人類を滅亡させるカルバペネム耐性腸内細菌とは?

週プレNEWS / 2013年4月22日 9時0分

米疾病(しっぺい)対策センター(CDC)は3月5日、現在のところ最強の抗生物質とされているカルバペネムが効かない「カルバペネム耐性腸内細菌(CRE)」の院内感染が、全米の医療機関に広がっていると発表した。2012年上半期だけで約200の医療機関でこのCREの感染者が確認され、血流感染した患者の致死率は50%にも達するという。

CDCはこのデータを受けて、「医師や病院経営者、公衆衛生当局が力を合わせて『発見と予防』戦略を遂行し、感染拡大を食い止めなければならない」と、異例の警告をしている。

某外資系製薬会社で新薬開発研究に携わる技術者のS氏は、こう解説する。

「多くの病気の治療には抗生物質が使われますが、すべての菌を完全に殺せるわけではなく、生き残った菌の一部は抗生物質への耐性を備える。その意味では、あらゆる保菌者が治療を受ける病院は“耐性細菌のたまり場”のようなものです。こうした耐性菌が外に出て広まると、特定の抗生物質は無力化されます」

そのため、人類は耐性菌に対抗できる新たな抗生物質を常に開発し続けなければならない。

「つまり、人類は“イタチごっこ”を強いられるわけですが、問題は昨今の抗生物質の過剰投与によって、細菌が耐性を持つスピードが加速度的に上昇していること。CREの発生も、われわれの予想より2年ほど早かった」(S氏)

抗生物質にはカルバペネム系、ペニシリン系、ペネム系、セフェム系など10系統以上があるが、本当にヤバイのは、これらの“組み合わせ投与”の効果すら完全に消滅するという事態。世界保健機関(WHO)は昨年3月、耐性菌大繁殖による“現代医学の終わり”の到来を警告している。

「新種の抗生物質の開発には1000億円以上の投資が必要で、もし成功しても効果が何年維持できるかは未知数。それを覚悟の上で開発に乗り出せる製薬会社は世界でも数社しかないでしょう。医療の現場では、できるだけ抗生物質を使わず、耐性菌の発生を遅らせることしかできない」(S氏)

そこから、最悪の未来が予測できるとS氏は言う。

「このままいけば、1910年代末に全世界人口の約8%が死亡したともいわれるスペインかぜの悪夢が再現される可能性さえ否定できないのです」

今は病院で薬をもらえばすぐに治るような風邪や胃腸炎が、もしあらゆる抗生物質への耐性を備えたら……果たして人類は生き残ることができるのだろうか?

(取材・文/近兼拓史)

■週刊プレイボーイ18・19特大合併号「中国で恐怖のスーパー耐性菌が増殖中!!」より

週プレNEWS

トピックスRSS

ランキング