なぜ男性ギャグマンガ家は育児コミックに走るのか?

週プレNEWS / 2013年5月22日 6時0分

シュールな作風で知られるおおひなたごう氏は、子供との遊びをテーマに描いた『コアソビー』を発表。女性マンガ誌で連載されていたため、子を持つ親の共感を呼ぶネタも多い

榎本俊二、吉田戦車、おおひなたごう、重野なおきといった人気ギャグマンガ家たちが近年、続々と「子育てエッセイマンガ」を発表している。果たして、その理由とは?

今年2月に育児マンガ『コアソビー』(集英社)の単行本が発売された、おおひなたごう氏が語る。

「なんというか以前は、起きたことをそのまま描くのはゼロからモノを作るより簡単だろうと思っていて。そっちで売れちゃったら戻ってこれなくなるかもという恐れから、育児マンガというよりエッセイマンガにはあえて手を出さなかったんです。けど、エッセイマンガにもいろんな種類が増えてきたし、とりたてて何もないことを描いていて面白いというのは、実は(創作の)現場ですごいことが行なわれているように思えてきたんです。それから『自分も描いてもいいかな』という心境に移行していった感じですね」

では、当初の「ゼロからモノを作るより簡単」という推測は当たっていたのか?

「ネタ出し自体はゼロからの創作よりラクでした。子供が常に面白いことをするので、連載と並行して子供ネタを4コマにしてツイッターで発表していたほど。今は忙しくて、ツイッター自体やめてしまいましたけど……。ただ、編集者から『もっと、おおひなたさんらしいシュールなネタを入れてくださいよ』と言われたんですが、実際に起きたことのなかにネタを入れ込むのが難しくて、かなり悩みました」

現在、『モーニング』で連載中の『ラティーノ?』に代表されるような、シュールな世界観を持つおおひなた氏。リアルな内容の作品にも既存のイメージを求められてしまうという、作家側も想像しなかった苦労があったようだ。

さらに、2006年に『よんこまのこ』(竹書房)の連載を開始した、人気4コママンガ家の重野なおき氏にも話を聞いた。

「正直、ネタのタネがあるので、育児マンガのほうがネタ出しはラクですね。ただし、見せ方の工夫は育児もののほうが気を使います。親にとっては面白くても、第三者にとっては『ふーん』で終わってしまうこともありますし、4コマなので、どう面白いのかが瞬時に他人に伝わるかどうかがポイント。その上で、ボツにしてしまったネタも多々ありますよ」

育児マンガ専門のウェブサイト『すくパラ倶楽部』を運営する竹書房の星野信夫氏は、こう分析する。

「女性作家は四六時中子供と接しているので、いい意味で作品に生活臭があるんですよね。だからこそ、読者がシンパシーを抱くワケですが、一方の男性作家は『面白いことを商売にしている人は、ここを拾ってくるか!!』というシーンを切り取ってきます。創作ネタのときより相当ハードルを上げて、ネタを精査しているんじゃないでしょうか」

前出の重野氏も、自らにこんなルールを課しているという。

「女性作家が描く育児マンガは大変さを描き、共感を呼ぶタイプの作品が多い。けれど自分は、子育てに関してカミさん(同じく4コママンガ家の藤島じゅんさん)ほど苦労しているワケではないし、その分、子育てを客観視しているんです。ですから感動話やしんみりした話は描かず、実際には大変だったことでも、笑い飛ばすか楽しいオチをつけるようにしています。そこに関しては、連載初回から決めていました」

ともすれば単なる内輪ネタになりかねないネタを、笑いに昇華させる男性ギャグ作家たち。彼らも、さまざまな思いを胸に育児マンガを描いているのだ。

(取材・文・撮影/山脇麻生)

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