2015年から参戦決定!「またか、ホンダF1 」

週プレNEWS / 2013年6月1日 6時0分

緊急記者会見に臨む伊東社長。F1に挑戦したいという若手社員の声も多くあったという

あの“黄金コンビ”が復活する。




……しかし、手放しで喜んでいいのだろうか? なぜなら、栄光の第2期に続く第3期では大した成績も残せず、無残な形での撤退に終わったからだ。ホンダ、真の復活のためには何が必要なのか? 暗黒の第3期を見続けた川喜田研氏が徹底解説!

■瀕死のニッポンF1に差し込んだ希望の光

2013年5月16日、「F1参戦」の記者会見が終わり、ホンダ本社ビルを出た僕のアタマには、いくつかの異なる感情が複雑な形をしながら漂っていた。

あまりにも呆気ない「第4期ホンダF1」の幕開けに、惨めな敗戦に終わった「第3期ホンダF1」の撤退から4年半という時の流れをあらためて噛みしめながら、ふと、青山一丁目の空を見上げると、会見前の青空は灰色の雲に覆われ、ポツリ、ポツリと降り出した雨粒が頬を濡らし始めた……。

なーんて、4年前に出版した拙著『さらば、ホンダF1』の書き出しが思わずフラッシュバックした「F1参戦緊急記者会見」。

ちなみに、当日の午前中に急遽案内が届くという「緊急会見」の割に、前日には新聞各紙がそろって復帰を報じていたり、イギリスから来日したマクラーレン代表のマーティン・ウィトマーシュがちゃんと会見に出席していたりと、いったい何が「緊急」なんだかわからない演出も、あの第3期の頃とまったく同じ感じである。

ホンダの参戦は再来年の2015年から。今回は車体とエンジンの両面でF1に挑んだ第3期とは異なり、第2期同様、エンジンサプライヤーに専念する形となるという。いずれにせよ、日本は今、ホンダF1の黄金時代を飾った名コンビ「マクラーレン・ホンダ」の復活というビッグニュースに沸き立っている(らしい)。

会見でホンダの伊東孝紳(たかのぶ)社長はF1参戦を決断した理由として、エンジンのダウンサイジングや過給機(ターボチャージャー)、エネルギー回生技術などを挙げ、「来年から採用される新しいF1レギュレーションが、環境技術にしのぎを削る自動車メーカーにとって挑戦しがいのある規定」であると強調。そして、かつての盟友マクラーレンとのコンビを「理想的な参戦の形ができた」と高らかに宣言した。伝説のドライバー、アイルトン・セナの活躍とともに、あの栄光の日々を知るファンがこのコンビに夢を膨らませるのは当然だろう。

まあ、『さらば、ホンダF1』で、惨めな敗北に終わった第3期の醜態を描いた筆者としても、いきなりこのオメデタイ雰囲気に水を差すつもりなどない。ホンダが去り、トヨタが去り、ブリヂストンが去り、そして最後の望みであった小林可夢偉(かむい)までもがシートを失い、瀕死の状態にある「ニッポンのF1」はホンダの復帰によって救われ、世界に誇る「鈴鹿のF1日本GP」の未来も、しばらくは安泰のはずだ。日本のF1関係者やホンダの栄光を知る多くのファンたちにとっても、待ちに待った第4期のF1活動、それも名門マクラーレンと組んでの参戦はさしずめ「暗闇に差し込んだ眩い希望の光」といったところだろう。

■勝っても負けても主役はチーム?

だが、あの惨めな第3期ホンダF1を現場で追い続け、そのあまりにトホホな実態に「もはやホンダにF1を戦う資格などない!」と書いた身としては、今回のF1復帰を手放しで歓迎するワケにもいかない。そこで、日本中が期待を寄せる第4期ホンダF1が「またか……」のため息に終わらないために、いくつかの重要なポイントを確認しておきたいと思う。

まず押さえておきたいのは、自動車メーカーが火花を散らしていた前回の頃と違い、現在のF1はチームが主役で、エンジンサプライヤーは「裏方」でしかないという点だ。だからルノーエンジンを搭載するレッドブルがチャンピオンになっても「ルノーすごいな」とはならないし、逆にどんなにレッドブルが強くても「今、最強のエンジンはメルセデスらしい……」というのが通説だったりする。

しかも、コスト削減のため、エンジンの開発には厳しい規制が設けられているので、エンジンの性能差があっても、それが圧倒的な差として表れないのが今のF1。エンジンの差がモノをいい、開発費を湯水のように使えた第2期のマクラーレン・ホンダ時代とは違い、勝っても負けても主役は基本、マクラーレンなのだ。

第2のポイントは、「驕(おご)り」の徹底した排除だ。ホンダがどれだけ謙虚な気持ちで今回のF1参戦に臨めるかが、その行方を左右する。

会見で「失敗に終わった第3期をどう総括したのか?」と問われた伊東社長は「その点については社内でもいろいろな見方があるが……」と前置きした上で、「個人的には車体開発やチーム運営までやってF1を戦える実力がなかったと思う。だが、エンジン技術なら負けない」と答えた。

しかし、現実には9年間に及んだ第3期でホンダのエンジンが「最強」と見なされたことなど一度もなく、それは当時のF1界でも常識だったはずだ。この現実を直視しなければ、また同じ過ちを繰り返しかねないだろう。

そして何よりも驚かされたのは、第3期の敗因について問われた伊東社長が、「社内にもいろいろな見方があるが、個人的には……」と述べていたことだ。それはすなわち、あれだけの惨敗を喫した第3期について「ホンダ」としての総括がなされていないということを意味している。

ホンダファンに嫌われる覚悟で、この際、ハッキリと言っておこう。あれほどの惨敗を喫し、最後にはすべての責任を放り出し、実に身勝手な形でF1を去ることで世界中に恥をさらしたホンダが、今再びF1に挑戦し、その汚名を返上しようというのなら、徹底的に学ぶべきは「第3期の反省と教訓」であり、決して第2期に築き上げた「マクラーレン・ホンダの栄光」ではないと。

また、今回の参戦決断がパートナーとなるマクラーレンはもちろん、F1界全体や日本のモータスポーツ全体に対しても「責任」を伴う、「コミットメント(公約)」だという自覚を持ってほしい。

今はアベノミクス景気に沸く日本経済も、その行方については楽観論と悲観論に二分されていて、2015年も安泰という保証はどこにもない。円安の追い風もあり、参戦を決断したホンダだが、「また景気が悪くなったので、F1参戦はやはり撤回します」なんて身勝手は、もう通用しないのだ。

会見の質疑応答で伊東社長にその覚悟を聞こうと、必死に手を挙げたのだが、残念ながら(予想どおり?)指してもらうことはできなかった(涙)。

いずれにせよ、いったんヤルと決めたからには、相応の責任と誇りを持って、謙虚に、全力で多くのファンの期待に応え、第3期F1の従軍取材で患った著者のPTSD(=F1不感症?)を治すほどの活躍を見せてほしい!

(取材・文/川喜田 研)

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