「太い声で(笑)、電話をいただきました。その時点で監督就任は正式には決まってなかったんですけど、『もし決まったら手助けしてくれるか』と……もちろん断る理由はありませんし、正式に決まる前に声をかけていただいたということは、それなりにいろんなことを期待していただいているんだろうなという思いも感じました。ありがたいことですから、お願いしますとすぐにお返事しました。

監督は『早め早めの準備を怠らず、本大会を迎えたい』といつもおっしゃってます。本当は1月中に選手と一緒に食事をしながら触れ合って、みんなの考え方を理解したいと思っていたんですけど、キャンプの前にはみんな、いろんな所へ自主トレに出掛けたりしていて、なかなか実現できませんでした。それでも、そういうことを大事にされる監督だということは選手にも伝わっていると思います。監督はすごく気を使われる方です。本当に優しい。あとは、お酒が強い。それから、パンチパーマ。『これ、パンチパーマですか』って聞いたら、『パンチじゃねーよ』っておっしゃってました(笑)。

自分も今回のコーチ陣の中では一番年下ですし、現役として一緒に戦った選手がほとんどですから、いい意味で気持ちを楽にさせてあげられたらいいなと思っています。本当に大事な局面で打席に立ったとき、選手は誰の助けも得られません。まして、日の丸の重さだなんだと周りから言われますし、だからこそよけい、そうやって変にプレッシャーをかけてしまってはいい結果は出ないと思うんです。今回はコーチという立場ですから選手に頑張ってもらうしかないんですけど、そういう気持ちの部分でもサポートできればと考えてます」

■1ヵ月、ずっと調子がいい選手はいない

シンプルに考えるという、立浪の打撃理論。子供の頃から、いろいろなことを自分の中で考えて野球をやってきた立浪は、感覚を言葉に置き換える術(すべ)を知っている。だからこそ、選手たちの状態を把握し、適切なアドバイスもできる。

「バッティングコーチとしては、今のバッティングの状態であったり、体調を把握するのが一番大事な仕事になります。みんな日本代表に選ばれているほどですから、技術的にどうこうということはほとんどありません。ただ、バッティングというのは1ヵ月の間、ずっと調子がいいことって、ほとんどないんです。ですから短い間にバッティングの状態をどうやって上げていくか。いかに気分よく試合に出てもらえるか。そのためにそれぞれの選手のいいときの状態をこちらが把握して、この選手はここがいい、よかったときはもうちょっとこうなってた、始動が早かった、そういう適切なアドバイスができればいいなと思ってます。

個人的に期待しているのは、内川(聖一)選手です。彼はホームランを期待できる選手ではないんですけど。勝負強いバッティングが期待できます。ただでさえヒットを打てる確率は高いんですけど、ここぞという場面でのヒットが多い。それは、彼がヒットを打てるポイントをたくさん持っているからです。経験も実績もありますし、内川選手は必ず大事な打順を任されることになると思います。

内川選手、去年は調子がよくない時期があったんです。そのとき、タイミングの取り方が変わってるように見えたんですね。それまでは打ちにいくとき、トップの位置にパッと入ることができていたのに、バットをゆっくり引くようになったせいか、ボールが来てからすんなりトップの位置に入れることができなくなって、もう一度、バットを引こうとするよけいな動きが入っていたんです。

そのせいで始動が遅れて、苦しんでいた。それでも最終的には3割を打ったんですからホント、立派ですよね。右バッターで3割4分、5分を打てるのは、よっぽどの技術がある証なんですよ。ですから、そのことを本人に伝えたら、すぐに感覚を思い出したようで、そこを意識した練習をしています。センスのある選手ですから修正能力も高いし、自分は彼にものすごく期待してますよ」

それでも、誰もが口をそろえてこう言う。「国際試合では大量点は期待できない」「守りの野球が大切」「足を絡めた“スモールボール”で1点を取りにいく野球をしなければ勝てない」―立浪コーチが考える“点の取り方”はどのようなパターンなのだろう。

「僕が思うのは、やってくれるだろうという選手、坂本であったり阿部であったり、あるいは内川あたりは、普通に頑張ってくれれば何も問題ないんです。あとは、糸井や松田といった、爆発力のある選手たちが、出だしで乗っていけるかどうか。いいとき、勝ってるときはチームは自然と盛り上がります。でも負けた試合の次、元気を出してやってくれる人がいるかどうか。そこが大事になってきます。

とはいえ、そういうときに元気を出せる選手が打ってなければ、元気も出せなくなる。監督も常々、おっしゃっていますが、世間からは3連覇を期待されているけど、戦う側としては1次リーグの1試合目に照準を当てていくしかない。まずはそこに集中して、勝って、さあ、次だという状況になっていくんだと思います。だからこそ、その最初の試合で爆発力のある選手が打って、勢いに乗っていくことが重要になってくるんです」

1次リーグの初戦は3月2日、相手はブラジルだ。サッカーならともかく、野球でブラジルに負けるはずがないと思ってしまいがちだが、そこに落とし穴があると立浪コーチは言う。

「もちろん相手ピッチャーの球種や真っすぐのスピードは頭に入れておかなければなりませんが、自分が思うのは、そういうデータを意識しすぎてバットを振れなくなるのが一番怖いということです。ビデオで見るのと、打席に立ったときのタイミングって必ずしも一緒とは限りませんし、限られた実戦のなかでどんどん振っていって、タイミングを合わせてもらいたいなと思います。空振りを恐れず、早いカウントから積極的にいってくれということはこちらから伝えたいと思ってます。

探りを入れようとして変化球を待つと、始動が遅れてバッティングを崩したりしますし、とにかく積極的にセンター中心へ打ち返していくことを意識する。そのなかでとらえられるボールを振っていけば、配球は意識しないほうがいいと思うんです。まぁ、ベンチは祈りながら見てるしかありません。むしろ打席に立ったほうが楽なんじゃないかってよく言われますけど、自分は打席になんか立ちたくない。自分がヘタを打って負けるわけにはいかないって思っちゃいますからね(笑)」

(取材・文/石田雄太 撮影/小内慎司)

●立浪和義(たつなみ・かずよし)



1969年8月19日生まれ、大阪府出身。PL学園高から88 年ドラフト1位で中日に入団。1年目に新人王を獲得。03年には2000本安打を達成。08年から打撃コーチを兼任し、09年に現役引退。日本プロ野球歴代最多の487二塁打の記録も持つ。引退後は野球評論家として活動。今大会では最年少コーチとして、打撃コーチを務める

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