アメリカの「シェールガス輸出解禁」で何が変わる?

週プレNEWS / 2013年5月30日 9時0分

世界のエネルギー事情を一変させた「シェール革命」。その先頭を突っ走るアメリカが、シェールガスの対日輸出を解禁した。

石油天然ガス・金属鉱物資源機構の上席研究員、伊原賢(まさる)氏が語る。

「日本は東日本大震災後からアメリカに輸出解禁を要請していたが、それが認められた形。4年後の2017年にアメリカ産シェールガスの対日輸出が始まります」

輸出解禁は日本にとっての悲願だった。伊原氏がこう続ける。

「現在、アメリカの天然ガスの購入価格が100万BTU当たり4ドル台であるのに対し、日本はその4倍超の約16ドル。イギリス(約8ドル)と比較しても倍以上です。震災後に原発を停止し、その代替燃料としてLNG(液化天然ガス)を大幅に増やした日本は、産出国カタールに足元を見られ、高値のLNGを買わされていた。シェールガスはそんな状況を打破する決定的な切り札になります」

でも、なぜアメリカは今になって日本への輸出を解禁したのか? 資源・食糧問題研究所代表の柴田明夫氏が語る。

「アメリカはシェールガスのような戦略資源について、日本のようなFTA(自由貿易協定)非締結国への輸出を原則認めていません。今回、アメリカが対日輸出解禁に踏み切ったのは、日本がTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への交渉参加を表明したためです。安倍首相の決断がなければシェールガスの輸出解禁はなかったと言えるでしょう」

アメリカにはこんな事情も……。

「05年以降からシェールガスの生産量が急拡大したアメリカでは供給過剰に陥り、天然ガスの価格は08年時点で100万BTU当たり13ドルだったのが、昨年には2ドル前後まで暴落。シェールガスの採算ラインは4ドルから6ドルなので、その水準まで値を押し上げるためにも、過剰在庫のはけ口(輸出先)が必要だったというわけです」(柴田氏)




柴田氏が続ける。

「アメリカにとって、FTA非締約国へのシェールガスの輸出解禁は今回の日本が第1号。というのも、シェールガスを輸出するためには気体であるシェールガスを液化するための巨大なプラントが必要になります。建設費は一基で数千億円規模。資金力のある日本の企業にそのカネを出させようというもくろみもあったでしょう」

では、輸出解禁で日本にはどんないいことがある?

「先述のとおり、現在のアメリカの天然ガス価格は4ドル台。これを日本が輸入する場合、液化コスト3ドル、船代3ドルとアメリカの利益が加わりますが、それでも11、12ドル程度で輸入できるはずです」(前出・伊原氏)

現在の価格(16ドル)と比べると最大で3割安。その効果は?

「例えば、日本の家電メーカーが韓国勢に押されている原因は、韓国と比べて倍ほども高い電気代にありました。アメリカとFTAを結ぶ韓国は日本よりも格段に安く天然ガスを輸入できていたから、電気代を抑えることができていました。今後、安値でシェールガスが入ってくると、日本の基幹産業である製造業が息を吹き返すでしょう」(伊原氏)

さらにシェールガスが原油価格を押し下げるとの見方も……。

中堅商社の社長がこう話す。

「原油価格の国際的指標となるWTI原油価格は現在、90ドル台で高止まり状態。中東諸国が原油の生産量を意図的に抑えているためです。しかし、今後はシェールガスの輸出を伸ばすアメリカに対抗して中東諸国がシェア奪還とばかりに生産量を増大させてくるはず。そうなれば原油は適正価格に近づき、1バレル=50ドル程度に急落する可能性もあります」

となれば、ガソリン代も下がる? シェールガス輸入解禁の恩恵は、アベノミクスよりもはるかに大きそうだ。

(取材・文/興山英雄)

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