孤高の天才ギャグマンガ家・榎本俊二が育児コミックを描いたワケ

週プレNEWS / 2013年5月19日 6時0分

育児マンガでありながらエッジの効いた榎本イズムが健在の『榎本俊二のカリスマ育児』をはじめ、男性ギャグマンガ家の描く「子育てマンガ」がいま、花盛りだ

育児コミックといえば、東村アキコの『ママはテンパリスト』(集英社)に代表されるように“女性マンガ家の専売特許”と思っている人が多いかもしれない。しかし最近、吉田戦車、おおひなたごう、重野なおきにカラスヤサトシなど、人気・実力ともトップクラスの男性ギャグマンガ家たちが、軒並み育児コミックの世界に進出している。

そこで『GOLDEN LUCKY』や『えの素』などエッジの効いたギャグを世に送り続け、育児エッセイマンガ『榎本俊二のカリスマ育児』(秋田書店)も好評を博している榎本俊二氏に、育児コミックを描くワケを尋ねた。

「最初は妻(少女マンガ家の耕野裕子さん)に育児マンガの依頼があって、たまたまその隣にいた僕にも『ついでに描いてみませんか?』とお声がかかった。当初は単発のつもりだったんですけどね」

だが、作品は反響を呼び、掲載誌を移しながら今も連載を継続中だ。

「若い頃は“誰よりもキレていたい”願望というか、『マッドな狂気みたいなものを持ち続けていないとダメだ!』と思っていたんです。だから、ジミ・ヘンドリックスのようなカリスマに憧れを抱いていたんですが、あるとき、自分の手には届かない存在だとわかってしまって(笑)。だったら逆に、カリスマたちができなかった、学校や地域の行事に参加するとか、そこで初めて会った人に挨拶するとか、社会的に真っ当なことをしてやろうと思ったんです」(榎本氏)

とはいえ、ギャグマンガと育児マンガでは、生みの苦しみがまるで違うのではないか?

「まあ、どちらもネタが出るときは出るし、出ないときは出ない。同じくらいつらいんです。そういえば最初に『カリスマ育児』を出したときも、(同じギャグマンガ家の)おおひなたごうから『なまくらになって』と言われたんですよ。その時点では、僕の作品を読んでいなかったんでしょう(笑)。読めば、いわゆるエッセイマンガとは違うことがわかったと思うんです。例えば、既存の育児エッセイマンガはモノローグ(独白)で多くの心情を語ることが多いですが、僕の場合はそれを一切なくして、作品にテンポと勢いを持たせています」(榎本氏)

既存のジャンルのセオリーを破壊し、一気に領域を広げていくところは、男性ギャグ作家にしか描けないものかもしれない。

「育児マンガとシュールな創作もの、両極端な作品を並行して描いていると、『角が取れたと思われたくない』という思いから、創作もののクレイジー度もどんどん上がっていくんです」(榎本氏)

稀代のギャグ作家にとって、育児コミックを描くことは、ギャグのキレも増す相乗効果を生んでいるようだ。

(取材・文/山脇麻生)

■週刊プレイボーイ21号「なぜギャグマンガ家は『育児マンガ』に走るのか?」より

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